53 倒し方と出陣と両手盾
と言う事で一日空けてのPvPな訳ですが。
集っている集団を見て思った事。
前衛、多くね?
前衛後衛が8対2ぐらいの割合の集団を見つつ首を傾げているとライアンとガノンの声。
「ああ、対策をして来たみたいだね!ごめん!」
「うん、そうだね、ごめんねタテヤ君」
「なんで俺は二人に謝られてるんだろう?」
「いやあ二人で倒してた時にタテヤ相手にどうすれば良いかを聞かれてつい、ね?」
「遠距離よりは近接の方がまだ目があると言ってしまって……」
「結果が全員前衛に近いこの集団か。魔法職まで前に来てるし」
「うん、今日はスリリングになると思うよ」
「まあ、タテヤ君ならどうにかなると思うけどね」
「なんだろう、誰一人として1対多数に疑問を持ってくれない」
「今更だしね!」
「ああ、そう言えばそうだったね」
「うん、二人も大概な強さだと思うけど俺がどう思われてるかが少しわかった」
「ごめん!」
「すまない」
「ま、サクッとやって来るか」
「終わる頃には新居も出来てると思うからゆっくりで良いよ?」
「一応手持ちの分を全額入れておいた。面白い事になりそうだったしね」
「……もしかして魔改造の件も二人が?」
「そこは皆からやっちゃえ!で可決されたよ?」
「だから凄い事になるんじゃないかな」
「……うわぁ、軽く言ったのに予想以上の大ごとになってる」
「ヨミちゃんも張り切ってたからね」
「いやあ、良い物が見れたよ」
「こっちが恥ずかしいな」
「ま、僕達以外に負けない様にお願いね!」
「次に挑む時までには倒せるようにしたいしね」
「……またあのギリギリの戦いをやれと?」
そう聞くと二人はにっこりと笑った。
あ、これは鍛えておかないと斬られますね。
そんな凄みがある。
ギルドメンバーはいつもの面々に加えカスミの横にもう一人赤毛の女性。
新入りさんらしい。見ていると手を振られたので会釈で返す。
女性陣はもう相手の人数に対し特に驚いていないらしい。
麻痺してますね。
そしてヨミの周囲が色々カオスに。
リーンさん、ライアさんが両横に立ちライアさんの隣にミツさんが座ったままの背負子。
皆見てる。めっちゃ見てる。すまんなヨミ。
後で素材を奢ってやろう。
「おお、凄い見た目だなヨミさんや」
「後で説明してもらうわよ?」
「まあ後でな。家の件、聞いたが張り切ったらしいな」
「今更撤回されても困るわよ?もう着工してるらしいし」
「それはしないんだが魔改造に許可出したらしいな?」
「予想外にお金集まっちゃってねー」
「お幾らぐらい?」
「アンタがウチに入れてくれた分とゲンコツさんの所に卸した分の8割ぐらい?」
「え?」
「それと私達も手持ちの分結構入れたから7桁は確実ね」
「何故にそげな事になってはりますん?」
「『まともなお願いが来たわよ!』って説明したら、ね?」
「えー……」
「まあ金額は聞かない方が良いわよ?」
「そうしとく……」
「ああ、それと今日の相手は私達のファンじゃ無いから」
「ん?じゃあ一体なんなんだ?」
「何と言うか、『魔王討伐隊』って感じ?」
「んんん?」
「掲示板でアンタの事が魔王って言われてる事は知ってるわよね?」
「あー……、え、真面目な攻略対象になってるのか?」
「倒した奴が勇者になるらしいわよ?」
「安直ですね」
「騒げれば何でも良いのよ」
「まあな。あ、そうだちょっとライアさんに装備の事で用事あるんよ」
「そう言えば装備ボロボロね。わかったわ」
「ちょっと新装備も欲しくてな」
「盾?」
「盾」
「酷い事になりそうね」
「ま、試してみたらわかると思う」
そう言ってライアさんの所に行きトレントの原木を出して手盾二つ、小盾二つ、大盾一つ、そして新装備を作ってもらう。
出来た物を見てヨミが口を引きつらせ、リーンさんが興味深そうに見て、ミツさんは首を傾げ、ライアさんはにこにこしている。
さて、やりますか。
それを見ていた相手集団がざわつきだす。
「おい、なんだあのサイズ」「あれはまさか……」「知っているのか!?」「両手盾、だな。さすがにあのサイズは珍しいと思うが」「そもそも扱えるのか?」「あんな職業あったっけ?」「確か一応攻撃力0で取得出来るらしいな」「らしい?」「キャラ作成時に色々調べた連中が居てな」「それにしても0ってマジかよどうやって攻撃すんの?」「カウンターかスキルで盾変化のカウンターぐらいだった気が」「でも近接と刀でトドメ刺されてるのも居たが」「一昨日の奴は蹴られて無かったか?」「サッカーしてたよな」「まごう事なきサッカーだったな」「ああ、魔王の嫁想いは凄いと思ったわ」「ああ、でも緑髪の少女と黒髪欠損メイドさんも美しい……」「ああ、良いよな」「ま、とりあえずガンバルゾー」「オー」「テンション低いな……」「まあさすがにね?参加三回目だし?」「おお、お前もか」「いやー、今日は多分あの盾だよなー」「だよなー」「まあ多少は強くなってるだろうし俺達も頑張るぞー」「うーい」「うぇーい」「……お前ら、なんで心折れてないの?」「「「さあ?」」」
メンタル強い人達が混じってますね。
なんで参加してるのやら。
そうこうしているとヨミの声。
「今日の戦闘も条件どっちか全滅だから頑張って戦わないと悲惨な事になるわよ!」
『ええっ!?』
「それと下手に勝ったらライアンとガノンが全滅させに行くから!」
『えー!?』
「ま、頑張りなさい。タテヤ?負けたら怒るわよ?」
「アッハイ」
「はい、それじゃ始めるわよ!」
≪PvPを申し込まれています。承認しますか?YES/NO≫
YESを選択。
≪魔王討伐隊VSプレイヤータテヤの対戦となります≫
≪人数は534対1となります≫
始まるカウントダウン。
人数を見て一昨日よりかは早く済みそうだと考えてしまった自分が居ます。
いかんな慢心をしているぞ?
気を引き締めて掛かりましょう。
さて、今日はどうしようか?
まあ新装備を使えばわかるだろう。
そう、新装備。あれですよ、あれあれ。
今俺は顔がにやけている事だろう。
だが向こうからは見えていない。
今の装備はバーテンダー服と籠手、背中に大盾を背負い腰に刀を差している。
首飾りと脚甲も着けてこれからやる事に対する準備はバッチリ。
そして目の前には縦250センチ、横300センチ程の木壁に見える物体を両手で持っている。
それはこんな物である。
トレントの両手盾 品質C レア度2
トレントの原木から作られた両手盾
大きく重く盾として扱われる事は殆ど無く
殆どは台車を付けて移動壁として扱われる
防御+40
作っちゃいました。
さて、蹴散らすとしましょう。
そしてカウントダウンが終わりヨミの声。
「いざ尋常に… はじめっ!」
俺がした事は?
四倍返しを発動しそのまま両手盾を持ち上げて前進する事だった。
除雪車と言えば良いだろうか。
攻撃が当たる、跳ね返る。
と言う事で盾にぶち当たった人を前方に弾き飛ばしまた轢くと言う所業をしている。
それにしても前が見えないのは辛いな。相手が何処に居るかわからん。
それに避けられると横から色々飛んで来る。
ダメージは無いのだが服がアアアア!
チクショウ許さんぞ!
でも結構吹き飛んだから許す。
全滅させるまで終わらないんですけどね。
とある前衛の男A
「ああ、やっぱりその使い方になるよな……」
一回目は単純にヨミさん達に声を掛けてみたかった。
二回目は物量でなら勝てると思った。
そこで負けた時点で女性陣に声を掛ける事は諦めたが勝ちたいと思うようになった。
そうして情報を集めたのだがどうにも断片的だった。
攻撃が通らない。でも紙装甲。
何がなんだかわからなかったが攻撃力がスキルによる物だとわかり多少は安堵する。
ただその状態でもこっちに勝てるらしいのだこの少年は。
今日こそは勝ってやる!と意気込んでやって来たが今目の前に見えている物のせいでこれから起こる事がわかっててどうしようも無いね!
俺は轢かれるが後は、頼んだぜ……。
ぎゃああああああああ!
なんと言うか除雪もとい除人をしていると下側からゴリゴリ聞こえてきたので引っ掛かっている者をたまに盾を持ち上げて後ろに流すと言う事を繰り返す。
見れば皆全速で逃げているが何、追いつけるだろう。
逃がさんよ?
もう少ししたらいつも通りに切り替えよう。
脚甲と首飾りに頼ってばかりだからな、輪も着けるか。
弱体化されても倒せるようになっておかないと先生に勝てない筈。
生徒は大変です。
とある前衛の男B
「なんだあれは……移動城壁か?」
魔王を倒すと聞いてやって来た。
そうして待っていると緑髪の美少女とメイドを担いだ野郎がやって来た。
この時点で殺意が湧いた。
そうしているとあの戦闘狂二人と親しげに話し出して目を剥いた。
まさかあれが魔王?マジかよ。
しかも目の前に立ったと思ったら壁で見えやしねえ。
何をするのやらと思っていたら開幕壁が迫って来やがった。
おいおい、こっちの人数に対して突っ込んで来るだけか?
そう思っていると突っ込んだ所の連中が吹き飛ばされた。
どうやら噂に聞いたカウンターらしいがどうやって発動した?
まあ今は考える前に動かないと轢かれる。
しかしそれにしてもコイツ、はや、あっ……
ぎゃあああああああああ!
よーし、そろそろ良いだろう。
半分は轢けた気がする。
ただ両手盾のまともな運用方法じゃねえな、コレ。
そもそも人が持てるサイズなのか?今更ですけどね。
さて、両手盾はしまうとしよう。
結構ボロになってしまったバーテンダー服を布の服に切り替える。
左前腕に小盾を着け手盾を持ち腹の前に置く。
右手に手盾を持ち振りかぶれるように構える。
輪はまだ人数が多いので無しで。
職務投棄は常時発動させておこう。
さて、気楽に行こうか。
早く新居も見たいしな!
とある前衛の男C
「さて、何処までやれるか……」
『魔王』と呼ばれている少年。
それが誕生した理由は女性を守る為に戦ったかららしい。
ただやった事があまりに酷かったらしく魔王と名が付いたそうだ。
普通はもっと別の名前が付きそうだが。
それを聞いて興味が湧き色々と調べる。
面白い。
そしてどうやら話にあった火力に優れた状態になったようだ。
さて、何処まで強いのか。
周りが様子見をしている内に挑んでみるとしよう。
でも、まあ、あの笑みは見ていると不安になるのは仕方無いだろうと思う。
成る程。あれが由来か。
装備を切り替えてから最初の戦闘だったのだが相手が妙に上手かった。
短剣装備の身軽な男でその速さでかなり当てられた。
その他にも目潰し狙いから始まり多種多様な嫌な事をして来た。
強いと感じると共に笑みを覚える。
すると相手も少し笑ったので通じたのだろう。
ああ、面白い。
しかし火力の上がった拳を叩きつけるとさすがに沈んだ。
うむ、強い人だった。
機会があれば今度は職務投棄無しの修練の輪装備で挑んでみたいと思う。
倒した所でそう言えば援護射撃が無かったなと思い見回すとまた範囲ギリギリまで逃げている人達が見えた。
またか。
逃げる人達を追い掛けてHPを飛ばして行く。
途中魔法使いっぽい女の人を殴り飛ばしたのだが「ありがとうございます!」と言って飛んで行った。なんだったんだろうか。
そして固まって動いていたグループがありそこは連携を取ってこちらに攻撃をしてきていた。その連携によりこちらもダメージを貰ったがどうにかステータスで押し切った。
最後の一人を空に打ち上げて一息。
≪魔王討伐隊が全滅しました。条件を満たした為プレイヤータテヤの勝利となります≫
そうしてヨミの声。
「戦闘終了!第一次魔王討伐遠征は失敗!良いわね!」
『ハイ!』
え、次回、あるの?
皆のアイドル(笑顔




