68 ライアさんチョップ
今まで知らなかったPVの見方をつい先日ようやく知りました。
もう直ぐ100万PVと10万ユニークに到達しそうになってました。
とりあえず椅子から転げ落ちました。
毎日ありがとうございます。
応接室兼仕事部屋の中央には絨毯が敷かれておりその上に長方形のトレント製の木造テーブル、革張りの二人掛けのソファーが二つ、同じく革張りの一人掛けのソファーが二つ置かれている。脇には飾り棚もあり武具なども飾れそうだ。
テーブルの長辺に二人掛け、短辺に一人掛けが配置されている。
下の倉庫に行けば椅子も用意されていたので居心地は良いと言えるだろう。
そして現在。
片方の二人掛けのソファーに仲良く並んで座っている姉妹にミツがお茶を淹れている。
もう片方には俺とその右にライアさんが座っている。
そして今俺はライアさんの顔が見れない状態に陥っている。
顔を向ける。ライアさんの笑顔。だが少し怒り笑いのようにも見える。
イカン、怖い、どうしよう。
言い訳は許されるのかな?
顔を背けた先にはミツのすまし顔。
[タテヤ様]
「なんでしょう」
[早く謝った方がよろしいかと思われます]
「はい」
先にライアさんかららしい。
意を決してライアさんを見る。
ライアさんは胸の前で腕を組んで話を聞く姿勢。男らしい…。
何か向こう側で「えっ」みたいな視線を感じるが今はスルー。
ここは誠意を込めて謝るしかあるまい。
いざ!
「ライアさん。昨日は何も言わずに外泊してごめんなさい!」
ソファーを降りてライアさんに対して土下座をしつつ叫ぶ。
実際はログアウトだがゲーム内では間違っていないだろう。
表情は窺えないが三人の声は聞こえてくる。
[そうなさいますか]「生で見れるとは思ってなかった」「酷い絵面ね…」
うん、ソファーに座った少女に男が土下座。酷い絵面だよね!
だが許してもらわないと先に進めないのでここは固持させてもらおう。
素人の土下座は危険とも聞くが後は五体投地位しか思い浮かばない。
それにしてもやったは良いけどどうやって返事を貰えば良いんだろうか。
そんな事を考えているとふと声が聞こえる。
『私が怒ったのはそこじゃないよ、タテヤお兄ちゃん』
んんん!?
驚いてガバッと顔を上げるといつものニコニコ笑顔のライアさんの顔が目に入る。
急ぎ顔を横に向け三人の方を見ると俺の行動に驚いているらしい。
それに構わず口から疑問が声として出る。
「今の声は……?」
「声?誰も出してないわよ?」
「もしかして、ライアさん?」
[私達には聞こえていない様ですね]
「と言う事は…」
皆でライアさんに目を向ける。
そして質問。
「今のはライアさんですか?」
良い笑顔のドヤ顔で頷かれた。
どうやら脳内に直接話しかけられたらしい。
まさかとは思ったが本人のようです。
しかし良い声だった……。
いや、今はそう言う問題じゃない。
色々聞かねば。
「えーっと、ライアさん、話せたんですね?」
『最初から話そうと思えば出来たよ?』
「え、じゃあなんで今まで……」
『ルーネから『話せない方が都合が良い事もあるのよ?』って』
何たる理由か。先生、一体何を教えてるんですか。
確かに色々あったけどさ。
「……そう、ですか」
『うん』
「えっと、今の所聞こえるのは自分だけと言う事なんでしょうか」
『普通に話せもするけど他の人には神託みたいな扱いをされるかも知れないから』
「へ?」
『一応これでも大精霊なのです』
えっへん、と無い胸を張りつつ言われる。
へー、大精霊かー。……。
「え?」
『驚いた?』
「驚きました」
『それに念話は色々と制約もあるから』
「あー……。なるほど、そう言う事ですか」
『そういう事なのです』
「一応納得しました。それで、怒ってた理由を聞いても?」
『うん、その前にお願いがあるの』
「なんでしょう?」
『敬語をやめてくれない?』
「えっ」
『ダメ?』
「そ、その、えーっと」
『おねがいします』
そこで頭を下げられる。
ぐぬぬ。
「わかったよ…」
『ありがとう!』
そう言ってまたニコニコ笑顔になるライアさん。
うん、何故俺の周りには敬語を拒否する女性しか来ないのでしょうか。
敬語の方が楽なんですけど!
「それで、理由はなんだったんだ?」
『なんで私も散歩に連れて行ってくれなかったの?』
「えっ、散歩?」
『楽しみにしてたのに……』
「あの時は直ぐに帰って来れるからと思ってました、はい」
『もう!』
ごめんなさい、ホントごめんなさい。
謝り倒してどうにか許してもらいソファーに座り直す。
[タテヤ様、こちらにも解説をして頂けませんか?]
「こっちからはアンタが一方的に困惑したり謝ったりで訳がわからなかったわよ」
「タテ兄、教えてくれる?」
「あ、そう言えばそうだったな」
三人からは俺が驚愕したり急に敬語をやめたり言い訳をしている光景しか見えなかったらしいのでライアさんが念話を出来る事、普通に話せもするが事情があって喋れない事、怒っていた理由などを説明して行く。
三人に納得してもらえた所でライアさんから改めて一言。
『普段は話さないから頑張ってね、お兄ちゃん』
「ああ。わかったよライア ……さん」
さん付けした所で笑顔のライアさんにチョップを食らいHPが9割消失した所で気絶した。
どうやら防御力が関係無い割合ダメージの様な物を食らったらしい。
さん付けもダメかー……。
目を開けるとこちらを見下ろすライアさんの顔。
ソファーの上で膝枕をされていたらしい。足は手置きの外に投げ出されている。
身体を起こそうとすると額に左手を当てられ起こせない。
何となく敬語になる。それが悪手だとも知らずに…。
「あの、ライアさん?起き上がりたいのですが…」
起きれない。
「ライアさん?」
段々視界に手のひらが入って来る。
「えっと、えーっと。敬語だから怒ってます?」
その言葉を聞いて笑みが深くなると共にアイアンクローを食らった。
こめかみに走る激痛。
「アアアアアアアアアア!!」
自分の悲鳴を聞きながら落ちるとは情けないって?
いやね、頭が割れるかと思いましたよ。
物理的に。
そしてまた目を開ける。
体勢はさっきと一緒。
目の前は今度は何故かアリスの顔。
え?
「おはようタテ兄」
「お、おう。なんでアリスが?」
「やってみたかった」
「そうか」
「そう」
「とりあえず起きて良いか?」
「ん」
身体を起こすと向かい側のソファーにてアリサがライアさんに色々質問してそれに対して首振りやジェスチャーで返答しているみたいだ。
ミツは給仕をしているが質問されれば返答している。
俺が話し掛けるよりも返しが柔らかいんですけど。
何故だ。
「あ、起きたのね。ライアさん借りてるわよ」
[おはようございます。良い眠りでしたね]
「俺も借り受けてる側なんだがな…。ミツ、気絶は眠りとは言わない気がするんだが?ライア、頑張って敬語を崩せる様にするから待っててくれるか?」
「あら、そうだったの」
[可愛らしい少女の膝枕は良い物だと聞いておりますが]
「そうなんだよ。……その情報を与えた人達に色々聞きたいな?」
[今となっては会えないかと思われますが]
「それならそれで良いんだが…」
まだ微妙に痛む気がする箇所を抑えつつ返答する。
ライアさんは大仰に頷いてくれていた。
これから気が抜けなくなりそうです。
「とりあえずライアの事は終わった事にして。ミツ、お前からは何かあるか?」
[私の方からは昨日行った応急修理によりエネルギーの損失の問題は解決したとの報告を]
「……俺、要るのかな」
[あくまで応急です]
「そうか。現時点でどれくらい動ける?」
[先日行った戦闘行動であれば数分は可能かと]
「その後は?」
[関節部位の部品自壊により稼動不可の予測が立てられます]
「それを避けるには?」
[戦闘行動をしなければもうしばらくは保つでしょう]
「ふむ。しばらくはメイドをしてもらう事になるかな?」
[ご用命としてお受け致します]
「そう、だな。直るまで、俺を手伝え」
[畏まりました]
そう言って綺麗な礼を披露してくれる。
うん、お見事。
この後は俺は自室にこもり読書と言う名の書類解読を行った。
読み始めて暫くするとライアさんがやって来て熊を撫で、ツタベッドに行き眠る。
その次にアリサとアリスがやって来て屋根裏部屋に行った。
しばらくすると降りて来てライアさんを見ながら静かに話していた。
ミツは姉妹が入って来た所で一緒にやって来てライアさんにタオルケットを掛けていた。
何処から用意したの、それ。
途中姉妹に後ろを向かない様に言われたので素直に書類に集中する。
読める様になった部分には平仮名で訳された物が浮かびあがっておりこれが言語学のスキルなのだろう。今は単語しか読めないが段々と文章として読める様になっていければと思う。
言語学も結構な速さで経験値が貯まっているのか短時間でレベルが上がる。
これが普通なのかと思う反面難解な文章を読んでいるからだとも思う。
一応図解付きなのだがさすがにこれだけではわからない。
じっくり読むとしよう。
≪言語学のスキルレベルが上がりました≫
どのくらい経っただろうか。
言語学を見てみればレベルが7程まで上がっており専門用語以外は大分読める様になって来た。
特に鳴りもしない首を捻り身体をほぐし何の気無しに後ろを向いてみる。
そこで固まった。
ツタベッドにライアさんが寝ているのは良い。
しかしベッドのサイズが少し大きくなり三人仲良く寝ているのはどういった事だろうか。
そもそも姉妹に関しては寝れるのかが疑問である。
そして装備も大分外しておりパジャマに近い物を着て寝ている。
扉が開く音に目を向ければ追加のタオルケットを手に持ったミツの姿。
三人を確認し、俺を見る。そこで数秒逡巡。
その後無言で三人にタオルケットを掛けて出て行かれた。
[タテヤ様はこう言うのがお好みなのですね]
と言い残されて。
勿論急いでミツに言い訳をしに行った事は言うまでも無いだろう。
色々目線が厳しかったがどうにか言いくるめる。
その後は部屋に戻る訳にも行かないので応接間で読む事に。
ミツが入れてくれたお茶は美味かった。
久々にゆっくりしている気がする。
うん、平和だな。
とりあえずお茶のお代わりを頼むとしよう。
今日は読書だ!
あ、冒険……。
まあ、良いか。
ゆっくり行こう。
とりあえずチャットはヨミにフォローを入れておこう。
一体どうなったのやら。
11日目は喋って走って蹴って話して読んだ一日だった。
話しました(念話
作者はどうにも微妙に捻くれた事をしたいようです。
器、小っさ!




