36 闘技場とPKと魔王怒りのサッカー
今回色々汚いです。
すいません。
ライアさんの指差す方向に走りながらも考え続ける。
GMコールをするか?
いや、攫っただけだと仮定したら厳重注意か数日ログイン不可だろう。
手を出していた場合には一発BANだろうがあいつ等がPKをしていた場合はそれも無いだろうな。
ロールプレイの一貫として終わるだろう。
それにこんな下種な事を考える連中だ。
まともに相手をしようとすると逃げるだろう。
それではいけない。
こちらの気が治まらない。
魔王呼ばわりされているのなら倒される存在になってやろうじゃないか。
まあ、最悪の場合になるが。
とりあえず直接言ってこず一人で戦う気も無く人質を取るような連中は滅しないとな。
アリサにはコールは待つように伝えよう。
俺の怒りはねちっこいのです。
自分でも引くぐらいに。
そうして走る事約五分、森の端に到着する。
笑顔のまま怒ってくれているライアさんの本気により走る為の最低限の道を最大速度で作ってくれていた為殆ど直線で速度を落とさず走り続けられた。
それと一分毎に先生の血ポーションを渡していたのだが再使用時間毎に飲んでいた。
本当にありがとうございます。
「ライアさん、ここからは俺一人で行きます」
そう言うと首を横に振られる。
握りこぶしを作ってシャドーボクシングをしている様なので来たいらしい。
ううむ。
「では闘技場の外に誰も出さないようにお願いします」
そう提案すると不満そうではあったが頷いてもらえた。
さて、急ごう。
辿り着いた先は魔法的な物と火を燃やされて作られた灯りで照らされた場所。
コロッセウムと言うのだろうか。
闘技場の外ににライアさんを残しそれと同時にあるお願いもしておく。
そして先生ポーションを飲んで回復しておく。
さて、行こう。
闘技場の中に入りすり鉢状の穴の底に立つ。
土が踏み固められて作られ、血と汗と涙と体液と歯と肉が飛ばされまたその上を踏みしだかれ出来た闘いの場所。
本来であればこのような形ではなく純粋に楽しむ為の観戦をしに来ただろう。
悲しいなあ。ああ、悲しい。
そして俺の目線の先には後ろ手に縄をされているヨミの姿と十数人の男達。
すまなそうにしているヨミの顔と一番前に立っている男が声を出す。
「タテヤ、ごめん……」
「あっははは!本当に女を守る為に盾野郎が来たよ!」
「御託は良い、さっさと用を言え」
「あ?お前この状況で何言ってんの?楽しもうぜぇ?」
そう言ってヨミを抱き寄せる男。
あ、何かが一気に冷めた。
マズイですよこれは。
でも先にヨミを逃がそう。
「ヨミ」
「何?」
PvP申請を送る。
ヨミは一瞬ハッとするが首を振る。
ダメか。
じゃあ仕方無い。
「俺は何をされれば良いんだ?」
「そうだなあ、そっちからは手出し無効、あの攻撃スキルも使うなで俺達に倒されろ、だ」
「わかった、飲もう」
「ちょっとタテヤ!」
「だがその前に」
「ああ?」
「ヨミは送り返す」
「は?何言って」
「え、ちょっとアンタまさか」
困惑する二人を放置して先生の刀を瞬時に装備し刀を抜き前に駆ける。
そして。
「すまんな、遅れた」
「えっ、ちょっ……」
深々とヨミの胸に鍔まで突き刺さる刀身。
そしてHPバーが砕け散りヨミの身体がそこから消える。
同時に俺の表示に浮かび上がるPKの文字。
まあ、問題無い。
「はぁ!?テメエなんて事しやがる!」
「そっちこそGMコールでもしてやろうか?」
「悪党ロールの一貫だよ、なあ?」
へらへらと笑われる。
まあ、良いさ。
「こちらから申請する。条件はどちらかの全滅、降参は無し。俺からは手は出さない、スキルは使えないで良いか?」
「ああ、こっちとしちゃ受けてくれればそれで良いからな」
「どうせここで逃げた所でもう一度やるんだろう?」
「そりゃな、なんたって女を攫えばお前が負ける為に出て来てくれるんだ。やる価値はあるよなあ?」
「下種が」
「その下種に倒されるんだよ、魔王サマ?」
「さっさと始めよう、面倒だ」
「はっ、その減らず口が何処まで続くかな?オラ、全員やっちまえ!倒した奴が魔王殺しの勲章だ!それに自分からPKになったしなあ!ありがたい事だぜ!」
「そうか。ありがたい事なのか」
≪PvP申請をします。勝利条件はどちらかの全滅、降参は不可、プレイヤータテヤは手を使えない、スキル使用不可のハンデが取り付けられます。この内容で申請しますか?YES/NO≫
YESを選択。
カウントダウンは無い。
「あはははは!本当にやったぜコイツ!」
周りの男共もうるさいがもう特に気にする事も無く凪いだ心で待つ。
「全員受けたな!それじゃあやっちまえ!」
雄叫びを上げながら迫ってくる連中の目には弱者をいたぶろうとする気持ちがありありと表れていた。
俺も先生達に加護を貰っていなければ向こう側だったのだろうか。
わからないが、これにはなりたく無いと思う。
これには。
そこからは色々長かった。
まず俺がした事は男達の名前、レベル、顔写真、全体図を撮ってメモ帳に纏める事だった。
殴られているが盾が無くても1000超えな上首飾りのお陰で2000に達している今の状態では何も効かない。
状態異常も食らってはいるのだが即座にレジストされHPも減った様子が無いので自己回復が追いついているようだ。
無表情のまま斬られ撃たれ殴られ蹴られ縄で絞められ押し潰そうとされているのだが気にする事が出来ない。
さて、後はこれをヨミとライアンさんとガノンさんに送るか。
何度も攻撃手が入れ替わっていた為把握するのが面倒だったが30分程でどうにか形になった。
ヨミとギルドメンバーには謝罪も入れとかないとな。
あー、ライアンさんとガノンさんには貸しにしといてって追記したけどどうなるかなー。
絶対戦闘だよなー。
とりあえず送ってと。
あー、暇だなー。
なんて事をのんびり考えてぼーっとしていると怯えきった男の声。
「な、なんでHPが削れないんだよ、なんだお前!なんだその防御力!」
「あ?誰が教えるかクソ野郎」
「こ、こっちには攻撃力ガン振りの奴だって居たんだぞ!?なんで無傷なんだよお前!」
「知らんよ、そっちの火力が足りないんだろ。それとも知らずに喧嘩売ったのかお前」
「それでもお前布の服だろ!?なんで生身で弾かれるんだ!」
「知らんよ。さて、そろそろ動いて良いか?飽きてきた」
その言葉にぎょっとするも内容を思い出したのか笑う男。
「へ、へへ、お前からは手は出せないんだろ?それに攻撃力が0なんだから攻撃出来ないんだろ?」
「そうだな。手は出せないな」
「へ?」
無言で男の横に立っていた奴を蹴り飛ばす。
良い音と共に吹き飛び壁にぶち当たりHPバーを7割持っていっている。
おお、良い火力。
「な、なんだ今のは!足!?いやお前どうやって攻撃したんだよ!」
「今から蹴り殺す相手にネタを教える馬鹿が何処に居る」
「ひ、ひぃぃ!助けて!助けてくれえ!」
「ああ、安心しろ」
「た、助けてくれるのか?」
「お前は最後に蹴り続けるから」
「はっ…………」
「じゃあ、待ってろ」
「い、嫌だ嫌だ嫌だああ!降参!降参する!」
「魔王に喧嘩を売ったらこうなるのはわかっていたろう?」
「う、嘘だと思ったんだ!」
「なら、思い知れ」
「う、うわあああああ!」
ようやく発散できる。
見れば観戦席にはガノンさんとライアンさん。
手を振られたので会釈しておく。
横にはヨミといつもの面々も居た。
「あ、あれは攻略組!誰か!コイツはPKなんだ!倒してくれ!」
「じゃあ心置きなく蹴れるな」
「え?」
「ああ、見届け人だから。お前らの」
「えっ……」
じゃ、そう言う事で。
そこからは酷かった。
まず逃げる奴をニコニコ笑顔のポケットに手を入れたスキップで追い掛けます。
相手が泣き出します。蹴ります。
次の奴を見つけます。追いかけます。蹴ります。
次の奴を見つけます。追いかけます。蹴ります。
次の奴を見つけます。追いかけます。蹴ります。
次の奴を見つけます。追いかけます。蹴ります。
次の奴を見つけます。追いかけます。蹴ります。
次の奴を見つけます。追いかけます。蹴ります。
次の奴を見つけます。追いかけます。蹴ります。
次の奴を見つけます。追いかけます。蹴ります。
次の奴を見つけます。追いかけます。蹴ります。
次の奴を見つけます。追いかけます。蹴ります。
次の奴を見つけます。追いかけます。蹴ります。
次の奴を見つけます。追いかけます。蹴ります。
次の奴を見つけます。追いかけます。蹴ります。
次の奴を見つけます。追いかけます。蹴ります。
次の奴を見つけます。追いかけます。蹴ります。
次の奴を見つけます。追いかけます。蹴ります。
そうしていると球が居なくなったのでへたり込んで泣いている男の前に立つ。
「ひ、ひぃい!ひいいいい!」
「これからは心を入れ替えるか?」
「ひいいい!ひいいいいいい!」
「これからは喧嘩を売らないと言えるか?」
「ひいいいいい!ひぎゃあああああ!」
「他の奴にももうやらないように言っておけよ?」
「はいいいい!はいいいいいい!」
「よし。なら終わらせてやる。色々押さえたからこれからはもうやるなよ?」
「はいいい!はいい!もうじまぜん!」
「じゃ、吹っ飛べ」
一番力を込めて蹴り飛ばす。
壁に当たり綺麗にバーが消し飛んだ。
≪プレイヤータテヤの勝利≫
うん、すっきり。
そうして佇んでいると降りてくるライアンさんとガノンさん。
「いきなり大量の顔写真とメモと一緒にここに来いなんて言われてびっくりしたよ?」
「ああ、こっちもいきなり貸し一つで良いからここに来てくれと書いてあって驚いたよ」
「あー、すいません、理由説明するの忘れてましたね。さっき送ったのが今居た連中でヨミを攫って俺に負けろと行って来たのでキレちゃいました」
「タテヤ君も無茶するねえ、言ってくれれば手伝ったのに」
「魔王の嫁に喧嘩を売るとは今の連中もわかってなかったみたいだね」
「魔王の嫁?」
「いつも話してるから掲示板とか噂ではそうなってるよ?」
「ヨミさんからの頼みでやってる事なんだろ?だから付き合ってるのかと」
「ブッフォ」
「今までは噂だったんだけど今の見ちゃうとねえ?」
「それにそのPK表示はどうしたんだい?」
「色々ありましてヨミを斬りました」
「おおう、なんだってそんな事に?」
「もしかしてヨミさんは手が動かせなかった?」
「あたりです」
「ん?動かせないとPKになるのかい?」
「今のPvP申請は手でやる仕様だからさ」
「なのでさっさと送り返す為に即死刀を」
「なるほど!」
「愛されてるねえ、ヨミさんも」
「長い付き合いの友人を助けるならと思いまして」
「うんうん、女の子は守らないとね」
「ですね」
「あの、友人、なんですけど……」
「大丈夫だよタテヤ君!僕らも応援するからさ!」
「とりあえずさっきの情報は魔王に喧嘩を売った物達として流しておくよ」
「ありがとうございます。応援されましても」
「で、これからはどうするんだい?」
「そう言えばPKが付いているんだったね」
「あー……そうですねえ。とりあえずは」
「「とりあえずは?」」
PvP申請を目線だけでも受けれるように頼まないといけませんねえ。
と言うと二人は笑ってくれた。
そして後ろに見えるギルドメンバー。
なんと言うか、引いてる。
あとヨミさんの様子がおかしい。
怖い。
惚れ…、惚れ…。
主人公はモテたい癖に自分が惚れられる筈が無いと言う思い込みをしています。
なので友人を助けると言う考えを頭の中でしています。
バカですね。モテモテです。




