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73 失敗談と逃走と捕獲の輪

眺めていると座っていた者達が立ち上がり入り口の方に固まって相談しだす。

漏れ聞こえてくる声を拾えば誰が代表で行くのかを話し合っているそうだ。

ヨミの方を見ればミノリに掲示板を見せられておりそれを見て察した様子。


「……まあ、私がとやかく言う事でもないわね」

「タテヤさんはここまで怖くないですよね!」

「なんと言うか……書き込まない方が良かったか?」

「教えたのは私だから別に良いんだけど最初から飛ばしてるわね」

「いやいや、有名人が書き込むとか凄い事じゃないですか!」

「そうか。それで二人に相談があるんだが」

「何かしら」

「なんでしょう?」

「部屋に引き篭もっても良いかな?」

「一体どう言う発想したらそうなるのよ?」

「えっ!?」

「入り口を見てくれ」


入り口?と首を傾げる二人に後ろを振り返らせる。

入り口傍にはこちらをチラチラと見ながら話し合いを続ける集団の姿。

それを数秒眺めてから理解したらしく顔が戻ってくる。


「この後魔王お披露目会やろうとか言ってるけどどうするの?」

「魔王じゃなくてギルマス扱いして欲しかったかなあ」

「他にもカナを前面に出して後ろでサポートとかも言われてるわね」

「何故的確に弱点を突いてくるのか、俺にはそれがわからないんだ」

「カナの事苦手なの?」

「一回おどおど系少女に話しかけ過ぎて惚れられてると勘違いさせた事がある」

「発端は?」

「自分が好きな本を相手が持ってたからつい……」

「……まあ、わからなくも無いけど」

「相手は普通に返してくれたんだが周りが邪推してな」

「お互いに困るわね。でもカナが苦手な理由は?」

「単純にカナさん綺麗だからなあ」

「ゲームだし普通だと思うけど?」

「それになんていうの、性格?がとても良さそう」

「純朴?」

「多分それ」

「惚れそう?」

「いや、どちらかと言えば眺めたい」

「その心は?」

「近所の和食屋で割烹着姿で働いてる所を見たい」

「随分具体的ね…」

「ヨミは巫女服だな」

「え、私も?」

「おう」


それを聞き「おおお、デレですね!」と叫ぶミノリ。

少しのけぞって口端をひくつかせるヨミ。


「……普通は本人には言わないんじゃないの?」

「ハハハ、ヨミさんや」

「何?」

「こんな人が多い所に居たら俺がどうなるか知ってるだろう?」

「え?…もしかして、また?」

「ああ、緊張してテンションがハイになってる」

「忘れてたわー……。ところでミノリ止めなくて良いの?」

「へ?」


間に挟まれたままこちらの掛け合いを聞いていたミノリを見る。

手元に光る表示枠の中、ミカにメッセージを送った事を告げる通知が届いていた。

そして残る下書きには先程からの会話を纏めた物が書かれていた。


あ。


急ぎ振り向くとまずミカがメッセージを読みその後にカナが読み顔を真っ赤にする。

そして周りの面々も読み笑顔になったりジト目になったり半目になったりしていく。

ミツも聞こえていたのか[女たらしですね]と口の動きで言ってくる。

俺は色々と何かを削られる音を聞きながらヨミへと向き直る。

既にヨミはミノリに対してアイアンクローを実行していた。

「頭が割れますううううう!」と叫びながらくねくねしているミノリに対して特定の部位のみをポカポカ殴っているライアさんが見えるがやはり気になるのだろうか。


「なあヨミ」

「何?」

「とりあえずライアさん頼むわ」

「わかったわ。どうするの?」

「逃げる」

「そ。行ってらっしゃい」

「すまん。それとフォローよろしく」

「もう慣れたわよ。後で帰って来なさいよ?」

「出来ればな」


そう言い残し跳ね上げ式の天板を上げてカウンター内に入る。

何をするんだ?と言う疑問が聞こえてきそうな空気の中、奥の作業室に向かう。

慌ててこちらに動く面々。


『えっ、ちょっと待っ』

「ごめん、ちょっと落ち着く時間をくれないか!」

『えええ!?』

「すまん!」


そう言い放ち部屋に入る。

中はすり鉢や軽量機、大なべやかまど、大量の羊皮紙等が置かれているが今は確認している暇が無いので足早に通り過ぎる。目指すは一点。

そして作業室の奥にある裏口を開けて俺は逃げ出した。

扉を閉め上を見上げる。

家々が密集して立つ事により出来る隙間から覗く青空。

見回せば段差も多いようなので遠慮なく使わせてもらい屋根上に上がる。


自由だー!


いや違う。

早速色々メッセージが届いているが今は無視。

落ち着ける場所、落ち着ける場所は何処だ!

この時何故俺は普通に自室に帰ると言う選択肢が無かったのか。

それは自分でもわからないんだ。


そして適当な所で地面に降りて歩く事数分。

現在目の前にはこちらに向かおうとする魔法使いの女性とそれを羽交い絞めにする男性。


「ああ、魔王様!やっと見つけました!さあこちらに来て私を蹴って下さい!」

「すまん魔王さん逃げてくれ!コイツ年下好きなんだ!」


驚いて足を止めたのが運の尽き。

遂に補足されてしまったみたいです。

そして声に釣られて集まってくるギャラリー。

あれよあれよと言う間に逃げられなくなった。

隙間、隙間は何処ですか!?

俺の逃げられる隙間のある隙間はありませんか!?


「お、珍しいな魔王様一人なんて」「基本的に誰かしら美少女と居るもんな…」「羨ましいぜ……」「爆ぜれば良いのにな」「ああ、もげれば良いのにな」「それにまた新入り入ったらしいぞ?」「え、マジかよ今度はどんなのだ?」「目隠れ巨乳」「マジかよ俺にピンポイントだわ」「お前……捕まるのか?」「怖っ!怖い事言うなよ!」「でもお前のパーティー普通ぐらいが多いよな」「まあ兄妹でやってたりするからな」「へえ、あのふんわり系のハンマー使いが?」「おう。よくわからんがたとえゲーム内でもハンマーとか使えるようになればリアルの方でも役立つかなって言ってなあ」「色々ツッコミ所が凄いな」「まあやる理由は人それぞれってこったな」「で、今日のこれは何だ?」「ああ、あの何故か一定数居る蹴られたい派に補足されたみたいだな」「おかしな派閥も出来てんな」「他には?」「ああ、『ヨミさんに斬られたいで御座る派』『アリサアリス姉妹に罵られたい派』『カスミさんにハンマーホームランされたい派』『カナミさんにあらあらって振られたい派』『カナさんに微笑まれたい派』『魔王様にお礼を言いたい人達』『戦闘狂ズを倒したい派』『勇者を崇める会』『新入り研究部』とかがあるらしいな」「全てにツッコミ所があるがとりあえず魔王様にお礼を言いたいってのは?」「女性も多いが俺ら側としても過度に避けられる事が減ったからな」「へえ、そりゃどうしてだ?」「ああ、お互いにやり過ぎると蹴られるって共通認識がな……」「ああ、男女気にせずに殴ってたもんな……」「まあそう言うこった」「ちなみに現状の事宵闇の森の面々は知ってるのか?」「一応情報流したから後で来るんじゃないか?」「お、書き込み入ってるぞ」「ん、何々?『留めといて下さいね! ケンヤ』、だとさ」「どうする?」「まあ眺めとくだけで良いだろ」「そうだな」「そうしよう」「ヨミさん来るかも知れないしな!」「「「ああ!」」」


なんか色々出来てる!?

そして書き込まれてる!?

しかも時間経過でゲームオーバーになりそう!

やめて!俺の精神力はもう0よ!

実際は800強あるけど!

色々あたふたしているとずりずりと後ろの男性を引きずってくる女性の姿。

男性から声を掛けられる。


「魔王さん、いやタテヤ君、か?すまん、頼みがある!」

「一体なんでしょう?」

「コイツの事を思いっきり蹴っ飛ばしてくれないか!?」


ですよね。


その言葉に暴れていたのをピタッと止めてこちらを期待のまなざしで見つめてくる女性。

幾段声量が落ちた周囲からは「蹴るのか…?」「蹴るだろ…」「蹴られるのか…」「蹴るんだろうな…」「俺は普通に挑んでみたい」「俺も挑んでみたいな」「記念に一回かよ」「違いねえ」なんて会話も聞こえてくる。

抑えている男性は困り顔でこちらを見ている。

あー……。はい、わかりました。


「蹴りましょう」


その言葉にワッと沸く女性と周囲のギャラリー陣。

男性はホッとしたような顔。

うん、普通喜ぶような台詞じゃ無いよね?

遠い目になった俺を置いて人の壁によって戦闘範囲が整えられていく。

「次は私と戦って下さい!」なんて声も聞こえる辺り皆慣れて来たらしい。



色々と騒がしくなってしまった。

静かにソロ活動をしたかったんだけどなあ。

ドMのお方と男性の名前、どうしましょうか。

ネーミングセンスの無さはこれ、どうしましょう。


困りました。

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