70 追い詰められるタテヤ
十二日目。
≪フレンド登録者からメッセージが3件届いています≫
≪ギルドメンバーからメッセージが3件届いています≫
朝の日差しを瞼に感じつつ目を開けた所でツタベッドから起き上がる。
今日は誰も来ていないようだ。
首を回して机の上に置かれた木彫り熊を見る。
今にも動き出しそうな熊が不思議な緑色の光を放っている。
今日も神々しいですね。
そこから視線をズラすと紙の束が見える。
「確か昨日は幾つか書き出して終わったんだったか」
バル王から届いた書類や紙、本の山はまだまだ余っている。
自分が昨日読めた部分はなんだったかな。
確か人形の種類とかそんな感じだったような覚えがある。
一文丸々読める所なんて禄に無かったので苦労したなあ……。
今日はもう少し読めると良いな。
その前にメッセージを確認しよう。
フレンドからはヨミ、ライアン、ガノン。
内容を要約するとヨミが『ミノリとケンミカ兄妹もギルドに入った』、ライアンとガノンが『自分がケンヤ(ミカ)を推薦した』だった。
ギルドメンバーからは3人。内容はケンヤが『入団しました。これからよろしくお願いしますね、先輩』、ミカが『入団しました、でも上役が怖いです』、ミノリが『入団しました!いやー、ヨミさんって怒ると怖いですね!さすが嫁!』
ヨミ達には「了解」と返しておく。
新人には……。「俺も出来るだけフォローはするから頑張ってくれ」とでも書くか。
即座に新人3人から返信が帰って来た。
ケンヤ。
『先輩!正直他の方もオーラが凄いんで早退してもいいですか!?
…と言うのは置いといて改めてよろしくお願いします!』
ミカ。
『あの、ガノンさんの笑顔が怖いんですけどどうにかなりませんか!?
ちゃんとフォローして下さいよ!?あ、よろしくお願いしますね!』
ミノリ。
『昨日はヨミさんに色々聞いたらぶった斬られました!ごめんなさい!
あ、私からの呼び方はタテヤさんになりました!よろしくです!』
返信は順番に『早退は許可しません』『耐えろ』『俺に被害を飛ばすなよ?』と返しておく。
彼等も順調に馴染んでいる様で何よりだ。
返した所で応接間に向かう。出た所で誰も居ない事を確認。
おや、ミツは下の階に居るのだろうか。
ま、良いか。
デスクに行き椅子に座り書類を引っ張り出す。
自動人形に関しての歴史が読める様になっていたので読んでみる事に。
所々読めなかったが大雑把に纏めると最初は観賞用の人形が作られた。次に魔術的な儀式の為に用いられる|人形≪ヒトガタ≫が作られるようになった。その後に糸人形に近い物が作られた。次にカラクリ仕掛けが仕込まれた物が作られた。それに制御核を入れて自分で自分を操る事が出来るようにして自己判断で人をサポート出来る者が自動人形らしい。昔は簡単な制御核を胸に埋め込み背面等に仕込まれた制御パーツから伸びるワイヤー等を伸び縮みさせそれで各部位を動かしていたらしい。しかし充電式な上に大量に魔力を消費した為あまり数は作られなかったらしい。今は内部に動力炉を搭載しそれから得られるエネルギーを用いて各関節に伝達ケーブルや魔法繊維等で届け動かすと言った手法になっているそうだ。これを極めていけば古代文明の文献に記されたレベルに辿り着けるのでは無いか。と言った内容だった。
命令に従うだけの物はゴーレムらしい。
自動人形はミツだけを見るのであればメイド、だろうな。
実際に動いているのだから頼めば色々アドバイスをくれると嬉しいな。
まだまだ先は長いなあ……。主に文量が。
次に移ろうとした所で『魔王の部屋』の扉がノックされる。
扉に目を向け「どうぞ」と声を出すと「お邪魔するわね」「お邪魔するで御座る!」とカナミとコノハナが入って来る。
「なんと言うか、珍しい組み合わせだな?」
「タテヤ君もそう思う?」
そこで申し訳無さそうに口を開くコノハナ。
「一昨日にタテヤ殿に対して礼を言うのを忘れていまして……。それと謝罪をしたくてですね、ええ」
「ん?隠し天井の件か?」
「さっき聞いたらコノハナが頼んだみたいでね」
「憧れだったもので……。申し訳ありませぬ!」
コノハナ、口調崩れてるが大丈夫か?
「いや、まあ俺からすれば建てて貰えただけで嬉しいからさ」
「なんと!許して下さるのですか!?」
「うん、ただ何処がどう繋がってるのかは教えてくれるとありがたいな」
「一応全ての階に仕込んでありますが」
「オイ忍者」
「把握しているのは拙者のみですゆえご心配無く!」
「この部屋には?」
「ありませぬな」
「なら良いか」
「ありがたき幸せ!」
コノハナと二人頷きあう。
その様子を見ていたカナミは感心した風な表情。
「タテヤ君、思ってたけど凄く大らかな人なのね」
「そうか?」
「普通なら怒る所だと思うんだけど」
「そうかね」
「そうよ?」
「まあノリで頼んだからなあ、この家」
「……ヨミちゃんも報われないわね」
「何故そこでヨミが?」
「あら、惚れてるんじゃ無かったの?」
「まっさかー。友人ですよ、アイツは」
「本当にそうなの?」
「そうですけど」
「そうなの……」
そう言って笑顔になるカナミさん。
なんだろう、怖いです。
「それで、二人は何の用だ?」
「拙者は先程の事を言うのが用事で御座った」
「私は見学って所かな?」
「そうか。まあ何も無い部屋だけどのんびりしてってくれ」
「それについてなのですがタテヤ殿も一階に降りて来られてはどうでしょう」
「そうね、そっちの方が寛ぎやすいかも」
「一階?誰か居るのか?」
「ミツ殿とライア殿がカウンターにて談笑して御座った」
「他にも居たわね。カナも居たかしら?」
「本拠地の方はどうなってる?」
「今も使われておりますが如何せん我等は目立ちますゆえ、こちらに」
「後はミツさんのお茶が美味しいのよね~」
「ああ、そう言う…」
姿が見えないと思ったら一階か。
それと多分だがギルドメンバーの大半が来てる気がする。
顔合わせは一日ぶりか?
それにしても何か忘れてる気が……。
「そう言えばタテヤ君」
「なんでしょう、カナミさん」
「一昨日のヨミちゃんとはあの後どうなったの?」
「特には何も無かったですけど」
「本当に?」
「本当ですけど」
「そう……」
そこでシリアスそうな顔になるカナミ。
そんな顔されてもなあ。
「さっきも言いましたが本当に何も無いんですってば」
「証拠は上がってるのよ?」
「なん、だと……?」
何となく付き合ってみる。
ただ次の発言が結構困った。
「ヨミちゃん昨日ミノリちゃんの相手してからずっとタテヤ君が来るのをそわそわしながら待ってたんだけど」
「俺はどう反応すれば良いんでしょうか」
「まさに恋する乙女だったわね、あれは」
「あの、すみません、真面目に困ってます」
「案外初心なのね?」
「外見が補正もあるとは言え美少女ですからねアイツ」
「脈ありかしら?あ、それとさっき会ったらすっきりした表情だったんだけど何かしたの?」
「さあ?いつも通りチャットをしたぐらいですが」
「へえ、女の子とチャット、ねえ」
「あの、一週間程前までは男だと思ってましたからね?」
「へぇ…」
そう言ってにっこり笑うカナミ。
何故その笑みは怖いのだろうか。
俺にはきっとわからない。
「タテヤ殿は贅沢で御座りますな!」
「コノハナ、どう言う意味だ?」
「ヨミ殿は実際には『アイツの事は友人。そう、親友だから!』と顔を赤くしながら言っていたであります!」
そんな所にコノハナにドヤ顔でヨミの恥ずかしい話を暴露された。
なんだろう、それを俺が知ってどうしろと言うのだろう。
どんな顔をして会えば良いというのだろうか。
「カナミさん、俺、下に降りたくないです」
「理由を聞いても良いかな?」
いたずらっ子の様にニマニマしながら聞いてくるカナミ。
くそう。
「絶対気まずくなりますよね?」
「そうね、気まずくなるわね」
「でも行けと?」
「男の子なんだから行っちゃいなさいな!」
「えー……」
「行かなかったら私達で色々バラすけど」
「何をですか?」
「ヨミちゃんが叫んでた内容をタテヤ君にバラしちゃったって」
「後で俺が斬られそうで嫌なんですけど」
「そこまでは行かないわよ、多分」
「多分!?」
そこでコノハナがドヤ顔でポーズを決めつつ叫ぶ。
「安心めされよタテヤ殿!もしもの場合には拙者が守りますゆえ!」
「守ってもらう人から爆弾投げられたんだけど!」
「そこに関しては本当に申し訳ない!」
「反省してねえな!?」
ツッコミを入れた所で二人の表情が真面目な物になる。
一番の理由はね、と前置きした後こう言われた。
『嫁なら良いと思った』
「いやダメだろ」
そうツッコミを入れると笑う二人。
単純に暇だったんですね。
なんだろう、疲れた。
ただ降りる事は確定しているらしい。
ちょっと待ってちょっと待ってとても気まずいんですけど。
……大丈夫だよな?
コノハナさんの口調がホントに難しいです。
御座る口調にも出来ず中途半端です。
そして下手に口に出してしまったが為に仲間に追い詰められるヨミさんはドジっ子だと思うんです。




