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45 ギルド長とお爺さんと手紙

二階、三階と階段を上るにつれ喧騒は遠ざかって行き三階の奥に辿り着いた時にはライアさんと自分が立てる足音くらいしかしなくなっていた。

片面開きの重厚そうな扉の前に立つ。ゴンゴンと強めのノックを二回。

中から老人の声で「開いていますよ」と返されたので扉を開ける。


部屋の中は手前にテーブルがありそれを挟むように四方にソファーが置いてある。左右の壁には本棚が固定されており大量の紙束や本が詰め込まれている。奥にはギルド長が仕事をしている大きな机がありその後ろの壁には扉が付いておりもう一室あるようだ。

先にこちらから口を開く。


「受付の方からここに来るようにと言われたのですが」

「おお、そこに座ってくれるかい?」


促されたので刀を外しソファーに立て掛け左隣にライアさんを置きつつソファーに座る。

ギルド長も机から立ち上がりこちらの前に座る。

結構な年齢のおばあちゃんだがしゃっきりと背筋は伸び利発そうな雰囲気。


「なんでもダンガロフとルーネさんとケティーの手紙を持って来たんだってね」

「こちらがそれになります」


二通の手紙を渡す。

ギルド長はそれを大切そうに受け取って開封して読んで行く。

数分間「これは……なんとまあ」と師匠達の手紙を読んで関心した風に見られたり「おやおや、ケティーったら、本当の事だったんだね」とライアさんを見たりしつつ楽しそうに読まれていた。

読み終わった後。


「少し時間をいただける?」

「あ、はい、大丈夫ですが」

「ありがと、それじゃちょっと待っててね」


そう言うと奥の部屋に扉を開けて入って行く。

数分後その扉が開いた時には横に一人のお爺さん。

なんとなく見た目には筋肉を絞った師匠の様な印象とこちらを見る目線から威厳を感じ思わず床に膝を付きこの数日で3度目になる片膝拝謁姿勢を取ろうとしてしまう。

その人は左手をこちらに見せつつ声を出す。


「よい、楽にせよ」

「はっ」

「ふむ、坊やはこの方が誰かわかるのかい?」


聞かれたので正直に返す。


「いえ、師匠に雰囲気が似ていましたので、思わずと言った所です」


その言葉に笑みを深くするギルド長。


「ほらね、やっぱり似てるって言ったじゃない?」

「本当に弟子、なのか?」

「口約束でも良いのであれば弟子を名乗らせて頂いています」

「それとルーネ聖女の生徒だとも聞いたが?」

「生徒は自分がルーネ先生の呼び方に困って提案しました」

「なんと」

「あらまあ」


その言葉に目を丸くするギルド長とお爺さん。

何か不味かったかな?


「それじゃ、とりあえず座りましょう。お弟子さんも元の所へ」

「はい」

「ワシも座るぞ」


そう言って上座に座るお爺さん。

ギルド長がそこに座らないのは何故かと思ったが文句が出る様な感じでは無い。

なんだろう、ギルド長の更に上の人?お偉いさんかな?

そう考えて居るとギルド長からの質問タイムになった。


「ここに書かれているタテヤ、は貴方で良いのかしら?」

「何が書かれていたかは知りませんが俺の名前はタテヤと言います」

「そこのお嬢さんはドライアドで良いのかしら?」

「はい、ドライアドのライアさんです。お願いをして一緒に歩いています」

「お願い?」

「一緒に散歩をしないかとお願いしまして森から連れ出させて貰っています」


その言葉に驚いた後微笑むギルド長。


「ふふっ、やっぱり不思議な子なのね」

「そうなんですかね?」

「ええ、とっても不思議よ?ああそうだ、王宛の手紙を貴方に渡したってダンガロフからは書いてあったんだけど渡してもらえるかしら?」

「ちゃんと届けてもらえますか?」

「安心しなさい、ちゃんと届くから」

「それなら、お願いします」


そう言ってギルド長に師匠からの手紙を渡す。

それを丁寧に受け取ったギルド長は上座に座っていたお爺さんに向き直り。


「王よ、どうぞお受け取り下さい」


と言って差し出した。

受け取るお爺さん。


あ、その方王様だったんですね。



……。

…………。


え?



驚いて目を見開いた俺をああやっぱりかと言う目で見るギルド長とバツが悪そうな顔をしている王様。

また説明も無しにどえらい人の前に座ってましたよ!


「え、あの、え?」

「ほら、やっぱりびっくりしてるじゃないの」

「むう、すまないな。迂闊に自己紹介をする訳にもいかなかったのでな」

「は、はぁ……?」


そこに更に叩き込んでくるギルド長。


「そう言えば自己紹介もしてなかったわね。私はラルタ街冒険者ギルドのマスターをしているロッケンマイン・ローディス。そこのお爺ちゃんはこの国の王様でバル・ガロフィルト・ハイマン。バルガロフと周囲には呼ばれているわ」


わあい、本物でした。

ん、ガロフ?


「あの、もしかしてバル王はまさか」

「ああ、ワシはダンの弟だ」

「お、おお、え、えーっと、俺、どうすれば」

「出来ればダンと同じ様に話して欲しい」


真面目な顔で言われる。

頑張ります。


「えっと、バル王様が直接来るなんて何が書いてあったんですか?」

「ワシはローディからあの二人の弟子が来たから直ぐに来いとしか言われておらん」

「え、本当に何が書いてあったんですかギルド長」


そう聞くとローディスさんは一通目を取り出し直して内容を纏めて聞かせてくれる。


「大体はタテヤ君の事でダンからは弟子にした事、色々と考え方が面白い奴な事、後は手助けしてやって欲しいって頼みね。ルーネさんは生徒にした事、色々と不思議な考え方な子な事、後は手助けして欲しいって内容ね」

「ほぼ同じなんですね。さすが師匠達」

「普通は大騒ぎになるような事を書かれてるのに平然とするわね?」

「どこら辺がですかね」

「二大英雄から援助を頼まれているのよ、普通なら国を挙げての援助になるわ」

「わぁ、師匠達って本当に凄かったんですね」


話には聞いてたけど師匠達凄いな!


「『後そこに居るだろう弟子は権力に関心が無いらしい、フォローを頼む』って書いてあったけど本当に興味が無いのね……。俗な事を言ったら国が傾く物を要求されても断れないのよ?」


師匠達は一体何をやったんでしょう?


「貰い物の力ですからね、そこまで気が大きくはなれません」

「だそうですよ、バル王」


バル王は俺を眺めつつ渡された手紙を見て、「まずはこれを読ませてもらう、判断はそれからだ」と言い手紙を取り出し読み出した。

静かに読む事数分。途中目を見開き驚愕していたのが気になる。

しばし目を閉じた後考えが纏まったのかこちらに向き直る。

王のオーラが全開です。

ライアさんが居なかったら逃げ出していたかも知れません。

そしてバル王が口を開き問われる事になった。


「タテヤよ、お主が望む物はなんだ?」


最初からいきなり思いつける様な物じゃない質問が来たんですけど。

正直に答えておこう。


「えーっと……。今は特に無いです」

「なっ!?本当に何も無いのか!?」


異様に焦るバル王。


「あの、一体手紙には何が」

「ルーネ聖女からの一文に『タテヤ君のお願い聞いてくれないと怒っちゃうかも知れないわね~』と書いてあったのだ!頼む!国を助けると思って何でも良いから頼む!」

「ご、ごめんなさい。色々ごめんなさい」


なんて一文添えてくれてるんですか先生ィィィィィイ!

えーっと、どうしよう、何を頼もう。


「えー……っと、あ、そうだ」

「思い付いたのか!」

「あ、はい、一応ですが」

「何でも言ってくれ!」


必死なバル王。

ごめんなさい、ホントあんな感じの先生でごめんなさい。

こんな爆弾仕込まれてるとか思わないって!


「あの、自動人形を今朝拾いまして。修理してみたいのですが文献とかありませんかね?」

「自動人形に関する文献?それぐらいなら王都の大図書館にはあると思うが」

「遺跡で見つけた後横のライアさんに修理を頼まれまして」

「なんと、遺跡、か……」

「情報は多く欲しい物で。お願いしても良いですか?」

「ああ、助かる。あのお方が怒れば本当にシャレにならないからな」

「先生……」


俺の呟きに苦笑するバル王。


「だが救われたのもまた事実でな。しかし今まではこう言われた事は無かったのだが」

「バル、タテヤ君はとても気に入られてるみたいよ?」

「そのようだ。それにダンも色々楽しそうに書いていた」

「ダン君が?へー、珍しい」

「あの兄が手紙ですらあれだけ推す者は中々珍しい」

「初なんじゃない?」

「そもそも弟子を取った事に驚いたがな」

「やっぱりバルもそう思うわよね、ホント何やったのかしら?」


そう言ってこちらを向くお二人。

正直に邂逅時を思い出す。


「師匠が殴って吹っ飛んだ熊に襲われて倒したら弟子入りになりました」

「なんと、まあ。あり得るのか?」

「何かを見たんじゃない?」

「その後先生に加護と装備を貰った上に緑龍様の加護と翔龍様の装備も貰いまして」

「神話クラスの装備をそんなに簡単に貰われるとこちらも装備で報いる事が出来なくなるのだがな……」

「わあ、本当にタテヤ君って凄いわね。どんな幸運?」

「なんでしょう、干物作りをしてたら先生と仲良くなりました」


その言葉に頭を抱える二人。


「権力者達があれこれ手を使ってでも仲良くして置きたい存在と干物作りで知り合った上仲良くなるとは……」

「それは知ってて仲良くなったのかしら?」

「生徒になってから吹っ飛ばされるまで龍な事自体知りませんでした」

「なんともまあ兄に似ておるな」

「ダン君も確か知らないままだったわね。さすがお弟子さんって所?」

「どうなんでしょうね……」


遠い目になる。

そうしているとバル王からが口を開く。


「タテヤよ」

「なんでしょうか」

「兄とルーネ聖女は今でもあの森に居るのか?」

「居ます」

「ふむ、そうか。それなら頼みがある」

「なんでしょうか」

「ワシを二人の所まで連れて行ってほしい」

「……え?」


師匠の弟さんを連れて行く事になりそうです。

なんだろう、凄い人達にポンポン会い過ぎて感覚が麻痺して来てる気がします。



やっぱり師匠達は凄いね!

弟子は胃が痛いです。

今日は夜に更新出来れば良いなという感じです。

さて、どうなる事やら(何も考えていない

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