気がついたら世界がテンプレに侵食されてた件
主人公の家は街外れの小山の頂上にあるという設定でよろしく。
「大魔法使いさん!俺たちを鍛えて下さい!」
「………一応理由は聞いてやる。」
「魔王を倒すにはあなたに鍛えられるのが一番早いと王様が…」
「うぅっ……マジかよ……」
死んで神様名乗った自称魂流通システムとやらに異世界に転生させられてもう何年たっただろうか。……大体450年ぐらいだな。クソっ、不老の薬なんて飲むんじゃなかった。お陰で俺の見た目は
14、15才の子供と変わらず、目の前のこいつら……多分王族に召喚された勇者達だろう……の方が背が
高い。あーダルい。勇者とか相手すんのめっちゃ「あの~……」ん?ああ、忘れてたわ。
「すまんな、ちょっと憂鬱になってた。んで、君たちを鍛える……っていう話だったね?」
「はい。リーエ姫が非常に勧めて来まして、ここに伺わせて貰った次第です。」
「で、それに王様が承諾したと。」
「はい。」
勇者パーティーは今回も4人。軽装の鎧と両手剣の少年が勇者で、めちゃくちゃ堅苦しい話し方して
る少女が多分ヒーラー。活発そうな貧相な体系した少女が恐らく斥候とかそんなんで、色々とスゴい
体系した少女……胸とか腰回りとか……が魔法使いみたいな感じ。よくあるテンプレ異世界物のパーテ
ィーだな。
「それでお前らの事なんだが、断る」
「?!なんでですか!理由をお願いします!」
「なんでよ!王族からの頼みでもあるのよ!?断るなんてよっぽどじゃない!」
「僕たちでもわかる理由でお願いします!」
頭が痛い……胃に穴が空きそうだ。このままでは胃薬と結婚式をあげるまであるわ。ヤバい。ストレ
スでハゲそう。勇者パーティーがこうして来るのは人生のなかでもう三回目。ここまでテンプレなパ
ーティーの方が少なかったわ。比較できるほどの回数でもないけど。
「それなりに長く生きていたからわかるけどさ、俺の住んでるここ、広いじゃん。もと孤児院だった
所なんだけどさ、部屋多いじゃん。仲の良さげなお前らじゃん。何日かしたらさ、どうせ…………」
「どうせ?」
「ギシギシアンアンうるさくなるだろーが!いっつもそう!しないと約束させてもどーせすぐする!
最近の若い子すぐする!当てつけか!450年たっても童貞の俺への当てつけか!騒音で睡眠邪魔され
るし、ストレスはたまるし、お前ら教えてたら研究も進まないし!どーだ!これで納得したか!い
や!しろ!納得しろ!そして帰れ!…………あ”ーキッツ。疲れたわ。」
目の前でポカーンとしている勇者ども。いい加減帰って欲しい。何時まで人の家の前に突っ立ってる
つもりだ。お約束だがあえて見せつけるようにドアをバタンと閉める。
「あのー……王様からコレを見せればどうにかなると……中身はまだ確認していません。」
…嫌な予感がする。ドアを少し開けて僅かな隙間からその封筒を受け取る。そして中身を理解した瞬間……
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理不尽だ…あんなの脅しだろ。王族マジ暴君。渡されたのは俺の黒歴史。即ち……
「若い頃のラブレター公開するとか……」
「どうしたんですか大魔法使いさん?」
昔、本当に昔、まだ俺が勇者パーティーの1人だったころに当時の姫に送ったものだ。断られたがな!
「あとお前ら堅苦しいから敬語とかそこまでがっつりやらなくていい。正直うっとおしい」
「「「「分かった(りました(よ!(わ」」」」
1人全く変えてねーぞ。
「不本意だが、取り敢えず自己紹介といこうか。不本意だが。」
「そんなに大事な事か…?っと自己紹介だな。俺はユート・キシ。勇者やってます。武器はこの通りこの剣。属性は光だ。よろしく!」
「リン・シミズです。ヒーラーをさせて貰っています。属性は癒だそうです。よろしくお願いします。」
「ミサキ・ハシモトだよ!一応盗賊?って事になるかな!属性は地!よろしくね!」
「エリナ・ヒロセよ。魔法使いやらせて貰ってるわ。属性は火。。よろしくね?」
頭が痛い。キャラ濃すぎだろコイツら。テンプレ異世界物かよ。異世界だったよここ。ん?ちょっとまて
「お前ら属性って…」
「あれ?知らないんですか?ステータスカード?あれに表示されているやつですよ」
いつの間にそんなもの出来ていたんだ。俺がこの世界に生まれた頃はなかったぞ。なんか世界がテンプレに侵食されてる気がするな。
「ところで先生の属性はどうなるのかしら?」
「そうだね。僕も気になるよ!」
えー?属性?そんな概念今までなかったぞ?いつの間にか世界はローファンタジーからハイファンタジーになっていたらしい。
「変化の魔法使いと呼ばれる先生の属性は私には予想がつきま「ちょっとまて」…なんでしょう?」
「俺そんな呼ばれ方してんの?なんで?」
「なんでも戦い方が変幻自在で、戦場をその魔法で次々と変化させていくからと…」
そんな大層な事…してたわ…
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俺が昔色々あって飲んだこの不老の薬。恐らく細胞の分裂と成長を停止させているのだろう…それはつまり、怪我すればそれはもう一生そのまま。血は流れれば流れっぱなし。まさかそんなリスクがあるとは当時は思いもしなかった。お陰で痛い目を何度も見た。ちなみに不老の薬とそれを解除する薬の素材は今でこそ稀少なマンドラゴラやらなんやらだが、当時はまだ群生地があったので傷付いても解除してから治療する事が出来た。……今はもうマンドラゴラの群生地は調子に乗った高ステータスの新人冒険者が採りつくしたのか無くなったが。まぁそんな感じで怪我が怖かった当時の俺は頑張って魔法で色々やらかした訳だ。
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「大魔法使いさん、ちょっと鑑定してもいいかな?」
「おっそうだな。俺も大魔法使いと呼ばれるほどのステータスは気になるし。」
「そうですね。私たちがあなたから何を教わるべきかの判断の基準にもなりますし。」
「そうね。ミサキ!さっさと見ちゃって!」
「………おい。俺見ていいなんて言ってねーぞ。」
「まぁまぁ、ケチな事言わずにさぁ!」
解せぬ。無理やり見られた。←ただ単にスキル使われただけ。
「うっわスゴい量。情報が多いから必要そうなのだけ書き出すね。」
「じゃあ書き出してる間に俺から質問。鑑定なんて魔法あったっけ?」
「魔法じゃなくてユニークスキルだぜ。」
「テンプレかよ…だからいつからそんなの…いやちょっとまて、お前らもユニークスキル持ってんの?」
「まぁ、異世界召喚された勇者だからね。言ってなかったですっけ?」
ユニークスキル、ステータスカード、いつの間にか…俺が10年ぐらいこの田舎に引きこもってる間に出来ていた。そんなもの突然出来る訳がない。なにがあった?
「書き出したよー!」
「どうだったミサキ。」
「いやー、多すぎて参ったね!全属性持ちでオリジナル魔法も幾つかあるとはそりゃ最強の大魔法使いと呼ばれる訳だよ!」
「マジで!?」「本当ですの?!」「私にも見せてください!」「先生って呼んでもいいですか?!」
「もう好きにしろよ……」
俺が考え事をしている間に勇者どもはワイワイガヤガヤと俺のステータスが書き出された紙を見ている。属性…ステータス…可能性の表示…限界の表示?これはちょいと考えすぎか?
「先生!色々あるけどさ、オリジナル魔法1つ見せてくれないですか?」
「ここでは無理だな。あとお前ら此処に泊めないからな。宿は自分でどうにかしろ。勇者なら金なり野宿なりの手段はあるだろ。」
「「「「そんな?!断る理由が泊める前提だったのに!?」」」」
「妥協してこれだ。嫌ならレベル上げして魔王倒してこい。」
色々調べたい事が出来た。街に出てやりたいことが。それにコイツらは邪魔すぎる。せめて夜だけでも1人になれるのならまだマシだが丸っと1日はな。
「先生…先程の封筒。今は私の手にあるのですが、これを私のユニークスキル、空間魔法でアイテムボックスに……」
「ファッ?!ええい!分かった分かった泊まっていいからそれを早く寄越せ!」
前言撤回。コイツら俺が見てないとマズそうだ。ああ、やりたいことが早速出来たのにぃ…
設定は色々作ったけど文章力ががが。