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83 「やっぱり微妙にイラつくわー……」

入口近くに置かれた椅子に座りアデルとカスミの作業風景をぼんやり見ながら横で同じ様に暇そうにしているアリサに一階で起こった事の説明をしてもらう。


「まあザックリ言うと因縁つけて来た相手を私たちで消し飛ばしたって感じね」

「まて、それはザックリ纏められても困るんだが?」

「ちなみにそこの二人も珍しく参戦してたわよ。タテヤ以外のフルメンバーだったわね」

「え……?」


疑問の目を向けると一層作業音が大きくなった。

表情は変わっていないのだがあからさまに動揺しているらしい。


「もう少し詳しく言ってくれ」

「まずはナンパされてた人達がお礼を言いに来た後に軽く入団したいって言ったから面接」

「そこは普通だな。と言うかわざわざこっちまで来たのか…」

「タテヤの姿目当てだったみたいだけどね」

「お、モテ期か?」

「そうだけど」

「……」

「……」

「……やっぱ今の無しで」

「……なんでアンタが警戒されないかがわかった気がするわ」


その後も度々やってくる引き抜き勧誘やら入団面接やらをこなしつつそれなりにワイワイやっていたらしいがそこに武装した集団が入って来て俺と戦わせろと言ったという。

連中は理由として魔王と呼ばれているのが気に食わない、との事を言ったらしい。

他にも色々悪口等を言いまくり俺をこけおどしだとも言ったそうな。

まあ実際中身伴ってないからなあ。装備とステータスに対して。

それを聞いてヨミが煽るように返答しそれに対して引っ込みが付かなくなった相手が先に攻撃を仕掛けたそうだ。

余談ではあるが一応この家もギルド関連の設定が適用出来るのでホーム防衛と言ったシステムにより敵が内部で行動した場合はPK等のペナルティなく戦闘行動が出来るようになっている。


「で、初動は?」

「ヨミとカナミが応対してたお客さん守りつつライアンガノンに兄妹とコノハナが攻撃してたわね」

「あれ、ミツとライアとカナとミノリの四人は?」

「カナとミノリは二階に行って事情説明してそこの二人を回収。私とアリスはサポートに回ってたわ。ライアさんとミツさんはいつも通りカウンターで片方はニコニコ笑顔、もう片方はお茶の用意しつつこっちの事を眺めてたわね」

「うちのメンバーが荒事に慣れ過ぎてて怖い」

「いや、その、ね?」

「ん?」


そこで少し顔を背けつつ頬に朱を差すアリサ。

何が言いにくいのだろうか。


「終わった後に皆に聞いてみたら一度はやってみたかったらしくて……」

「…あー、本拠地にカチコミとは覚悟は出来とるやろな、みたいな?」

「ええ、まさにそんな感じ……。そこでテンション上がっちゃってヨミが、ね?」

「え、ヨミが何かしたのか?」

「年下の女の子からのお姉さま呼びと入団面接の連続でストレスが溜まってたらしくてうっかり本気装備出しちゃったのよ」

「うっかりかー……」

「ええ、本人はうっかりって言ってたわね。ただ被害見てたら青ざめてたけど」

「まあそうなるな」


ヨミのうっかり出した本気によって入り口側の壁ごと道に叩き出された連中はその後二階から降りて来た追加のメンバーに囲まれて全員死に戻りをさせられたらしい。

ただその後マリーさんがやって来てわざわざ敷地内に入った後で楽しそうにヨミと戦っていたらしいのだが……。アリサから「演武みたいで綺麗だったわね」、とのコメントを貰ったがあのお方は元気だなあと思うしかなかった。


「他の面々は何処行ったんだ?」

「ヨミと私を除けば色々自由行動。パーティー組んで狩りに行ってそうだけど」

「アリサは行かなかったのか?」

「レベル上げだけするのも面白みが無いのよね。それに」

「それに?」

「事の顛末教える役も必要でしょ?」

「確かにな。それで、一階は結局どうなってるんだ?」

「壁が壊れたから一面をきっちり砕いてそこから直すらしいけど……」

「今は素通しか、何処の飲食店なんだろうな」

「ミツとミノリがテーブル出して喫茶開いてるみたいよ?ライアさんはマスコットらしいわ」

「拝まれてそうだな…」

「実際ご神木みたいな扱いね」

「まあ、うん、もう何も言わん」

「大体はそんな所。オチとしてはヨミへのお姉様呼びが定着した事と「タテヤに叱られる…」ってしょんぼりしてたヨミが見れた事ね」

「は?」


叱られるって、ヨミさん貴女ギャップが凄まじいんですけど。

びっくりしましたよ?


「あのヨミちゃんは良かったね。ねえカスミちゃん」

「あんまりタテヤに言うと私たちも怒られそうだけどね、アデル」

「その時は一蓮托生だよ!」

「それは困るな……」


アデルとカスミの雑談も聞こえてくる。

この二人、ハンマー使いなのだが君達我が家を壊してないだろうね?

やってない事を祈る。


「それで、アリサがさっきからやってるのは何なんだ?」

「ああ、これ?魔力を「精密操作」で回転させてるのよ」


話し始めた時からずっとアリサの目の前には水球の様な霧の塊の様なモノが浮いており時折球形になり回転をしたと思えばそれがほぐれて雲のように漂いだす。

そしてそれがまた運指に合わせて形を変えて行く。

気になっていた事を聞いたのだが帰って来たのは一瞬理解に手間取るものだった。


「「精密操作」で魔力を?と言うかMPの概念ってあるよな?」

「ええ、でも呪文の不発ってあるじゃない?」

「ああ、確かにあるが…」

「わざと利用して漂った魔力をスキルの力で操作してるの」

「……ちなみにどの位経験値が入るんだ?」

「二時間くらいでレベル4つかしら」

「何!?」

「維持が困難だから経験値が大量!、って程じゃ無さそうだけど確かに早いわよこれ」

「俺も取ってるし出来るかなあ」

「「無属性」があればもっとやりやすいんでしょうね」

「なるほど、無属性か」

「……アンタまさか」

「取るつもりです、はい」

「何処に向かうつもりなのかしらね?」

「ネタキャラだが?」

「……真顔で言われると微妙にイラッとするのはなんでかしらね」

「す、すまん」


「嘘よ」と言いながら操作を続けるアリサを眺める。

うん、どちらが妹なのかわからんがアリサは姉っぽいな。

しかし俺も何かをしないと落ち着かないな。

何をするか……。

なんて事を考えていると不意にアリサから声を掛けられる。


「ねえ」

「ん?」

「暇ならタテヤもこれ、やってみる?ほら、修理にも使えるかもしれないし」

「確かに必要になりそうだな。よし、教えてくれ」


何か向こう側でガタタッと椅子が床をこする音がしたがそちらを向いた時には既に二人ともすまし顔のままで作業に戻っていた。

はて、一体何かまずかっただろうか。

よくわからないのでそっとしておこう。


「じゃあやってみせるから思い付いた事を言って頂戴ね」

「間違ってたらその都度直すの方針か?」

「私もまだ手探りなのよ」

「ああ、そう言う」

「さっき思い付いた事だからね。それじゃ、やるわよ」


さっき……?

と疑問に思う間にもアリサが魔法を不発させて魔力を漂わせそれを球状に固めていく。

しばらく見ているとそれは様々な形に変わっていき最終的には霧散させられた。


「どう思う?」

「魔力操作って言ってもいいと思うんだがこれ。あと不発ってどうやるんだ?」

「えーっと……」

「何か言いにくい事でも?」

「握り潰すの」

「は?」

「魔法が具現化する前に術式を握り潰すイメージなの」

「……今、何の呪文でやったんだ?」

「バレット系」

「不発させ損ねてたら?」

「床に穴が開くんじゃないかしら」

「おいい!」


その後色々小言を言ってから自分も実践してみる事に。

今回は闇魔法の「ダーク」を使ってみようと思う。

ダークを発動させる途中で式を握り潰す……前に呪文が発動していた。

あれ?


「タテヤ、アンタ今何秒で詠唱したの?」

「えっと、数秒だが」

「10秒くらいは掛かる筈なんだけど。またおかしなステータスのせい?」

「そうっぽいな…」


そう話しつつも一応発動済みのダークを動かせないかとやってみる。

イメージとしては手に魔力を纏わせてそれで煙を触って形を整えるイメージだ。

ただやってみたは良いもののMPが凄まじい勢いで持っていかれる。


≪錬金術のスキルレベルが上がりました≫

≪精密操作のスキルレベルが上がりました≫


「ダメだこりゃ」

「直接出せるのね。初めて知ったわ」

「出来るもんなんだな」

「……もしかして何も考えずにやってたの?」

「おう」


そう言うとアリスは半目になりこう言った。


「やっぱり微妙にイラつくわー……」

「そ、その、なんかすまん」

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