09 起床とご褒美とお詫び
目を開けると空が見えた。
パチパチと音がする。
身体の右側が暖かい。
焚き火の傍に寝かされたらしい。
左側は何か湿気のあるものが張り付いている。
どうやら服が水を吸った後らしい。
背中にはどうやらスノコの上にゴザがのようなものが敷かれている。
水を地面に落としつつ土が着かない様にと言った感じだろう。
それと魚の焼ける匂い。
脂が焼ける音と良い匂いが漂ってる。
空腹を感じたので腹も減っているようだ。
「師匠達が助けてくれたかな…?」
「起きたか」
「おはよう!」
すぐ近くから返事を返される。
聞きながら身を起こすと焚き火の傍に師匠とルーネ先生。
焚き火の周りには早速干物が並べられ焼かれている。
「あ、師匠、先生。おはようございま…… なぜ師匠はフンドシ一丁なんです?」
「お主が湖に落ちてそれを助けに行く為にの」
「私は焚き火と寝床の用意をしたよ!」
「師匠、ありがとうございます。先生も」
「よきにはからえ!」
「ルーネ師匠は飛ばした元凶ですからの?」
「あはは……」
ルーネ先生相手にそう言える師匠が凄いと思います。
しかしどうなっていたのだろうか。
「俺が吹き飛ばされた時はどんな感じでした?」
「ワシから見えたのはお主がギリギリで避けた所に向けて師匠が射っておった」
「当てるつもりはなかったから避けたのを確認してから射ったよ?」
「え、通る場所から身体避けた瞬間飛んで来たんですけど」
「ギリギリ避けられたなら度胸も付くと思ってね!」
「それでも力を込め過ぎですぞ?」
「張り切っちゃった… で許して!」
「軽っ!軽過ぎますよ先生!」
「まあ詫びと褒美もあるからの。食いながらにするかの。体力は大丈夫か?」
「大丈夫かと」
そこでHPを見ると9割ほどになっており、通知も大量に貯まっていた事に気付く。
うわっ、大量にレベルアップしてるし職業レベルも上がってる。
取れるスキルも一気に増えたなー。
ボーナスポイントとスキルポイントも貯まったなー。
でもすっごい気になる通知があるよね?
「あ、はい。HPも大分回復して……。あの、先生」
「ん、なになに?」
「さっきの事で色々上がったのは良いんです。それでですね、龍関連に付いて幾つか質問が」
「うん、それはね!」
元気良く応えてくれる先生。
しかし続きを言う前に師匠が口を開いた。
「ルーネ師匠、その説明をする前に詫びと褒美をお願いしますぞ」
「え?はーい。それじゃ先に、驚かしてごめんのお詫びとご褒美ターイム!」
「先に、ですか?」
「先に済まさんと長い話になるからの」
「は、はあ……」
この後起こる事に対して先に長い話を聞いておけば良かったのか。
それとも聞かなかった方が良かったのか。
流されるまま混乱の極みに陥る事になろうとは思っていなかった。
「まずはご褒美!」
「はい」
ルーネ先生がこっちに寄って来て頭に手をかざされる。
≪【古代龍の加護】を授けられました≫
「はい?」
「次はお詫び!」
「え、あの、古代龍って、一体、何、え、これ」
≪古代龍の皮を入手しました≫
≪古代龍の爪を入手しました≫
≪古代龍の牙を入手しました≫
≪古代龍の角を入手しました≫
≪古代龍の鱗を入手しました≫
≪古代龍の翼を入手しました≫
……。
……………………。
「え?」
加護?
素材一式?
古代龍?
ワッツ?
オーケー待て待てクールになろう。
何故こうなったのかを纏めよう。
まずは干物作りで遭遇した。
作るのを手伝って貰った。
その後鍛えてもらう事になった。
弓矢を避けて吹き飛んで気絶したな。
で、ご褒美と詫びの品を授けられた。
つまり?
矢を避けたら称号と加護と素材を貰いました。
あと経験値。
訳がわからんぞ!
え、どうしてこうなった。
どうしてこうなった!?
色々と衝撃が大き過ぎて固まった俺を心配する師匠たちの声がぼんやりと聞こえる。
「え、これじゃ足りなかったかな……?ダンガロフちゃんはどう思う?」
「ルーネ師匠、一体何を渡したんですかの」
「えっと、ご褒美に加護でお詫びに脱皮した時のをちょっと、ね?」
「詳しく言って貰えますかの」
「ご褒美に『私』の加護をあげてお詫びに皮爪牙角鱗翼の六点セットをあげたんだけど足りなかったかなって」
「……逆に多過ぎますぞ。それにルーネ師匠直々の加護なんぞ人が受けられるモノなんですかの?」
「ご褒美だから良いかなって。ダンガロフちゃんにも渡せるし?」
「人が幸運に恵まれても渡して龍の友でしょうに何故そこで見栄を張るんですかのう」
「でも、もう渡しちゃったし!」
「まあそれに付いてはワシも渡して良いものを言っておくべきでしたな」
「何も言われなかったから良いものあげたいなって思って」
「ワシはてっきりこの森で取れる素材だとばかり思ってましたからのう」
「今回は私悪くないよね?」
「何の説明も無しに渡したのが不味かったですな」
「……もしかして、やっちゃった?」
「ワシとしては渡してからルーネ師匠の説明をするつもりでしたので」
「ああああああ!やっちゃったー!どうしよう!?怖がられるかな!?」
「心配するのがそこなのがルーネ師匠ですの。意識が戻ってくるまで待ちましょう」
「うう、もっと良いの渡せば誤魔化せないかな…。血とか」
「更に混乱しますぞ?」
「そっかー……。ポンと渡しちゃいけない物だったんだね」
「そもそも龍は人里近くに居る事自体災厄扱いですからの」
「ううん、難しいね」
「師匠なら大丈夫でしょう」
「うん」
「しかし帰ってこんのこの弟子は」
「普通は戦って認めたら渡したり倒して得る物だから大丈夫かなって渡したんだけど」
「龍と知らずに応対し協力し相対する事自体が無い筈なんですがの」
「あー……」
「起きたら話しましょう。コイツなら大丈夫でしょう」
「だと良いわねー」
そう言って遠い目をするルーネ。
それを見て彼女が龍種だとバレ、人に避けられた過去を思うダンガロフ。
彼らの弟子はまだ動かない。




