94 一騎打ち、掲示板、長い夜
一日中街中を走り回りそこでいろんな人と話し精神的に疲れ切った二日目。
それを癒す為に再び街の外にて森の付近でテントを張り即座に寝に入った。
何人と会って話したのかもう覚えていない。聞いた名前も忘れてしまっている。
これはマズいと思いながらも睡魔には抗えず目を閉じる。ああ、疲れた……。
剣戟の音に目を覚ます。
今日は上手く起きれたのか意識もはっきりしている。
テントの入り口を開ければ目の前には一対一で戦っている者達の姿がそこにはあった。
こちらを認めるとより一層動きが精密になって行くのはなんなのだろうか。
草を踏む音を横に聞きその方を見れば昨日の着流しの人がそこに居た。
「昨日ぶりだな、魔王様」
「タテヤで良いですよ。それで、これはなんです?」
「そうか。とりあえず今戦ってる連中はタテヤとの一騎打ちを望んでここに来てる」
「はあ」
「だが人数が多かったもんで減らそうと言う意見で固まってな。その結果が今だ」
「同時に全員蹴散らしても諦めませんよね」
「だろうな」
「何人ぐらいここに居ますか?」
「3、40人ぐらいだと思うが」
「一人3秒で片付ければ数分で終わるか……」
「出来るのか?」
「それぐらいの気持ちですよ」
「そうか。ま、あいつらが勝てるとは思ってないからな」
「本音は?」
「俺が一番乗りで勝ちたい」
「なるほど」
そんな簡単に言うなよ、と奇妙な物を見る顔をされたがこれが素なんです。
とは言え目の前の騒ぎを納めないと安眠が望めそうにないので制圧するとしよう。
明日からは街で宿を取ろうと思いつつ目の前の集団に向かって行く。
一人ずつ相手をすると言えば皆驚きつつも戦闘をやめてくれた。
HPやMPを使っている者も多かったがそれでも構わないらしい。
盾バットでホームランしようかと思っていたがそれを聞いていつもの小盾と手盾を装備する。
「さて、まず誰からでしょうか」
左前腕に小盾、右手に手盾を装備して左腕を腹の前に置き左肩を前に突き出すように構える。
それを見て「おお、本物だー!」と騒いでいる人が居るのだが何だと思ってたんですかね。
兎にも角にも連戦だ。一応纏めてPvP申請を送っておいたので戦闘としては一対一だが内容としては一対向こう全員となる。
そこからの時間は戦闘に際しての緩んでいた感覚を引き締めてくれる物だった。
後々聞けば大体の人が何かしらの武道を修めていたらしく挑戦してみたかったらしい。
一応それでも勝ったのだがステータス差が無ければ確実に負けていたと思う。
ただ負けた彼らは精進して来ます!と言って軽やかに去って行ったのだが同時に「挑みに来るまで負けたらダメですからね!」と言い残されたのには少し顔が引き攣った。
何人に勝たないといけないのだろうか。
相手の武装も多種多様であり無手から始まり剣、弓、棍棒、短剣、槍、トンファー、大剣、レイピア、鎖鎌、薙刀、ブーメラン、斧、スタッフ、杖、鉄扇、モーニングスター、トマホーク、クロスボウ、パチンコ、投げ槍、鉄球投げ、鞭、ハンマーなどの様々な種類を相手取る事になったのは驚きだった。
君達今まで何と戦って来たんですかね……。
こちらの戦法は徹頭徹尾カウンターで通した。
一応職務投棄を使って居たのだがこれはカウンターのダメージ増加にも繋がるし相手の攻撃がちゃんと通ると言う意味合いでのフェアさを狙った。
結果ゴリゴリと相手のHPが削れて行ったのにはやはり驚いた。
速攻対応され始めたのには軽く泣きそうになったが。
そんなこんなで戦闘を終え、テントに戻る。
戦闘を眺めていた着流しの人と目が合った。
「お前はある意味異常な事になってるな」
「この状況こそが異常な事ですよ」
「まあ、そうだな。だが全員に同じスタイルで挑むってのはなんなんだ?」
「自分なりの正対の仕方ですよ」
「昨日のアレは?」
「寝ぼけて不機嫌だったんで…… 今からやりますか?」
「いや、良い。遠慮しとこう。また今度やってくれ」
「はい。では、おやすみなさい」
おうよ、と言って去って行く着流しの人を見送ってテントに入る。
目を閉じ思うは明日からは街の宿を取ろうと言う物だった。
【大体】○○さんと戦闘してみた Part2【あの人】
1.名無しの冒険者
ここはモンスター、プレイヤー、NPC問わず戦った感想等を言い合うスレです
他のプレイヤーに対する誹謗中傷は書き込まれない様お願いします
気付いた事などは情報板にお願いします
次スレは>>950付近の方が宣言してから立てて下さい
過去スレ:【大体】○○さんと戦闘してみた Part1【あのギルド】
(中略)
453.名無しの冒険者
実際に魔王様と戦ってみた感想
硬い。堅い。固い
後なんか不思議系だった。
(動画)(動画)(動画)
454.名無しの冒険者
ああ、また北側が騒がしいと思ってたらあの人戦ってたのか
昨日は寝ぼけて巻き添え食らった奴も居たんだっけ?
>>453
なんで対応出来てるんだ……?
鎖鎌とか普通見た事も無いだろうに
455.名無しの冒険者
ああ、なんかウチのメンバーが楽しそうに話してたがさっき戦ってたのか
攻撃は下手だが防御は凄かったって褒めてたな
456.名無しの冒険者
で、あの人は誰かにでも負けたの?
457.名無しの冒険者
>>456
参加してた者だが全員負けた
カウンターってあんなに強かったんだな……
458.名無しの冒険者
>>456
まだ死に戻りもした事が無いらしい
誰が倒せるんだアレ
459.名無しの冒険者
あからさまに初見対応を要求する武器を選んだのに全対応されたで御座る
あの人やる事シンプルだから全員食われてってな……
460.名無しの冒険者
>>457
攻めはスキル任せにして全部ガードカウンターかコレ
相手の攻撃に合わせれば良いだけってのもあるが良く出来るな?
461.名無しの冒険者
>>459
鞭使ったら先端部の軌道読まれて大ダメージ食らったわ……
直前まで動いて無かったから慢心した……
462.名無しの冒険者
>>459
無手で挑んだら両手に手盾装備して殴りかかって来たんだけど…
しかもそれでこっちにダメージ入ったしなんだあの戦法
463.名無しの冒険者
>>460
本人曰く『そうしないと生き残れない環境に街に来るまで居ましたんで……』
って遠い目をしながら言ってたんだがあの人プレイヤーだよな?
NPCじゃないよな?
464.名無しの冒険者
>>459
攻撃が当たる瞬間に殴り付ける様にしてジャストガードを先に発動させてるみたいだった
そうした方が失敗した時のダメージも少ないらしいが誰が思い付いたんだアレ
あの人か…
465.名無しの冒険者
>>463
どこで修行して来たんだろうあの人
466.名無しの冒険者
>>465
激昂の森じゃね?
467.名無しの冒険者
>>465
激昂の森だろう
468.名無しの冒険者
>>465
激昂の森じゃないか?
469.名無しの冒険者
怒涛の森押しにちょっと笑ってしまった
でもまあプレイヤーの攻撃よりも兎の方が強いんだもんなあ、あの森
……いつかは攻略しないとな
470.名無しの冒険者
で、あの人は誰が倒すんだ?
471.名無しの冒険者
倒されて欲しくないって気持ちもあるんだよな
なんだろうこの気持ち
472.名無しの冒険者
ファン心理じゃね?
473.名無しの冒険者
それだ!
474.名無しの冒険者
それかなあ……?
ヨミは流石に疲れていた。
朝から回された案件の処理に時間を食われ、更に整理している最中にドンドン希望者が増え、またそれの整理の為に時間を持って行かれた上に魔王軍の主力幹部群からの問い合わせ等もありてんてこ舞いになっていた。
それに加えて夜中に起こった戦闘の一件である。
「夫がまたやってるみたいだよ?」と教えられ調べてみれば更に人外風味に言われていた。
ただリアルの方でも結構色々とアレなのでこれに関しては放置する事に。
ただ問題も出て来る。
「顔繋ぎは大事とは言ったけど会い過ぎじゃない?大丈夫かしらコレ」
ヨミに送られて来た面会申し込みだけでも三桁は軽く超えているのだ。
大体が街で見掛けたがもう少し話してみたいと言う物。
しかも全域である。どうやら真面目に街全体を見回っていたらしい。
試しにスケジュールを作ってみたがこのままだと倒れる事になるだろう。
「それは困るのよね。……はあ、面倒ね」
そう口でぼやく位は許されるだろうと思いつつ新たに表示枠を開き作業をし始める。
会う者を減らし、ギルド毎に纏め、座談会の場所を考え提案していく。
「これだけ頑張ってるんだし明日は少しぐらい愚痴を言っても良いわよね?」
明日は眠い一日になりそうだと思いながら。
そうこぼしたヨミの顔は笑っていた。
ヨミさんのストレスがマッハ。




