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90 「見事に状況に流されてるわね」

掲示板を眺めながら雑談を続けそして現在。

ヨミと二人噴水の縁に座りつつお互い横を見ずに話し続けている。

と言うよりも俺が一方的に見れない状態である。

ゲームとは言え美少女が横に居るのだ。気恥ずかしくもなる。

何処かで見た事があるような顔なのだが意識しだすと無意識の内に頬が赤くなる。

うーむ、これは一体何なんだろうか。不思議現象だ。


「それで、宵闇の森としてはどう動けば良いのかしらね」

「俺は一人で適当に動きたいし皆も自由に動いてくれたら良いと思うが」

「さっき掲示板を見たらうちのメンバーが魔王軍の幹部になってたわよ」

「なんで?」

「魔王直轄の人員って事らしいわ」

「皆の反応は?」

「良好」

「面倒を掛ける事になっちゃったな」

「やる事を探すよりは良いんじゃないかしら」

「そう言えばヨミは何か言われてるのか?」

「魔王の嫁として舵取りお願いって言われたり書き込まれてるわね」

「俺そこまで自由人かなあ?」

「結構自由にやってるわよね?」

「流れ流され二週間、女装も出来る魔王になってました」

「見事に状況に流されてるわね」

「流されてたわ。まあ街の散策もしたいし俺も何が出来るかを見ておきたいんだよな」

「それなら視察って名目で巡って来たら?」

「それやると普通のプレイヤーに迷惑掛からないか?」

「その辺は向こうも弁えてるでしょ。ごっこ遊びよ、遊び」

「まあ魔王軍とか言っても人数多くなる訳じゃ無いもんな」

「三桁行けば良いんじゃない?」

「だよなあ」


≪フレンド登録者から一件のメッセージが届いています≫


その会話を見越したが如くヨミと同時に届いた通知を見ればシュンセツさんからだった。

そしてその内容を見て二人して体がびしりと固まりその上で頬が引きつる。


≪集計結果報告

自分でも信じられないんだけど現時点で参加者の9割以上が集まりました

タテヤ君が大将なら面白そうだって人が多かったみたいです

気楽に頼んで何か、ごめんなさい……≫


イベント参加者人数は約4千人程。それの9割以上。3600人以上。

痛む筈の無い胃がキリキリする感覚を感じた。


「なあヨミ」

「……何かしら」

「ちょっと視察行ってくるわ」

「……行ってらっしゃい」


どうやら俺は自分の事を過小評価していたらしいがこれは唐突過ぎて実感が湧きませんね。

落ち着く時間が欲しいので適当な事を言ってこの場から逃げる事にする。

旗印と言うか客寄せパンダ扱いじゃないですかヤダー!


「それといろんな人への命令とか作戦とか根回しとかその他もろもろの事は任せた!」

「ええ!?それは聞いて無いわよ!」

「今言ったからノーカンな!」

「嘘でしょ!?あ、でも一応ギルドとしての方針は言ってからお願い」

「じゃあこうしよう。『死ぬ気で守りましょう』で」

「……まあ、うん、間違っては居ないんだけど何か違う気がするのよね」

「まあ基本的には自由に動いてくれ。俺も遊びたい」

「本音出たわねー」

「さすがに初日は状況確認で終わるだろうから今のうちだしな」


そこまで言った所で顔を上げて見回せばうちのメンバーが既に居ない。

各々やる事を探しに行ったのだろう。行動早いですね。

ヨミを見れば片膝を立てそこに肘を当て頬杖を頬杖をつきつつ片足を揺らしている。

たまに前から覗こうとする者が通るがヨミはズボンタイプの服装なので見えない。

そして見ようとした者は何処からか現れた集団に連れて行かれる。

雷閃さんの姿が一瞬見えたので親衛隊の方達なのだろう。

会釈されたので返しておく。彼(彼女?)も大変そうだ。


「今度は一人で何匹倒すつもりなのかしら」

「さすがに群れ一つとかもうやりたくないからな?」

「機会と状況があれば?」

「挑むだろうなあ……」

「今度は私も手伝いたいわね」

「ギルドの大仕事にでもするか?」

「面白そうね、それ」

「ただし百回程死に戻りを覚悟する事になるが」

「……面白くなさそうね、それ」

「これはゲームって言うのをあの時は忘れたからな」

「修行みたいね」

「精神力は鍛えられるな。実際逃げ足が速くなった」

「リアルでも影響って出るのね」

「身体の使い方って大事なんだなって思った」


しみじみ思った事を告げると「毎日見てるしね……」と呟き声が聞こえて来る。

はて、同じ所に通っているのだろうか。髪を上げた状態は人前では見せていない筈だが。

まあ余り詮索して貴重な友人を失いたくは無いので忘れる事とする。

さて、それじゃ行くか。


「まあ色々言ったが大量に頼みたい事が出るだろうから今の内に休憩しといてくれ」

「色々と酷いわね」

「たまには俺からも良いだろう?」

「構わないわよ。まあ一週間、楽しみましょう」

「おう」



そう言ってヨミと別れてからまず北側に向かう。

激昂の森の大侵攻なら既に兆候が出ている筈だしそれに加えて防衛設備等も建設が始まっている筈なのでそれを手伝おうと思ったのだ。

近づいて行けば街の周囲に張られている木の柵を北東から南東辺りまでが撤去されておりそこに高さ2メートル程の石垣の様な物が作られ始めていた。

近付いて行って建設作業をしている人達に聞けばレンガが足りない上にまだ焼き窯職人も居ない為レンガの数が作れないので土魔法や木魔法を使ったり街の面積を広げる上で出た資材を使っているらしい。

周りを見れば一定数のプレイヤーが楽しそうに作業していた。

どうやれば上手く嵌まるか等を議論しておりそこには真剣さが感じられる。

普段やった事のない事をしてみると案外楽しかったりするあの現象かもしれない。


手伝いを申し出れば役立ちそうなスキルと聞かれたので錬金術師、木工、土魔法、精密操作があると言えば驚かれつつも承諾して貰えた。さて、今日はここで頑張ろう。

石垣作りなんてやった事無いからな!楽しみだ。

ただ先ほどまで楽しそうに作業をしていた人達が俺を見てぎょっとした目を向けて来た後に静かに深く集中した様子で作業に戻って行くのはなんなんでしょうか。

そんな目立つんですかね、俺。


≪錬金術師のスキルレベルが上がりました≫

≪精密操作のスキルレベルが上がりました≫


しばらくの後レベルアップの通知が届いた所で一旦休憩にする。

途中から形が微妙に合わない部分は錬金術師のスキル内にある整形を使って形を変えていたのだがそれに釣られて精密操作も上がったらしい。確かに細かい部分やってたからな。

そしてやってみた感想。


レンガの方が、楽。


なのでどうにかこうにかレンガの様な物を魔法で作れないかと試す事にした。


錬金術師スキルの成型を用いて土をレンガ上に形成する。

上手くいったがMPの消費量が多い。

不純物も多い為割れやすかった。


この時点で特に思い付くものは無くなっていたのだがそこで昨日の出来事を思い出す。

アリサがやっていた魔法を不発させると言う物だ。

それに加えバレット系は術者が着弾点を意識しないと打ち出されないと言う物も思い出す。

あれが出来たのであれば他のモノも結構出来るんじゃ?と思いある事を思い付く。

使う物はクレイバレットと精密操作。


まずクレイバレットの呪文を唱える。普通の石弾が生み出される。

次に再びクレイバレットの呪文を唱えつつ精密操作を意識的に使い形状を指定する。

長方形、と形をイメージしながら唱え切れば不純物も無い土製レンガが出来た。

叩いてみればキン、と言う金属音が鳴った。……イメージが硬過ぎたか?


職務投棄を使った拳で殴れば表面にうっすらとヒビが入った。砕けなかった事に驚く。

そして気付けば辺りが静まり返っておりなんだなんだと見回せば俺の手元を見ていた。

はて、何かおかしな事をしただろうか?


「あの、そのレンガは一体…」

「土魔法のクレイバレットを発動時に形状変化させただけですが」

「なんだって!?」


作業員が驚き話す所によればそんな発想をする者は今まで居なかったとの事。

加えて土魔法とある程度呪文の制御が出来れば作れる為今後の作業量が変わりそうだとも。


「それでもしばらくは延々レンガ造りだろうね……」

「自分も多少は作りますよ」

「ありがとう。それにしても魔王君は本当に1プレイヤーなのかい?最近は運営の回し者だって噂も出て来てるけど……」

「回し者だった方がこの現状を素直に受け入れられたと思います」

「そ、そうか……人気者も大変なんだね」


良い人に出会えた所で周りも大半が石垣作りに疲れて居る様なのでイメージの仕方などを広めてもらう事とする。

数十年後にはこの壁も壊された上で街も広がっているとは思うが今は必要な物なので出来れば良い物を作っておきたいと思う。

そこからしばらくはひたすらレンガを作る事に時間を費やした。


≪土魔法のスキルレベルが上がりました≫

≪精密操作のスキルレベルが上がりました≫


通知が届いた所で目の前を見れば結構な量のレンガの山がそこにはあった。

城壁などに使うとなればこれの何千倍も必要だろうがとりあえずは石垣の上や前方に積んで行ってもらおうと思う。

気付けば周囲に人だかりが出来ておりちょっとビビる。

一人が声を掛けて来た。


「あの、魔王軍のトップが来るとは思ってなかったんですけど、どうでしたか?」

「俺自身は1プレイヤーなので畏まられても困るんですが…」

「あ、そうなんですか」

「そうなんです…。皆さんも出来るだけ気にしない様にお願いします」

「あ、はい。わかりました。それで、次はどちらに行かれるんですか?」

「え?」

「いえ、掲示板の方に北に魔王が視察に行くって書いてあったんでどんな人が来るのかと」

「……ちなみに、俺の印象ってどうなってます?」

「おおむね平和な物が多いですよ」

「不安だ…」

「とりあえず大体は魔王軍の方針に従いますんで」

「ありがとうございます。イベントを楽しめるように頑張らないと、ですね」

「ですね!」


そう言ってにこやかに笑う人達に礼を告げてその場を立ち去る。

レンガの作り方は即座に情報板に上げられたらしく色々な所から疑いのメッセージが届いていた。

真面目に視察をやった結果ですヨ?



さて、次は何処に行こうかな。

森にでも入ろうか。

感想爛にコメントの返信をしたいのですが書いてからでないと返信出来ない事が増えて来ました。

書かれた物はちゃんと読んでいます。


学園編も書きたいのでどうにかねじ込めないかと画策しています。

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