表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
89/162

89 アルタ街防衛戦 一日目

イベント一日目。


先ほど通り掛かった冒険者の人が転送前のサーバーの状態の本人であるならここは数十年前のアルタ街を再現した場所であると言う推測が立つ。

まあ街の様子を見れば明らかに発展途上って感じだから周りも気付きだしている様だ。

既に街のあちこちへと散開する者、集まって会議を始める者など様々な動きが始まっている。

ただ俺の横を通り過ぎる時に一礼して行くのはなんなんだろうか。

あの、俺そこまで偉くもなんともないんで勘弁して下さい。

居心地の悪さを感じつつこれからどうするかに思考を走らせようとした所でメッセージが届く。

差出人はヨミ。


≪一旦集まって話し合おうと思うんだけど良いかしら?

それに他の所からも色々話したい事があるらしいのよ

広場の中心辺りで待ってるわ≫


他の所?……なーんか嫌な予感が。


端の方に俺とカスミは居たので中央に向かい歩いて行く。

その折にカスミから大剣に関する細かい事を聞き、それを確認するのは後とした。

全体は既に動き出しているので人の密度は少なくなっており割とスムーズに到着する。

見ればいつものメンバーとそれに加えて何人かが居た。御茶葉さん達も居るのが見える。

そして周りにはそれぞれで固まっている集団がこちらを見ている。なんだろうか。


「おう、来たか。生産部門、ゲンコツだ。よろしくな」

「初めまして。情報部門担当のシュンセツです。よろしくね」

「おお、来たか。戦闘部門顔役って事になったライリーだ。よろしく頼む」

「えっと、初めまして。タテヤです。宵闇の森のギルマスやってます」


ヨミの前に立っている三人から挨拶をされたのでこちらも返す。

部門担当?それはわかるが何故俺に挨拶をしてくるのだろう。

疑問に思い首を傾げていると苦笑するゲンコツ。


「まあ何が何やらって顔だわな。頼みたい事がお前さんにあってな、場を設けて貰った」

「なんでしょう?」

「このイベント中、プレイヤーの旗印になっちゃくれねえか?」

「は?」

「まあ聞いてくれ」


通常の考えられるイベントであれば各人が勝手に動いても全体の動きに支障は出ない。

だが今回は防衛と言う事もありそれに加えて個々人のスキル等を伸ばす機会でもある。

なので戦闘、生産兼兵站、情報収集の三つに分けて動く事を提案した。

しかしそれぞれが動いたとしても方針が無ければ何も出来ない。

そこで誰かをトップにし、本部を作ってしまえば良いと判断。

ただ誰をトップにするかに付いてはサクッと決まったらしい。


「まあ俺たち三人は結構忙しくてな。誰が大将をやるかで話し合ったんだが」

「今いるプレイヤーの殆どの人に知られているタテヤ君が話に出たんだ」

「後はまあ、この通り。頼みに来たって訳よ」

「あ、はい、そうですか……」


別に大将だからと言っても何か権限がある訳ではなく単純に旗印らしい。

俺が受けた場合組織の名前は『盾の魔王軍』となるそうだ。

……それでいいのか? 良いらしい。

役職が付いたものの基本的には皆でどうにかするらしい。

俺、必要なんですかね。

ゲンコツからは自由に街中を動いて良いと言われる。

話し合いはメッセージやチャットでどうにかなりますもんね。

俺、必要ないんですね。


「それで最初はどう動く?シュンセツ、ライリー」

「情報収集と街の防衛方法の構築でしょう。戦闘系の方達にも斥候をやってもらいましょう」

「あいよ。ウチからも人手は出す。シーフ系の調達は頼んだぜ」

「それじゃ俺は防壁作りか。武器防具も整備出来るように手配しとくぞ」


ゲンコツの言葉を皮切りにポンポン内容を纏めては周囲のギャラリーから数名を呼び出しては何かを言いつけて行くギルドマスター達。

話を聞いているとこの三人はそれぞれの担当分野の一応の代表であり周りにも普通にギルドマスターの人達が居たらしく恐らく大量の人数が動員できるだろうとの事。

この機会にギルドへの勧誘を考えている人達も多く張り切って走って行った。

そんな光景を見ていると殊更自分の存在に疑問を抱く様になる。


「タテヤ、大体は決まったがお前からは何か言いたい事はあるか?」

「え?」


ぼーっとしていたのが悪かったのだろうか。

話し合いは殆ど終わっており周囲の人も減ってうちの面々が近づいて来ていた。


「聞いてなかったのか?」

「いや、何を言えば良いのかなあと」

「まあ細かい所はこっちで決めちまったからな。気を付ける所とかでも良いぞ」

「うーん……。あ、それじゃあ」

「思い付いたか」

「えーっとですね。『無理や無茶をせず楽しみましょう』って言うのを考えたんですけど」

「まあ、当たり前だな」

「当たり前ですね」

「当たり前だわなあ」

「……ダメですかね?」


不安になったのでそう言えばそうじゃない、と言った感じに手を振られた。


「ま、良いだろ。いい感じに力も抜けたしな」

「そうですね。自分は一応この辺で情報収集をして置きます」

「それじゃ俺はちと行ってくらあ」


そう言って別れて行く代表メンバー。

俺の仕事はまだ無い。

……ホントに旗印ですね!

肩を叩かれ後ろに振り向けば何処か面白そうな物を見る目をしたヨミ。


「すっかりネタキャラ扱いね」

「果たしてそうなのだろうか」


なんか違う方向のネタキャラ扱いになってる気がする。

気のせいですかね。


その後メンバーと雑談しつつ特別サーバー内の掲示板に新しくスレが立っていくのを眺める。

雑談版、情報版、生産版、街の様子、街の周囲探索、モンスターについて、等々。

あ、『【大将は】魔王軍結成(参加者求ム) Part1【名前を言ってはいけないあの人】』がトップになってる。

なんか参加者続々と出て来てるけど誰が管理するんだろうか。

そして注意書きに『街の人とか自分の考えで個別に挑もうとしてる人達に迷惑掛けたら魔王が来ます』って書いてあるけど俺は火消し役なんだろうか。

書き込みで『行くのは面倒なので一括で来て貰う事になりそうです』と書き込んだらそれ以降がお通夜モードになった。

『魔王様来ないのか……来られても困るけど』『また挑むのか……イベントの方がマシに思えて来るな』『魔王様に蹴ってもらえるんですね!?やったぁ!』『回収班!またドM魔女が居るんだが!』『巻き込まれて死にたくないでゴザル』等々。

次のスレでは勢いも戻っていたみたいだが悪い事をしたような気分になる。


そこで今度は『別に強制する事は無いんですが無理や無茶をせず共に頑張りましょう!』と書き込んだらそれ以降が阿鼻叫喚になった。

『え……?』『おお、魔王様も共に戦ってくれるのか!二千人力だな!』『……ミスったら怒られるとかは無いよな?』『それよりもなんでバレバレの詐欺みたいな勧誘コメントを……?』『まさか褒賞を独り占めするつもりか……!?』『巻き込まれて死にたくないでゴザル』等々。

次のスレでは勢いも戻っていたのだが先程のは自分がして来た事が悪かったと思い返す。


そこで今度は『必要とあれば自分も前線に出て戦いますので出来れば援護お願いします!』と書き込んだ所それ以降が疑問や俺の戦闘スタイルに対するコメントになった。

『一人で突っ込んでも死ななそう』『魔王様は一人がお好き』『魔王は一人、そう一人なのです』『魔王様は一人でスルのが好き!?』『魔王に援護は必要なのか?』『巻き込まれて死にたくないでゴザル』等々。

次のスレでは勢いも戻っていたのだが今のは普段の戦闘スタイルが悪かったと思い出す。


そこで今度は『挑発一発で俺に向かってモンスターが二桁単位で寄って来ますが他の人の所には行かないので倒しやすいと思います!』と書き込んだ所それ以降がひたすら疑問のコメントで満ち溢れた。

そこにギルドメンバーの実体験も書き込まれ更に疑問が深まる。

『普通は囲まれてから味方が削り切る前に使った奴のHPが切れる』『そもそもそんな広範囲に発動するのか』『やはり魔王は魔王だった……』『巻き込まれて死にたくないでゴザル』等々。

次のスレでは勢いも戻って居たのだがやはりチートステータスなのを再認識する。


そこで今度は、と思った所でシュンセツさんからメッセージが届く。


≪書き込むのをやめてもらえると情報収集が楽になるかな……≫



ごめんなさい。

人が増えると動きを考える為に頭が爆発しそうになります。

何故増やした、自分。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ