48 お話と昔話とお話
修練の輪の方は後で実際に試してみるとして今はバル王のフォローをしなければならないと思う。何しろ何も見えない状態で揺らされた上に大ジャンプによる浮遊感を食らい更に着地した後に突然の衝撃と共に気を失ったらしいのだ。
これは普通に担いで走った方が良かったのではなかっただろうか?
そんな事を思いつつも焚き火に寄って行く。
なんだかんだと自分もずぶ濡れであり服が微妙に張り付いて鬱陶しい。
乾かそうと近付いて行くとルーネ先生とケティーさんから声を掛けられる。
「お帰りタテヤ君!しかしまた凄い人と一緒に飛んで来たね!」
「今朝出て行ったばかりなのに帰ってくるなんて、それにまさかあのお方は……」
「既にルーネ先生がそれとなく言ってる通りにバル王様です」
「まさか話してたらいきなり落ちてくるなんて思わなかったよ!」
「……アタシはここに居ても大丈夫なのかい?」
「多分大丈夫かなと」
それに対して笑顔で返す先生。
「そこは断言してあげようよタテヤ君!」
「先生の添えた一文のせいでこうなったんですが」
「えっ!?」
「えー……」
不思議そうな顔をされました。
「一体手紙には何が書かれていたんだい?」
「俺の頼みを聞かなかったら怒るかも知れないと言う脅しの文章が入ってました」
「それは、また、国が滅びるねえ……」
「あ、やっぱりその発想になりますか」
「ちょっと怒るだけだよ!?」
「先生のちょっとは人の災害だと思うんです」
「聖女様、こればかりは信じにくい事もあります」
「そんなー!」
困った顔で叫ぶ先生。
見た目普通なのになんでこうも信じられないんでしょうか。
龍だからですね。
一通りコントをかました上で師匠とバル王様の会話に混ざる。
「師匠、先生の一文を守る為にバル王様をお連れしました」
それに考え込んだ後返す師匠。
「どちらかと言えば撃ち込まれたと言うのが正しいかの?」
「ですよね」
二人でため息を吐いているとバル王からの提案。
「タテヤよ、ワシの事はバルガロフと呼ぶ事を頼みたい」
「え」
「ふむ、そうじゃの。この場ではバルガロフでええじゃろ」
「良いんですか?師匠」
「少なくとも兄のワシとルーネ師匠が居るからの、王の権威なんぞ役に立たんわ」
「あまりそう言わんでくれ兄様よ」
「何、たまには立場を忘れる事も良いじゃろうて」
「えっと、自分はここに居ても良いんでしょうか」
それについてはバルガロフからの返し。
「まずはルーネ殿に頼みを受けた事を伝えるのが危急の事だったのでな、具体的に何を送るかや何処に送るかを決めておかねばなるまいて」
「あ、忘れてました」
その言葉に肩をがっくりと落とすバルガロフ。
「……ダン兄よ、この者は肝が太いのか忘れっぽいだけなのか、どちらだ?」
「ワシにもわからん。して弟子よ、何を頼んだんじゃ?」
「まずは朝に狩りに出かけた後遺跡を見つけまして」
驚愕するバルガロフ。
「なんと、遺跡?もしや古代遺跡か?」
「多分、ですが。その中で自動人形を見つけたので修理に必要な物を頼みました」
「なんと。現存していたと言うのか……?」
「バル、こやつは重大さがわかっておらんまま頼んだようじゃの」
「何か不味かったんでしょうか?」
それに呆れたように聞いてくる師匠。
「古代文明の話は知っておるか?」
「いえ、知りません」
「そうか。では話してやろう」
「お願いします」
そこから聞いた話はこんな物だった。
昔々の大昔。今では神話時代と呼ばれるその昔。
ルーネ先生の友人さんが生きていた頃の事。
先生から聞いた話によると魔法文明と機械文明が調和していた世界であり見事なモノであったと言う。ただしそれも魔族と一部の悪意ある人間達によってバランスが崩れたらしく世界全体が大混乱に陥ったそうな。
そこで先生とその友人達が立ち上がり戦いを挑み勝利したらしい。
その過程で魔族が滅び人も一部余波を受けたが生き残った。
機械文明の方が滅びた理由は不明だが魔族達との戦いに勝利した後に先生の友人さんが何かを思ったのか先生を強制的に眠らせて起きた時には全てが終わっていたそうだ。
その間約数千年。眠らせた友人さんが凄いと思いました。
そこまでの話を聞いて最初の言葉を思い出す。
「つまりそこで滅んだ機械文明が今さっき言われた古代文明だと?」
「そうなるかの。ルーネ師匠に見せてみれば何かわかるやも知れん」
「後で見せる事にします」
「そうせい。さて、バルよ。これを聞いた上でお主はどうする?」
「ダン兄様よ、下手に手出しをしてルーネ殿に喧嘩を売れと?」
「わかっているなら弟子の頼みを聞いてやってくれ」
「既に承知しておる。タテヤよ、送り場所はどうすれば良い?」
「自分のギルドかもしくはローディスさん宛に送っておいてもらえれば回収しますよ」
「戻った時にはそう手配しよう」
「お願いします」
そこまでのやり取りを見て改めて呆れた目でこちらを見る師匠。
なんで呆れられているんでしょうか。
「しかしまあ、あれじゃの。お主は一体何をどうすればそこまでおかしい代物を何も知らないまま見つけてこれるんじゃ?」
「今日のはライアさんに案内された後に修理を頼まれまして」
「随分と信頼されているようじゃの」
「自分でもさっきの話を聞いて多少怖気ついています」
「矛盾した性格をしておるのう」
「自覚はあります」
「大事に保てよ」
「はあ」
また不思議な事を言われた気がする。
このままで良いのならこれで行けば良いのだろう。
しかしあれだな。
イベント、起き過ぎじゃない?
唐突に逃げ出したくなって来ました。
でも見せないと行けませんよね。
ルーネ先生の所に行く。
「先生。すみません、見せたい物があるのですが」
「聞こえてたよ。でもその前に許可は取ったの?」
「へ?許可、ですか」
「ライアちゃん」
「あ」
「やっぱり忘れてた。ライアちゃんはどう思う?」
ライアさんを見ると首を横に振られた。
どうやら見せちゃダメらしい。
「どうやらダメらしいですね、すみませんでしたライアさん」
「ほらね?」
「それにしてもなんでダメなんでしょうね」
「女の子に深く聞くと怒られるわよ?」
「……まだ死にたくは無いので静かにして置きます」
「そうしておきなさい」
何処か遠い目で微笑む先生。
何かあったんだろうか。
聞かない方が良さそうだ。
「しかし朝にここを出て帰って来る事になるとは思っても居ませんでしたよ」
「手紙が効き過ぎちゃったみたいね」
「王の威厳を一切感じられなくされたせいで感覚が色々麻痺したんですけど」
「つい書いちゃったの!」
「気に入られてるのは嬉しいんですがもう少し抑えて下さい」
「もっと良い物上げないと大陸向こうが怖いからね、連れて行く時に困るし」
「先生、逃げてもいいですか?」
「冗談冗談!……今はね」
「まあ師匠から鍛える為の装備も貰いましたしそれで修行でもして来ますよ」
「あ、ダンガロフちゃんが修練の輪を出して来たと思ったらタテヤ君に渡したのね?」
「ええ、慢心したら先生が怒るかと思いまして」
「怒らないわよー!まあ、ちょっとは怒るかな?」
「その怒りを避け損ねたら消し飛びそうなので必死なんです」
「それなら仕方無い、のかな?」
「ええ、強くなる為には必要なんです」
「確かにこの辺りのモンスターだと相手にならないかー。もっと強い所に連れて行っても良いんだよ?」
「さすがにまだ遠慮したいです」
「強くなったら連れて行くのは決定!先生が決めました!」
「えっちょっ」
「だから頑張って強くなってね?」
「頑張りますよ」
「よろしい」
ただ一番強いのは師匠達だと思います。
あと未だに『先駆者からの試練』が終わって無いので多分これ最後は師匠に勝てとかそう言う事なんでしょうか。
……大丈夫かね?
とりあえずは再び兎相手にズタボロになる所から再開しよう。
どうにも装備が強過ぎていけない。
装備は布の服とトレントセットにしよう。
しかしそれにしても、だ。
両手盾職とは一体なんだろうね?
まだ使った事無いんですけど。
人数増えると難しいですね。
次は兎とタイマンを張る予定です。




