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71 追い詰められるヨミ

色々不安を抱えつつも一階に降りる。

正確にはカナミとコノハナに両腕を掴まれて宇宙人アブダクトシーン状態で連れて行かれた。


「何故肘関節の極め方なんて知ってるんだ……」

「あら、護身術は大事よ?」

「大切で御座る!」

「何故今使うんだ……」

「面白そうだから!」

「カナミ殿に頼まれましたからな!」

「君等は敵なのか?」

「応援してるのよ?」

「仲間で御座る!」

「どっちを信じれば良いんだ?」

「私ね!」

「拙者に御座る!」

「ああ、うん、もうどっちでも良いや……」


そのまま一階にまで連れて行かれた。

降りた先に居たのはカスミとアデルを除いた残り全員。

入り口側には戦闘狂二人と兄妹。既に死んだ目の兄妹は大丈夫だろうか。

テーブルには姉妹とカナとミノリ。結構和気藹々。

そしてカウンター。ミツがバー内に立っておりその前に座るヨミとライアさん。

階段の音に気付き振り返ったヨミと目が合う。

次に俺の状況を見て察したらしく目線で謝られた。

両脇の二人に手を離された後前に押し出されたのでヨミの元へ。

その辺りでこちらに気付いたのか静かになる室内。

視線を感じる。同時に耳を澄ませているのが解かる。

近付くとヨミと並んで座っていたライアさんが一つ左にズレたので空いた席に座らせてもらう。

さて、どう切り出せば良いのだろうか。


「おはようさん」

「おはよう。カナミが主導かしら?」

「その通り」

「で、今日は一体何かしら」

「昨日お前が失言したらしい事を聞かされてな」

「失言?…チャット、は知ってる筈無いわね。何?」

「『アイツの事は友人。そう、親友だから!』と顔を真っ赤にしながら言っていたとの情報が入ってな」

「なっ!」


それを聞いて一瞬で顔を真っ赤にした後下を向くヨミ。

あー、うん、こうなるわな。

少し待てばまだ少し頬に赤みを残しながらも会話を続行する模様。


「……カナミかしら?」

「コノハナ」

「珍しいわね」

「俺もそう思った」

「よりにもよってそこを言われるとは思って無かったわ…」

「他にもあったのか?」

「本人に言える訳無いでしょ……」

「それもそうか」


確かに自分が精神的ダメージを受ける話はしたくないもんな。

ただここで聞かなかった分後で周りから聞かされそうだ。

今日はヨミの為にも逃げるとしよう。

そんな事を考えていると幾分安心したようなヨミが口を開く。


「…ありがとね」

「何がだ?」

「なんでもない」

「そうか?」

「そうよ」


俺にしか聞こえなかったが、まあなんでも無いのだろう。

得心していると聞こえる少女の声。


『お兄ちゃん、女の子との会話が下手だね?』


ギシ、と体全体の動きが止まった。

突然の硬直に怪訝な顔になるヨミ。


「どうしたの、いきなり固まって」

「いや、なんでもな」

『ヨミちゃんにも聞かせてあげよっか?』

「……それは勘弁してくれライア」


口に出した所でヨミは納得が行った様子。

俺はここで後ろを向いていれば気付けただろう。

ライアさんの座る椅子の下の方からヨミに向かってツタが伸びている事を。

そしてそれが何を出来るのかと言う事を。


「ああ、ライアさんが話してるのね」

「そう言う事だ。ついでに今は俺の会話の下手さをつつかれている」

「前からよね、会話の下手さは」

『最初からだったね』

「え、前から思われてたの?」

「アンタたまに理解し過ぎておかしな返答になってたりもするから」

「そうか……」

「私は慣れたし他の子も面白いって言ってたからマイナスでは無いと思うけど」

「けど?」

「もう少し女の口説き方を知った方が良いらしいわね」

『女の子の口説き方も知った方が良いよね!』

「何故口説かねばいけないんだろうな」

「リアルで役立てられるスキルだからじゃないの?」

「ああ、そう言う……、多分違う気がする」

「そう言えばそうね」

『でも会話は上手になった方が良いよ!』

「そうか……」

「あ、それとタテヤ」

「なんだ?」

「私にもライアさんの声が聞こえてるんだけどこれはどう言う事かしら?」

「え?」


そこで左を向く。

そこにはこちらに向かってニコニコ笑顔状態で右手でピースをするライアさんの姿。

左手はお茶を持っている。

そして一言。


『ヨミにもさっき祝福あげちゃいました!』


ライアさん、そう言う事は与えた時に言って下さい。

色々とびっくりしますんで。ヨミもびっくりしてますんで。

太腿を叩かれたのでライアさんの方を向くと太腿の上に乗られる。

会話がしにくかったようだ。

ヨミを見れば少し考えた後飲み込めたのか表情を戻す。


「えーっと、改めてになるけどヨミです。よろしくねライアさん」

『よろしくね!ヨミ!』

「タテヤからは話せないって聞いてたんだけどどういう事かしら」

「ヨミ、ステータス見てみろ」

「ステータス?……えっ」

『祝福あげちゃいました!』

「おめでとう、これでヨミもライアと散歩が出来るな」

『楽しみー!』

「えっと、その、ライアさん?どうして私なのかしら」

『えっとねー、気に入ったから!』

「あ、そう、ですか……」

「諦めろヨミ、俺もよくわからんまま貰ったから」

「なるほど、確かにこれは焦るわね」

「な?驚いただろ?」

『ね?驚いたでしょ?』

「驚き過ぎて逆に普通に受け入れられてるわね」

「ヨミは凄いな!俺結構時間掛かったのに!」

『ヨミおねーちゃんは凄いね!』

「ライアさんの口調が外見と一緒で助かったわね」

「これで威厳たっぷりだったら俺は今頃土下座してるぞ?」

「何やったんだっけ?アンタ」

「んー……」

「もしやらかしてたなら謝っときなさいよ?」

「大丈夫だ、昨日謝ったから」

「ダメダメね……」

『ダメダメだよね!』

「ひでえ話だ」


がくりと首を落とし落ち込んでいると目の前に置かれる紅茶。

顔を上げればいつも通りのミツのすまし顔。


「おお。ありがとう、ミツ」

[冷めない内にどうぞ。とは言え冷めないとは思いますが]

「ん?何か細工がされてるのか?」

[注がれた物に対する温度不変の魔法が掛けられていますので]

「……それは使っても良かったのか?」

[使われなければ食器ではございませんから]

「そうか。頂くよ」

[ごゆっくりどうぞ]


そう言って一礼。

それを見てうーん、カウンターよりもフロア毎任せた方が見た目的にも良いよなあと思ってしまう俺はかなり何かに染まっているだろう。

ヨミとライアさんは楽しく話している様子。

大体が俺に対するあれこれなのは共通の話題が少ないからだろう。

内容が俺のダメな所を上げ連ねてるけどきっとそうに違いない。

後ろからの視線が柔らかくなった事はきっと気にしてはいけない。


泣ける。


そんなこんなでしばらく膝の上のライアさんを適度に撫でつつお茶を飲んでいると空いた左隣に人が座る気配。

向くと興味津々にこちらを見ている様に見えるミノリの姿。

見ているとこちらに向かって頭を下げてくる。

そして胸元が……、咄嗟に上に目を逸らした。


「タテヤさん、昨日はありがとうございました」

「おお、そうか」


危ねえ!ガン見しかけた瞬間膝の上と右横と前と後ろからのプレッシャーが半端なかったんですけど!

ああ、怖かった。とても怖かった。


「それにまさか私が宵闇の森に入れるなんて思ってませんでした」

「まあその辺はミノリさん次第だったからな、俺は特に何もしてないし」

「え?本気で言ってますか?」

「ん?まあ、ファンごと吹き飛ばしたのは俺だけど…」

「いえ、そこではなくてですね」

「何かあったのか?」

「昨日私が面接を受けた時にヨミさんは『アイツが連れて来たのなら大丈夫そうね』って言われて面接も何も無かったんですけど」

「……」


そこでヨミの方を向く。


「えっと、その……」


とごにょごにょ言いつつ顔ごと逸らされた。

おい。おい。


「まあ、うん、軽い気持ちで連れて来ちゃったからな……すまんな」

「元々の発足理由が理由だしアンタが連れて来たなら良いと思ったの!」

「そ、そうか。今度は入りたいかどうかも聞く事にするよ」

「うん。でもあんまり軽々しく入れないでよ?」

「この数日間の事を思い返そうぜ」


そう自分で言った所で俺自身も思い返してみる。

ライアンとガノン、アデルリット、ケンヤとミカ、ミノリ。

ギルドマスターになってから僅か4日である。


「……軽々しくはダメね」

「……そうだな」


そこに不安そうに口を挟むミノリ。


「えっと、私、ダメなんでしょうか?」

「それは無いわね」

「それは無い」

「あ、ありがとうございます!あ、それと実際に聞きたい事が!」

「何かしら?」

「はい、なんでヨミさんはタテヤさんの事をアンタ呼びなんでしょうか?」

「何でかしらね?」

「なんだか夫婦っぽいですね!」


その一言に顔を見合わせる俺とヨミ。ヨミは少し頬が赤くなっていた。

二人して首をかしげ振り返る。


「そこは幼馴染じゃないか?」

「夫婦では無いわね」

「ああ、その返答がもうツーカーの域に!」

「なあヨミ」

「何?」

「このハイテンションさんから逃げ出したい」

「奇遇ね、私もよ」

「ああ、ゾクゾクしますう!」


自らの身体を抱きくねくねしだすミノリ。

そうしてまた胸が腕で潰されて……俺は目を背ける事に成功した。


「……これ誰に押し付けようか」

「アンタに押し付けたらダメかしら」

「勘弁してくれ」

「ああ、酷い!酷いです!でもカッコいいですね!」

「「どこが!?」」

「おお、息ぴったりですね!」

「いや今のは純粋に分からなかったんだけど!」

「焦ったわね」


そう言うとふふんと胸を張るミノリ。

俺は目を逸らした。


「それはですね、お二人が魔王と魔王の妻だからです!」


あー、そっちかー……。


とりあえずヨミと二人で説教を実行。

説教なのに嬉しそうに怒られるミノリさんは手強いと思った。

諦めてないな……?



今日も一日騒がしくなりそうだ。

色々と。

二時間程で書こうとすると会話が増えますね。


メインヒロインはヨミなのでしょうか。

うーむ。


それとミノリさんがM入っちゃいました。

あれ?

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