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87 閑話 主人公の愉快な一日

※色々こじつけました。

※大分はっちゃけてます。

朝。

いつも通りの通学路を予鈴ギリギリになる様に合わせつつ早足で急ぐ。

急ぐぐらいであればもっと早くに家を出れば良いのだろう。

実際それに合わせられるぐらいの余裕をもって毎日起床しているのだから。

ただそれには理由がある。


まず一つ。

教室の俺の横の席にはこの学校の美少女達が集まって来る人がいる。

なので早くに行くと真横に座る俺としてはとても気まずい。

と言うか俺の席にも座られてるから鞄を置いたら即座に逃げる。


二つ目。そしてこれが最大の理由。

何故か俺が学校の人達に嫌われている。と言うのが正しいのかはわからない。

ただ避けられるのだ。女子は顔を赤くして目を逸らし、男子は睨んでくる。

しかも休み時間毎に追い掛けられる。俺、なんかしたかなあ?


そんな事を思い返しつつ通学路を歩く人達を追い抜かしていく。

目が隠れ切るまでに伸びた前髪によって視界は足元近くのみだがもう慣れたものでサクサク進んでいく。

こんな顔を見せ続けない為にも頬が隠れるレベルにまでしようとしたが家族に止められたので頬のすぐ上ぐらいになっている。


更にそれなりに足音を消す歩き方によって誰が通り過ぎたのかを解りにくくさせている。

ただたまに女子と目が合ってしまうと一瞬で逸らされるので心が折れそうになる。

男子とは目が合った所で舌打ちと共にそっぽを向かれるのだが嫌われていると思えば気にならなく……、やっぱり辛い。


そうこうしつつ昇降口に辿り着くと蜘蛛の子を散らす様に逃げられる。

そして下駄箱を開ければ大量の手紙が落ちて来た。

呪いの手紙、告白の手紙、呼び出し状等々。……読みたくねえなあ。


階段を上りつつこんな事になっている原因の顔をぺちぺち触る。

そんなにダメか、この顔。


久しぶりにもうおぼろげになった切っ掛けの出来事を思い出す。

あれは確か小学校の頃だったか。

ある日の事だった。

山の方にある公園に家族で遠出をした時の事だ。


その日は一日遊び続け、もうじき夕方になる頃。

公園内に設置されている中の一つのベンチに女の子が座って泣いていたのだ。

周りを見ても大人の姿は見えず。なんとなく、そうなんとなく。

女の子に向かって話し掛けたのだった。


下を向き続け泣いてる少女にあれこれ話し続けどうにか現在迷子だと言う事を知る。

その後も色々話してどうにか泣き止んで貰った所でお爺さんが「お嬢様」と声を出しているのを遠目に見つけた。

今思うと世話役や執事と言った感じの人だったのだろう。

彼女の容姿を見れば子供でも分かるぐらい上質な物だった。

この子はお嬢様なんだなあと思った事を覚えている。


「おじいちゃんがきたよ!ねえ!ねえったら!」

「え?じいや、きてくれたの……?」


そこで顔を上げる女の子に安心して貰える様に笑いながらじいやさんの方向を指さす。

女の子は顔を上げじいやを認めると泣き顔のまま勢い良く立ち上がり手を振る。

向こうも気づきこちらに歩き出した所で女の子がこちらにふりかえり「ありが……」と言ったきり体をびしりと固めさせる。

そして顔全体を一気に真っ赤にさせたかと思うと俯いた。

何なんだろう、と思いつつも待っていると唐突に両手で肩を掴まれる。


「そ、その顔は他の人に見せちゃダメっ!!!」

「えええええ!?」

「と、とにかくダメなの!ダメなの!」

「そ、そんなあ……、ダメ?」

「絶対、ダメ!」

「わ、わかったよ……」

「うん!」


そう言って笑ったであろう女の子の顔は逆光で見る事が出来なかった。


そこで俺は「他の人に見せられないぐらいダメな顔」と言う風に解釈して今に至る。

……あれ、今思うとあれって俺の事に惚れてたからのセリフじゃ?

とは言え当時はショックでひたすら顔を隠さないといけないと思っていたからなあ。

色々やったもんだ。


そんな事をつらつら考えつつも教室の扉に辿り着き開いている所に入る。

教室の空気がすっと変わる。……やっぱり慣れんなあ。人も殆ど揃ってるし。

そんな空気の中いつもの窓際の最後尾の位置に向かう。

その手前の席に一人の女生徒が座っておりその周囲には三人の女生徒達。

座っているのは四方木(ヨモギ)紅葉(モミジ)さん。

元気にお喋りしている人は五条院(ゴジョウイン)葉子(ヨウコ)さん。

静かに返しているのは水橋(ミズハシ)瑠々(ルル)さん。

のんびりにこにこ眺めているのは清水(シミズ)(リツ)さん。

その四人からもいつもの如く俺に視線が刺さる。

それをどうにか下を向いてやり過ごし葉子さんにどいてもらって席に座る。


座った所で一息。

ああ、何故俺の席の前と右前も女子で固められているんだろうか。

いつしか固定化されてたが……。先生に聞いても目を逸らされるし。

そこの二人からも時折視線を感じるのだがそちらに顔を向けると既に前を向いている。

……なんなんだろうか。


まあ、今日も一日平穏だと良いなあ……。


ちなみに授業に関してはきっちり聞く。

理由はただ一つ。ここで覚えておけばゲームの時間が取れるからだ。

顔を見せられないと言うのは友人も出来にくい。

その為ゲームと本を読む時間が増えていった。

何故か学力も上がったので許されたのが救いだろう。


休憩時間になると俺は即座に左手の窓を開ける。

扉の方向を見れば既に女子が数人集まっている。

鬼気迫る表情をしている。捕まったら何をされるのか……。

なのでここから逃げだすのがいつも通りになっている。


窓に足を掛ける直前隣の席から「あの」と聞こえた気もするが気にしていられない。


色々なルートを通り逃げまくる。

トイレの中を抜け窓の外から校舎の外へ。

階段を駆け上り屋上通路を走る。

撒いた所で幾つかある図書室に逃げ込む。

こちらに気付く者も居るが大体はスルーしてくれる。

ただ無言で本を一冊差し出して来るのはなんなのだろうか。

とりあえず受け取り読みそうにない物は返す。

最初の頃は心苦しかったが説明すると「合わない物を薦めて悪かった」と謝られた。

良い人達だ……。

ただ選んで貰えた人が床に膝を付けてガッツポーズしてるんだけどなんでだろうか。

まあ自分の好きな本を手に取ってもらえたら嬉しいよなあ。わかるわかる。

放課後に取りに来る事を受付の女生徒に頼みその場を後にする。

自分と同じく目が見えないくらいの前髪を持った彼女は微笑みながら次の受付への書置きを書いてくれる。なんとなくシンパシーを感じ微笑むと顔を真っ赤にされた。

あ、笑ったせいで少し目が見えてしまったか。ごめんなさいね。ダメな顔で。

そろそろ授業時間だ。戻らないと。


そんな事を3回やれば昼休みになる。

これが一番ヤバい。

明らかにガチっぽいお姉様方がやって来るのだ。

弁当を持って即座に逃げる。

この時も「あの…」と言う声が隣から聞こえてくるが気にしている余裕は無い。


飯だ、俺には飯を食べる時間が必要なのだ!


ただここで逃げ切ってしまうと後で色々大変な事になるので適当な所で捕まる事になる。

そして腹一杯食べさせられる。太る太る。マズいですって!

そう思い一度太るかも知れないと言った所次週からカロリーが少なく量も少なくして貰えた。

あ、そう言う風に対処するんですね。

そんな感じで幅広のベンチで囲まれながら誰の物を食べるかと言う胃がキリキリする食事を終えた所で教室に戻る。

最初はずっと逃げ続けようと思ったんだけどなあ。

美味いんですよ。うん。


昼を過ぎれば最後の休み時間が待っている。

しかし昼ごはんのせいで動けない為寝たフリでやり過ごす。

この時もまた右隣には紅葉さんを中心とした輪が出来るのでそれを隠れ蓑にさせてもらう。

うたた寝をしている中で「……紅葉ちゃんも大変だね」と聞こえた気がする。


眠い頭で最後の授業を乗り切れば放課後だ。

今日は図書室に寄ってから帰らないとな。

それと大量の呼び出しも待っている。

……早く帰りたいなあ。


呼び出し一件目。

告白された。

大量の見物人も居る為罰ゲームなのだろう。

俺の顔はダメなのだから。

なるべく相手の良さを褒めた上でお断りした。


呼び出し二件目。

喧嘩を売られた。

大量の見物人も居る為タイマンと言う奴なのだろう。

俺の何かがダメだったので喧嘩を売られているのだから。

なるべく相手の強さを周囲に見せつけた上で体力切れで倒した。


呼び出し三件目。

オカルト研究部に呼び出された。

入れば貞子風の女子生徒が立っておりビビるもしばらく話すと気の良い人だった。

ただ告白されたのできっちり断った上で髪を上げた方が良いとアドバイスをする。

その次の週にはえらい美人が学校に居たと風の噂で聞く事になる。


呼び出し四件目。

生活指導室に呼び出された。

入れば怖い系の国語教師が座っておりビクビクしながら座る。

だが話を聞けば俺がいじめられていないかと言う話だったので驚きながら否定する。

えらくストレスを溜めていないかとか学業に支障は無いかとか聞かれたがなんだったのだろう。

とりあえず一日の行動パターンを書いて渡すと困惑されていた。

何があったのだろう。


帰宅直前。

下駄箱前での告白シーンに遭遇した。

しかも女生徒は俺を認めると何事かを男子生徒に言ったのち走り去っていく。

男子生徒がこちらに歩み寄って来る。顔が真剣だ。

聞けば俺が彼女の事を好きだと言うらしい。そんな事は無いとしっかり否定しておいた。

そう言ってもまだ不安そうだったので話した事も無いと言うのを伝える。

ここでようやく頷いて貰えたので下駄箱を開ける。

いつの間にか付けられていた下駄箱文通用の隙間に手紙が入っていた。

家で読む事にする。


校舎を出る。

大量の視線を感じるもどうにか振り切って歩き去る。

家に辿り着くまでの道中もずっと視線を感じるが振り向いても誰も居ない。

疑問に思うも今日も平和に家に帰り着けた。

部屋に戻ると前髪を上げピンで止める前にカーテンを閉める。

後はもうゲームや宿題をして過ごす。


寝る前に貴重な友人とチャットをして明日への気力を養う。

ただ、まあ、精神が削られる事も多かったが。



俺の一日は大体平和に終わる。

たまに平和とは何かを知りたくなるが。

設定を盛り込んでみましたが……。

主人公の名前は、まだ無いです。

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