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79 盾式野球

後数秒で戦闘が始まると言う所でライアンから何か丸太の様な物が放り投げられてくる。

「おーい、タテヤ!ゲンコツさんがこれ使えってさ!」と言いながら渡されたそれは長さ2メートル半程の棍棒であった。

いや、厳密には六角柱であり中心に鉄芯が入れられている。

そして一番の特徴は持ち手より上下の打撃面全体に小盾が敷き詰められている事だろう。

見た目に反して持った手の感覚はトレントの大盾レベルの重さだろうか。

ただ地面に突けば「ゴゥン……」と音がした。かなりの重さがあるようだが…。

その異様な代物にカウントダウンが終わっても動けない両軍勢。

そこに響くこの武器の名称。


「その武器の名前はね!『試作型盾棍棒』だってさ!」

「盾?」

『盾……?』


えーっと。

とりあえず、振り回せば良いのかな?

使ってみましょう。

こちらが構えたのを見て相手も戦闘態勢に入った所でこちらから突っ込む。

さて、どうなるかな?


数十秒後。

敵前衛の約半数が地面に倒れこむ中盾バットを地面に立ててしばしたたずむ。

相手が恐慌状態に陥っているのを見て思った感想は一言。

使いやすいけど酷いなコレ。


まず前進して来た連中に対し野球の要領でフルスイング。

そうした所防ごうとした連中が軒並み吹き飛ばされたり巻き込まれて地面に叩き付けられたり引きずられたりと悲惨な事になっていた。


そこで空いた時間を使い盾バットを『鑑定』してみる。


試作型盾棍棒【両手盾】 品質C+ レア度3 重量85(5)

トレントの原木に芯を入れ強化した丸太

その表面に小盾を60枚程くくりつけた物

常人では持つ事すら叶わない

防御+15(盾合計+900) 破壊力+4

※両手盾職補正[重量軽減-80]


なんだろう、コメントが思いつかない。

ツッコミも思いつかない。

周りを見る。目を逸らされる。

声を聞く。『またトラウマ持ちが増えるなあれは…』

前を向く。「ひいいいいいい」と後ずさられる。


うーん、考えていても答えは出ないみたいだしサクサク片付けようか。

しかし棍棒ばかりもあれだしな。

魔法も積極的に使ってみるか。


ヨミー!俺は魔法使いになるぞー!


と言う訳で『普通のプレイヤーじゃないのか!?』『チートじゃねえのか!?』

などなど叫んでくれている目の前の皆さんに対して魔法を使う事にしよう。

相手に対してバレット系を使ってみれば弾は弾でも砲弾サイズの物が飛んで行った。

あちらも驚いていたがこっちも驚いた。

普段飛ばされてくるサイズの物が出てくると思っていたので二撃目も用意していたのだがその前に後衛に当たり崩れた所で再び前衛を狙う。

まだ同時展開は出来ないのだが有り余っている精神と知力値、それと精密操作も微量ながら関わっているらしく高速で射出して行く。

元がレベル1で使える呪文でもある為詠唱も短く、MP消費も少ない筈なのだが割と持って行かれるのはやはり魔法職じゃ無いからだろう。

ただそれでも威力はそれなりにあるらしく当たる度に面白い様にHPが削れて行く。

段々楽しくなって来た。


「ファイアバレット!ウォーターバレット!ウィンドバレット!クレイバレット!」


『わああああああ!』


そこには右手に棍棒を持ち左手をかざし魔法弾を打ち続けつつ前進して行く少年が一人。

必死の抵抗を続ける者を吹き飛ばし、攻撃を当て続けるその者の顔を抵抗する者は見る。

その顔には年相応とは言えぬ邪悪(に見える)な笑みが浮かんでおり相手は戦慄する。

ああ、あれが魔王だと……。逆らってはいけない者なのだと……。


後半になるとMPも枯渇しかけたので再び棍棒を振り回していた。

職務投棄もきっちり効いていた様で掠っただけでもかなりのダメージを見れた。

ただ使った場合に相手に直撃するとHPバーが一撃で飛んだ上エフェクトで人が爆散するのは見れると思わなかったし見たく無いと思った。

思わず血飛沫を想像してしまったよ。

それを見て戦意を喪失したのか自棄になってこちらに突撃してくる人達のHPを飛ばして行く。

戦闘開始から約5分程で動く者が居なくなった。


≪ブラックフォレスト親衛隊が全滅しました。条件を満たした為プレイヤータテヤの勝利となります≫

≪レベルアップしました≫

≪ボーナスポイントを5点獲得≫

≪スキルポイントを5点獲得≫

≪火魔法のスキルレベルが上がりました≫

≪水魔法のスキルレベルが上がりました≫

≪風魔法のスキルレベルが上がりました≫

≪土魔法のスキルレベルが上がりました≫

≪精密操作のスキルレベルが上がりました≫


戦闘が終わった所で親衛隊の面々は俺を見て怯えた様な表情。

こちらに近付いて来る代表さんも笑ってるけど顔が引き攣ってる。


「いやはや、参加しなくて良かったと切に思うよ」

「やり過ぎましたかね?」

「うーん……、言いにくいけどそうだね」

「さすがに野球は不味かったですかね」

「それも怖かったけど……」

「?」

「笑顔が怖かったんだ」

「そうですか……」


「うん、怖かったんだ……」と繰り返す代表さん。

ごめんなさい。


「えっと、それでですね、俺はもう退散しても良いんですか?」

「ああ、もう余計な事は言えないと思う。ありがとう」

「掛かる火の粉は消化しないと行けませんからね」

「タテヤ君の場合は業火でも吹き飛ばしそうだね」


そうですかね?と言った表情をすればそうだよ?と言わんばかりに頷かれた。

確かに吹き飛ばしている気がする。

街に来て二日目ぐらいに。


代表さんが去ると見学していた面々がやって来た。

色々な表情をしながら順番に声を掛けてくる。


アリスが目を輝かせつつ。

「タテ兄、かっこよかった」

「おお、ありがとうなアリス」

ライアンはにこやかに笑いつつ。

「いやー、早速使いこなしてたね!」

「なんですかあの棍棒。バットですよアレ」

アリサは難しい顔。

「ねえタテヤ、本職以上に魔法撃ってないかしら?」

「ははは、許せアリサ」

ガノンは考え込んでいる。

「あの攻撃を掻い潜って斬らないといけないのか…、更に固くなったね?」

「ただ振り回してただけですけどね」

ケンヤは爽やかな笑顔で。

「先輩!バーテンダー服のままって凄いですね!」

「この服防御力は無いに等しいからなあ」

ミカは何かを思い出したらしく低い声。

「……やっぱり笑顔がダメですね、逃げたいです」

「……スマン」

ライアさんは笑顔のままこちらの手を握りつぶさんとばかりに繋いでくる。

『かっこよかったけど美味しいケーキは私も食べたかった!』

「え?あ、はい、ごめんなさい」


その後も口々に感想を言ってくれるが大体は盾バットの事や魔法関連で俺に対する心配が一切無かったのは最早慣れだろう。

そのままわいわい騒ぎつつ家まで歩く。

辿り着き開けた所で待ち構えていたのはカナミさん。

その顔は笑っているが目が一切笑っていない。


「ねえタテヤ君」

「は、はい、なんでしょう」

「あの二人に変な事はしてないわよね?」


そう言いながらヨミが縛られている写真とカナさんを連れ去る時の写真を見せられる。

ここで手を出した、等と言えば確実に酷い事になるだろう。


「何もしてません!縛ったのはヨミの友人です!カナさんは台詞の誤解を解く時間が欲しかったんです!」

「あら?カナからは口説かれたかも知れないってメッセージが届いてたけど」

「そ、それは……」


どう返答すれば良いんだろうか。


「……えっと」

「タテヤ君」

「はい」

「一緒にミノリちゃん、説教しに行きましょうか」

「え?なんて言うんですか?」

「『ギルマスの逆鱗に触れた』、でしょ?」

「あー……。そうですね、行きましょう」

「ちゃんと怒れたら二人の事は流してあげるから」

「その理由は?」

「上に立つんだからもっと堂々としても良いって事」

「そうですかね?」

「そう言う面もあるのよ?」

「そう言うものですか」


ゾロゾロと中に入りミノリを捕まえた所で上階に向かう。

「え!?え!?」と言って困惑していたミノリだった。


この後色々と説明したり説教したりをしていた所にヨミとカナが帰って来て現場を見られた自分達が狼狽したのは忘れたい記憶だ。

……イベントの準備したかったんだけどなあ。

新武器登場。

「持ち手があって盾を付ければ盾扱いに出来るんじゃ?」と考えた結果です。

威力はカウンターと重量ダメージ=破壊力となっております。

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