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47 爆走と射出と修練の輪

遅くなりました。

ライアさんに手伝って貰いつつ右肩から左腰にバル王を背負う。

……なるべく急いで街を出ないと困りそう。


「そう言えば箱に詰めるとかは無かったんですかね?」


部屋から出る時に扉に閊えないように角度を調整しつつ思った事を聞いてみる。

対して返答は。


「忘れてたわね」

「えっ」

『なんじゃと!?』

「まあ一応箱詰めにして保管庫備え付けのエレベーターで下に送るって手もあったんだけどね。それだと下で受け取る時に目立っちゃうでしょ?だったら担いでもらって屋根の上でも走ってもらおうかなと思ってたのよ」

「えーっと、自分が背負う意味は?」

「王がお忍びで行く事に対する配慮と私が行けない事に対する当て付けね」

「……屋根の上を走るとなると大分揺れるのですが」

「遠慮なく全力を出してくれて構わないわ。重要物資を運ぶって事にしておいてね。一応私からの個人依頼の手紙も渡しておくから困ったらそれを見せて頂戴」

「わかりました。ライアさんはどうしましょうか?」


聞くとライアさんは両手をこちらに掲げていた。

一体何をすれば良いのでしょうか。

悩んでいるとローディスさんが正解を言ってくれる。


「お姫様抱っこ、ね」

「へ?」

「そうでしょ?ドライアドさん」


それに対してコクコク頷きながらびしっとグッドサインを出すライアさん。

あ、なるほど。


「移動方法が背負っても良いのなら森の中も走って良さそうですね」

「それならどれくらい短縮になるのかしら?」

「5分になります」

「……それはまた、強烈ね」

「バル王が耐えて下さると良いのですが」

「それなら大丈夫だとは思うわよ?そうよね、バル?」

『……なるべく揺れないように頼む』

「善処しますよ」


会話をしつつ手紙を書き上げてこちらに渡してくれるローディスさん。


「じゃ、そこの窓からお願いね」

「はい。ライアさんは屋根に上ってからでお願いします」


頷いてもらえた。


「それじゃ、二人とケティーによろしくね」

「はい。では」


こうして自分は街の屋根上を走る事になった。

見た目が少女を抱えた上でツタの塊を背負っていると言う物ではあるが。



そして数十秒後。


「うはははははは!超怖いー!」


そう叫びつつ俺は街の屋根上を爆走していた。

一度躓けばライアさんを空中に放り出して背中のバル王も吹き飛ぶだろう速度。

屋根の高さは一定ではなく屋根の素材も踏む場所を間違えれば貫通する為になるべく気を付けて走っているのだが抱えたライアさんで足元が見えない為危なっかしい事この上ない。

それに加えて現在の俊敏値は420+600に全速回避を発動した上で首飾りで2438になっている。これを扱いきれるかと言われればそんな事は無く森の中ではライアさんに木を退けてもらっていたからこそのあの速度だったのだと実感する。

一応その状態でもライアさんが指す方向に飛んだり跳ねたりしつつ北の城壁を目指す。

途中で見られたのか「誘拐だー!」と聞こえた気がしたが顔バレはしていないと信じて全力で駆け抜ける。

そして最後の難関が迫って来た。

街の外れと城壁との間には50メートル程の間がありそれをどうしようかと思いつつ走っているとライアさんが城壁の上を指差す。


「え、まさか飛び越えろと?」


ニコニコ笑顔のまま頷かれた。

あっはい。


「行きますよー!どわああああああ!」


一番端の建物の淵を踏み切って宙へと飛び出す。

あはははははは!


飛び過ぎた!城壁で二段ジャンプするつもりが飛び越えちゃったよ!


「着地どうするか考えてなかったんだけどどうするんだコレ!」


それに対しての答えは落下地点に緑の四角い部分が現れた事とその前方に細長く二本の線が作られて行く事で答えを示される。

とりあえずクッションに着地。

後ろで『がふっ』と声が聞こえたが気にする余裕も無く必死で衝撃を殺して行く。

一安心だと思いライアさんを見るが周りのツタの動きが止まっていない事に疑問を抱く。


「クッションありがとうございますライアさん。そしてそこの2本のツタ縄と目の前の坂の様なものは一体」


目の前にクッションの幅に作られたスロープが作られて行きそれに合わせてクッションが変形すると共にクッション横のツタが引き絞られて行く。

これはまさかあれですか?

パチンコですか?


ニコニコ笑顔のライアさんが右手を射出方向に振り下ろすと同時に俺は森の上空に撃ち出されていた。


「嘘でしょおおおおお!?」


確かにこれは走るよりも早く着くだろう。

ただその代償に俺は射出時の衝撃で意識を手放した。


お茶目で済むのかな、これ。



目を覚ますと空とライアさんの顔。

頭の後ろにはまた不思議な感触。膝枕ですか。

そしてペコペコ謝られたのだが今度は頭の振りが速くそれを防ぎ損ねて再びの気絶。

新しいパターンですね。


再び目を覚まして今度は防いで起き上がる。

周りを見ると焚き火の傍で火に当たっているバル王。

ルーネさんとケティーさんは談笑中。

ケティーさんは時折バル王の方を向いては反応に困った様な顔をしている。

服が濡れていると言う事はどうやら湖面に着弾したらしい。

ライアさんは大丈夫だったのだろうか。

考えていると師匠の声。

首を傾げつつこちらに近付いて来る。


「起きたか。しかしいきなり落ちてくるとは何があった?」

「街を出た辺りでライアさんに打ち上げられまして」


それを聞いて更に眉をひそめる師匠。


「詳しく話せ。バルは何も知らないまま色々な事に巻き込まれたらしく憔悴しておる」

「あー……。えっと、ローディスさんから頼まれた事から話します」

「それはバルから聞いた。ここに来るまでに何があった?」

「街の屋根上を爆走した上で大ジャンプをして城壁を飛び越えたら降りた先に射出台が備え付けられていてそれにより空を飛んで来ました」


それを聞いて天を仰ぐ師匠。


「……なんとも、まあおかしな事になっておるのう」

「自分もライアさんがあんな事を仕掛けるとは思っていませんでした」

「経緯はわかった。お主はこの後急ぎの用事はあるか?」

「いえ、ありませんが。どうしたんです?」

「ああ、渡したい物があってな」

「渡したい物?」

「ああ、お主なら耐えられると思ってな」

「はあ」


そう言って渡された物は手首の太さの部分に着けられる丸い輪。

取り外しは容易そうだがその能力が問題だった。


修練の輪 品質?? レア度??

装備者に辛苦を与える輪

装備者のステータスを1/10にする

HP自動回復【微/瀕死時特大】自己修復【中】

加護効果適用不可


「おお、おおおおお!師匠!これは!」

「ワシとしてもお主が慢心する姿を見たくは無いのでな」

「しかしどうしてこんな装備を手に入れたんです?」

「昔修行の為に貰ったものでな、今度はお主の番じゃろう」

「これで俺も弱くなれるんですね!ありがとうございます!」


それを聞いて訝しげな顔になる師匠。


「言い切るとはそこまで悩んでおったのか?」

「自分は突然莫大な力を手に入れた小心者ですからこうもなりますよ」

「ワシとしても予想外だったのでな。どうだ、使えるか?」

「これで修行も出来そうです。しばらくはズタボロになるかと思いますが」

「普通は弱くなる事を嫌うモノじゃがの」

「自分が変だと言う事はわかっているつもりです」


そう言うと安心したように表情を和らげる師匠。


「まあ、だからこそ、なのかも知れんな」

「はあ」


今日はよくこの言葉を聞かされている気がする。

さて、この後はバル王達と話すのかな?



九日目の昼はこうして過ぎて行く。

俺の心に打ち出されたトラウマを植えつけて。

打ち出されました。

それと主人公が弱くなりました。

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