41 回収と服と演技と
とりあえず腕を胸の前で組み考えるポーズ。
不安そうにこちらを見つめるライアさん。
まあ、最後に何を言うのかは決まっている。
でも一応確認をしよう。
「見せたかったのはこの方ですか?」
頷かれる。
「見せるためだけに案内をされましたか?」
首を横に振られる。
「俺がどうにかすれば良いのかな?」
頷かれる。
ふむ。
「俺だけだと出来ないから色んな人に手伝ってもらう事になるけど良いかな?」
頷かれる。
「時間はきっとたくさん掛かるよ?」
頷かれる。
「俺で良かったのかな?」
頷かれる。
「よし。それじゃ頑張って直しましょうか」
ニコニコ笑顔になった。
じゃ、色々考えるとしましょう。
とりあえず散らばっていた部品を広間から集める。
これはライアさんが床一面にツタを這わせて集める事で解決した。
あとはオートマータの身体をツタで包んで貰いその中に部品なども入れる。
「これ道具袋に入るのかな?」
入っちゃったよ。
道具袋内の表記には【自動人形:損壊】と書いてある。
オラ自動人形を直せるとかワクワクして来たぞ!
わくわくしつつ遺跡を出る。
すると唐突にドームが崩れ平地になった。
なんじゃこら。
ライアさんも困惑してる。
ならそうなるべくしてなったのだろう。
「それじゃあ街に行きましょう、色々道具も必要になると思いますし」
その言葉に笑みを強くしたライアさんだったが俺はその一言を言ったのを後悔する事となる。
何故かって?
次の瞬間にはテンションの上がったライアさんに高速で走られつつ引っ張られつつブンブン振り回されていたからだ。
意識は何秒残っただろうか。覚えていない。
気付けば街の外でベンチに寝かせられており腰掛けたライアさんに膝枕をされていた。
目を覚ますとまたぺこぺこ謝られそうになったが額が怖かったので手で押さえる。
「どのくらい気絶してましたか?」
親指と人差し指を挟むようにして少しのジェスチャー。
なら大丈夫だろう。
「それじゃ宵闇の森に行きますか」
起き上がる。
あ、そうだ。
「ライアさん、少し寄りたい所があるので行っても良いですか?」
頷いてもらえたので服屋を目指す。
目的は道着と布の服以外の服を買う為だ。
カッコいいのが良いよね!
そうして服を買いホームに辿り着くとロビーに座っているヨミの姿。
「おお、ヨミ、早いな」
「あらタテヤ、こっちに来るなんて随分早い…わ、ね……」
「ん?どうした?」
「何よその服」
「いや、これから商談なのに布の服とか道着とかじゃマズイだろ?」
「それはわかったけどなんでチョイスがバーテンダー?」
「いやあ、動きやすそうで気に入ったのがこれでな」
「まあ確かに似合ってるけど……魔王が給仕って何の冗談?」
「至って真面目に動きやすい服装と落ち着いた感じを目指したんだぞ?」
「それに伊達眼鏡とか何処目指してるのよ一体全体」
「何となく付けようかなって。似合ってないか?それならまた服屋に行くけど」
「似合ってるから困るのよねえ」
「おお、それなら良かった」
「それにしても本当に一瞬誰かわからないわね」
「そうか?」
「じゃあ次に誰か来たらギルド参加希望者って設定で話してみる?」
「表示でバレないか?」
「隠せるわよ?」
「え?」
「まあとりあえずPvP申請するから受け取って」
「おう」
≪PvP申請が来ています。承認しますか?YES/NO≫
YESを選択。
「じゃあ私の表示を見てみて」
「おう。……おお?キャラクターレベルしか見えない」
「設定で表示される情報も選択出来るから結構使えるわよ」
「なるほど」
「それに今はフィールド設定して無いから入れなくて弾かれる事も無いと思うわ」
「じゃあ、やるか」
「ちょっと楽しくなって来たわね」
「ヨミさんも人が悪い」
「何人騙されるのか気になって来ちゃって」
「それならライアさんはヨミ側に座っておいてもらおう」
ライアさんもニコニコ笑顔で意を汲んでくれる。
「そう言えばカツラも貰ったんだけど」
「何色?」
「金」
「よし、着けましょう」
「イエッサー」
「うわ、ホントに金髪眼鏡のバーテンダーになった」
「おお、後でスクショ撮ってくれるか?」
「了解」
そうしていると一人目の犠牲…おっと、被害者がやって来る。
「あれ?ヨミじゃない、相手の人は一体誰なの?」
アリサになりました。
さてどうなるかな?
大根演技だがやらないよりはマシだろうと俺から話を切り出す。
「おや、ヨミさん、そちらの方は?」
ヨミも察したのかサブマスターとしての応対で応じてくれる。
「ええ、こちらはウチのメンバーの一人、アリサです。アリサ、この人はヘイゼルさん。ウチのギルドに入りたいとの事で今面接中」
その言葉に一瞬面食らうも面接中と言う言葉に引っ掛かるアリサ。
「それはわかったけど…どうして名前が見えないのかしら」
それに対しては俺が返す。
「ええ、もし失礼があった場合は即座に切り捨てる事も出来る状態の方が良いと私の方から提案致しまして」
その返事に訝しげにアリサが目を細める。
「ヘイゼル、だっけ?アンタも私達のファンみたいにヨミに斬られに来たの?」
焦るが返す。
「いえいえ、その様な事は御座いません。純粋に強者が集う場所だと聞いて興味を引かれまして」
ちょっと疑いが薄れる。
「へえ、じゃあライアンとガノン狙い?」
「そうですね、あの二人には勝ったのですが今度はどうなる事やら」
それを言うと驚かれた。
「え、勝ったの!?」
「ギリギリの闘いでした」
その言葉を聞いてアリサはヨミに向き直る。
ヨミを見ると俯いて肩を震わせている。
「ヨミ!この人絶対採用しなさいよ!……なんでアンタ笑ってるのよ?」
ヨミが笑ってしまっているのでネタばらしをする事に。
「あーもー、凄いわね、ここまでバレ無いなんて」
「俺も正直予想外だった」
「俺?……え、まさか、タテヤ?」
「せーいかーい。いやー、ここまで決まると面白いわね」
「アドリブでもなんとかなるもんだな」
「え?何その服装と髪色」
「カツラとバーテンダー装備」
「ああ、なるほどね。……魔王が給仕って何の冗談よ」
「やっぱり冗談にしか見えないか。商談に使おうと思ってたんだが」
「商談?ああ、調達の話?蹴っても良いと思うけど」
「繋がりは作っておいて損は無いだろう?」
「それもそうね。まあギルマスに任せるわよ」
「任された」
「それじゃアリサはここを覗ける位置に隠れてもらえる?」
「あんた達まだやるつもり?」
「何人引っ掛かるかで街中を平和に歩ける確率がわかるからな」
「結構死活問題ね。わかったわ、上手くやんなさいよ?」
「まあ、やってみなくちゃ、ね?」
「やってみないとなあ?」
「あんた達、今良い笑顔してるわよ……」
その後はギルメンを騙しまくりました。
楽しみ過ぎて商談の時間ギリギリまで遊んでた事は忘れたい。
短いですが区切る為に。
引っ掛かった
コノハナ カナミ カナ ライアン ガノン
引っ掛からなかった
アリス カスミ
理由はお考え下さい。




