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40 朝食と狩りと遺跡

九日目。


朝です。

昨日は森に来た後泊まったんだったな。

今日はツタベッドの横でライアさんが正座をして待ってくれていました。

挨拶をした後一緒にテントから出る。そこで見た物は。


「なんで先生とアル様はツタに絡まれているんでしょうか」

「ライアちゃんって強いのね!」

「さ、さすがね、ライア。私達でも動けないってどう言う事なのよ?」


ライアさんを見る。首を傾げられた。

深く聞くのは止めておこう。


「ライアさんが止めてくれたので?」


と聞くと頷かれたので頭を下げる。


「お陰で平和な朝になりました……」


この平和をしみじみと噛み締める。

大方懲りずに寝ぼけたフリで色々やろうとしていた先生達を止めてくれたのだろう。

ありがたい事です。


「今日は普通に寝ようと思ったのに!」

「え、ネルって私が入った時普通に寝てなかった?」

「そ、そんな事はないわよ?…な、無いのよ?」

「あれは熟睡だったわね」

「先生……。あ、それと二人とも今日も朝食抜きにしますので」

「ああっ!未遂なのに!」

「なんで私までなのよ少年君!」

「行きましょうライアさん」


「「ちょっと待ちなさいよー!」」


地面に脚が着かない状態でツタにより簀巻きになっている見た目は美人二人を置いて焚き火の傍で調理をしていた師匠とヤクさんと座っているケティーさんの所に行く。


「おはようございます」

「ふむ、今日は何も起こらなかったようじゃの」

「ああ、罰の件は聞こえていたよ。私がやっておく」

「あたしゃ今とんでもないもんを見ちまったねえ……」


驚いた表情をしていた後呆れた顔になるケティーさん。


「あの聖女様と緑龍様に対して朝食抜きを言い放つなんて、ボウヤは一体何者なんだい?」

「龍の威厳を見せられない限りは見た目通りの対応をする変な奴ですよ」

「そう出来る者が今の世には何人居るのやら、ねえ?」

「自分の考え方は少々特殊だと思っています。それに最初の遭遇が干物作りの手伝いでしたから威厳も何も感じる間も無くてですね」

「色々聞かせてもらったよ。まさか聖女様があんなにお茶目な方だとは思わなかったもんさ」

「いやあ、自分は相対して宙を舞わされた後に知らされましたから」

「ダンガロフ様と似ているわねえ」

「なんでしょう、ルーネ先生は人を振り回すのが好きなんでしょうか」

「ふふ、国一つ丸ごと振り回された事もあったからね、諦めなさい」

「えー……」

「それでボウヤは今日はどうするんだい?」

「今日は街の方で冒険者同士で素材調達関連の事を話すそうなので朝食を取ったら手土産代わりに熊を狩って持って行こうかと」

「そんな発想が出るのはやっぱりお弟子さんね」

「師匠と先生達はもっと凄いので今度は何処に放り込まれるのやら気が気で無いです」

「何処に行っても頑張るんだよ、ダメな時は助けを求めなさい」


そう言って頭を撫でてくれるケティーさん。


「そうします」

「ああ、それと渡して置く物があるんだよ」

「なんでしょう?」

「あたしからの街のギルドに対する推薦状を幾つか書いたんだ。役立てておくれ」


手紙を数通預かる。

どれも封蝋がされており表面にケティーさんの名前が書いてある。


「えっ、あの」

「使わないといけない状況になったら使いなさい」

「は、はあ。受け取っておきます」

「ボウヤには必要無いとは思ったけどね、それでも連れて来て貰った事に対する感謝は必要なんだよ」

「そう言う事でしたら。ありがたく頂いておきます」

「うん。そうしなさい」


かかかっと笑うケティーさん。

うーん、お強い。

そこに師匠とヤクさんの声。


「話はそれぐらいにして朝食にするぞ」

「少年、ご婦人、こちらへどうぞ」

「あ、行きます!」

「楽しみだねえ」


「「ごはんがー!」」


叫ぶ二人を放置して朝食が始まる。

今日は良い一日になりますように。

具体的にはトラブルの無い一日になりますように。

心からの願いである。



「あ、そうだヤクさん、ケティーさん聞きたい事があるんですが」


食事中、気付いたとやりたい事の為にスプーンを置いて二人に話しかける。


「聞きたい事とは一体なんだい?」

「おお、どうしたんだい?」

「狩りに行った後街に行くのですがこのままライアさんを連れて行っても良いでしょうか」

「一応理由を聞いておこうか少年」

「自分は道に迷いやすい性格と体質をしているもので、ですね」

「それは大変ね。でもどうして私にも聞くんだい?」

「ケティーさんがここを出る時の道案内をどうしようかと思いまして」


その声に顔を上げる師匠。


「タテヤよ、それについてはワシが同行する事で話を纏めてある」

「師匠が同行するんですか。では?」

「ああ、後はライア殿にお主が頼むだけじゃの」

「ライアさん、しばらく自分と行動してもらっても良いでしょうか」


右手の親指と人差し指で丸マークを作りこちらに向けてくれるライアさん。


「ありがとうございますライアさん。でもケティーさんは良かったので?」

「昨日の内にたくさん話したからね、大丈夫、行って来なさい」


しっかり頷いてくれるケティーさん。

ライアさんに許可は貰ったけどヤクさんにも聞かないと。


「ヤクさんはどう思いますか?」

「ライアには森の調整をやって貰って居たがしばらくなら私とアル様でやってみせよう。気兼ねなく連れて行ってくれて良い」

「結構頻繁に帰って来るかと思いますが」

「その場合は少しライアを借りるよ」

「わかりました。自分から話はこれで終わりです。食べちゃいましょう」

「ケティーさん、急がないと冷めてしまいますぞ?」

「ああ、それはいけないね、食べないと」

「冷めては勿体無い出来だからな、少年」

「ええ、先生方にも食べて欲しかったですね、ヤクさん」


「「そ、そんなに美味しいの!?」」


「君も酷いな?少年」

「ヤクさんも笑いながら言われても説得力がありませんよ?」

「そうだな」

「では、食後には行って来ます」

「良き旅を、龍に愛されし者よ」

「偶然ですけどね。良き風を」


そうして歓談しつつ朝食を取る。

二重音声で叫び声が聞こえていたけど気にしない。

そして朝食を取り終わり出立してから数十分後。



「ライアさん、次はどのポイントでしょうか」


ライアさんを背負い気配消しの能力に頼りつつモンスターの後ろから即死刀で刺し殺すと言うのを繰り返しモンスターを狩っていた。

暗殺業ですかね?

全てはこの刀が高性能なのが悪い。

もっと言えば即死付きなのが悪い。

俺は何処に向かって成長して行くのだろうか。

まあ流されていればわかるだろう。

それにしてもモンスターってナイフ当てない状態だとそのまま道具袋の中に入るんですね。

びっくりです。


≪レベルアップしました≫

≪ボーナスポイントを5点獲得≫

≪スキルポイントを5点獲得≫


「さて、そろそろ街に…。ん、向こうが気になるんですか?」


結構な数の兎と狼、蟻にトレント更に熊を狩ってそろそろ行こうかと思っているとライアさんが背中から降りてこちらの手を握り何処かへ引っ張って行こうとする。

感覚的にはこの辺りは森の奥の辺りなので自分では現在地がさっぱりわからない。

ただまあライアさんが無意味な事をするとは思っていないのでそのまま付いて行こう。


「急がないと行けない、見れない所ですか?」


それには首を横に振られる。ふむ。一体なんだろうか。


十分程歩いただろうか。

唐突に目の前が開けたと思ったら遺跡を見つけた。

ただし見えている部分は少なく高さは数メートル程の平べったいドームが見えており蔓やツタや幾つかの植物が正面のひび割れの下から顔を覗かせている。

遺跡の本体は地下に埋まっているのだろうか?

そう思い一周してみると入り口を隠す為に使われていた石材が崩れたらしくその内部を覗かせていた。


「おお、遺跡だ!でもライアさん、どうしてここに案内を?」


そう言うとこちらの手を引き中に引っ張って行こうとするライアさん。

あ、はい、行きます。


べ、別に怖くなんてないんだからね!


ちょっと怖かったです。

中に入るとまず階段がありそこを降りると円形の空間と奥に何かが座り込んでいた。

ライアさんに連れられその座り込んだ者を見る。


「ライアさん、これが見せたかった物ですか?」


頷かれたので視線を戻し改めて目の前の者を観察をする。


それは女性であった。

それは侍女服を着ていた。

その顔は静かに伏せられ閉じられた目はまるで眠っているかのよう。

しかし人とは違う物がある。


それは失った腹、左肩、右膝から幾本かのケーブルや部品を地に落としていた。

これは何と言うのだったかな?

ああ、あれだ。


自動人形、オートマータ。



それが目の前に物言わず座り込んでいた。


さて、どうしようか?

プレイヤーよりもドンドン増えるNPCに私もびっくりです。

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