34 質問と解説とケティーさん
淹れて貰ったお茶を飲んでいるのだが。
右手と左手を交互に使い飲んでいます。
なんだこれ。
理由は右手を使うとライアさんがションボリし左手を使うとアリスが不機嫌になるからです。
何がなんだかわからんね。
「さて、質問タイムなんだけど」
「昨日の狩りの時の事と今日見た装備の事が聞きたいわね」
「じゃあ今日もアリサからね」
「よろしくね、タテヤ」
「はい。よろしくお願いします」
「……調子狂うわね。まず最初。そこの少女は誰なのかしら?」
「街までの道案内をしてくれたドライアドのライアさんです」
「ドライアド?…えっ?」
「気付いたらなつかれてたっぽいです。加護のお陰ですかね?」
そこでライアさんを見ると笑顔のまま首を傾げられた。
まあ気に入られたと思っておこう。
加護目的だけだったら?
悲しいです。
「まあ可愛いしいっか。じゃあ次、昨日の戦いぶりもそうだったけどタテヤのステータスと装備ってどうなってるの?」
「えーっと、ヨミ、加護類も話して良いのか?」
「軽めにね」
「じゃあ簡単に。とある人達に凄くステータスが上がる加護を貰ってこうなりました。装備もついでに貰いました。それを使ってイベントソロクリアをやらかしました」
「凄い人達?」
「この街の住人に聞いたなら知ってるかな?ダンガロフとルーネ聖女の二人」
「ああ、確か国を救ったり国を滅ぼしたりしたって設定の?」
「その人たちが俺の師匠と先生です」
「え?本人達に師事?」
「初期位置が激昂の森でした」
「は?」
「俺もよくわからんがそこで気に入られ過ぎて今に至る」
「は、はあ、そうなのね?」
「昨日の事に付いては挑発に精神力で補正が掛かるとは思っていなかった。フォートレスと砦盾はうっかりです」
「うっかりで防御500増やされたこっちの事も考えなさい!」
「なんかすんません!」
「しかも挑発で辺り一体のモンスターが寄って来るのに本人無傷とかイージーモードじゃないありがう!」
「すいませ……?」
「ん?実際助かったんだから感謝は当然でしょ?」
「は、はあ、そうですか」
「それにしても加護って凄いのね。今の防御力どうなってるの?」
「昨日上がった1レベルと職業1レベル分は割り振って無いから昨日のままで……。ガード!フォートレス!砦盾! 1664だってさ」
結果を告げたら爆笑されました。
「バッカじゃないの!?ああもう、何それ!」
「笑いながら罵倒されてる……」
「でも確かにそれならあの馬鹿げた攻撃力の説明も付くわね」
「防御を0にして攻撃に変換してました」
「……それ、取って良かったスキルなのかしら」
「なんでこうなったのか俺にもさっぱりわからん……」
「あー、うん。その、気を強く持って、ね?何かあれば手伝うし」
「ありがとう……」
「うん。私からはこれぐらい。次は誰が聞くの?」
アリサが聞いて手を挙げたのはカナさん。
えっ?
「タテヤ君が良ければだけど私を好きに使ってくれても良い、よ?」
「なあヨミ、俺に対するGMコール案件じゃないか?」
「普通にパーティー組むんじゃないの?」
「ああそっちか。俺がコールされるの確定かと思ったよ」
「あっ……。ご、ごめんなさい勘違いさせちゃって!ヨミさんの言う通りです!」
「驚きましたよ。しかし何故でしょう?」
「さすがにお礼したりないと思って……」
「あー……。ヨミ」
「好きにしたら?ギルドメンバーなんだし」
「それもそうか。手が足りない時はお願いします、カナさん」
「うん、わかりました」
「よろしい。じゃあ次、カスミ?」
「ああ、こちらから渡せる物は現状無いが持ち込んでくれた素材で作って返したいと思ってる」
「あ、それなら丁度良い物があるんですよ」
「タテヤ、アンタまさか」
「そのまさかですよヨミさん」
そう言って古代龍素材一式と血を渡す。
「ふむ?これは……なんだこれは!?」
ですよね。
「カスミさんにはいつかそれで鎧を作って欲しいんです」
「しかし……良いのか?私がこれを扱っても」
「何故か供給源がありまして」
「そ、そうか。では勉強させてもらうとしよう。ありがとう。…しかしまた貰ってしまったな」
「あ」
「アンタも学ばないわねー。で今日の分の質問はこれぐらい?」
「俺としてはこの後何も無いんだったら街の散策に行きたいんだが」
「確かに長い時間拘束しちゃってるわね。じゃあ自由行動にしましょう」
『わかりました』
良し!これで逃げ出せる!
正直もう一杯一杯だったんです!
「それじゃタテヤは散歩行ってらっしゃーい」
「よっしゃ!行きますぞライアさん!」
「私も行く」
「えっアリスさんも来るので?」
「良いでしょ?」
「はあ、別に大丈夫ですが」
「なら行く」
「あっはい」
そうして右にライアさん、左にアリスさんと美少女二人と手を繋ぐ男が出来上がった。
これはマズイですよ?
何がとは言わないが。
そしてテクテク目的地を決めないままのんびり歩く。
大通り以外にも裏通りや建物の隙間の道など色々な通り道があってそれをアリスに教えてもらうのは面白い。
ただ周りの男達の視線が痛いです。
そしていつの間にかアリスと一緒に俺を引っ張るライアさん。
右肩だけミシミシ言ってますが根性で耐える。
ここは我慢がま・・・グワー!
また身体ががくがく揺れながら謝られました。
アリスも俺に釣られて揺れてたのはちょっと面白かったです。
そうしている内に突然ライアさんが立ち止まる。
目線の先には四方を建物に囲まれつつも唐突にぽっかりと空いたスペースに生えている一本の木とベンチに座ったおばあさんの姿。
「ライアさん、あの木が気になるんですか?」
首を横に振られる。
「ライアさん、あの方が気になるんですか?」
そう聞くとコクリと頷かれた。
ふむ。
「アリスさん」
「アリス」
「え」
「アリスで良い」
「わかった、アリス。ライアさんが気にしてるから行っても良いか?」
「目的があるならそっち優先」
「と言う事なので行きましょう、ライアさん」
ライアさんを引き連れておばあさんの前へ。
「おや、めんこい子達だねえ、一体どうしたんだい?」
「ライアさんが貴女を気に掛ける様子を見せましたので」
「ライア?……まさか、その緑髪の少女はドライアドさんなのかい?」
「へ?」
「ああ、ごめんね、自己紹介をしようか。私はケティー。ドライアドさんに助けてもらった事があるのさ」
「ライアさん、マジですか?」
ニッコリ笑顔でおばあさんの両手を掴むライアさん。
本当らしい。
見ればアリスも目を見開いている。
多分俺もだろう。
「私が小さい頃はまだあの森も遊び場に良かったんだけどねえ」
「何か理由が?」
「モンスターが流れ込んで来ちまったのさ」
「ああ、それは……」
「見た所あんた達二人は冒険者だろう?」
「ですね」
「うん」
「冒険者が狩ってくれて居たから街にも来ないんだけどそれでも数は多くてね」
「うん?もしかしてその当時ってダンガロフ師匠とルーネ先生がハシャいでた時期じゃあ」
「救国の英雄と聖女様を知っているのかい!?」
「あ、今でも激昂の森に住んでますね」
「そうかい、あの方達は今でも……」
「何があったので?」
「私も昔は冒険者でね。よくあの森に入っては狩りを続けて居たもんさ」
「ほう」
「へえ」
「それである日調子に乗って奥まで入ったは良いものの怪我を負って戦えなくなったんだよ」
「え」
「そこでもう駄目かと思って意識を失った後に気付けば街の傍で寝かされてたんだよ」
「おお?」
「慌てて起きて振り向くとそこに居るドライアドさんが去って行く所だった」
「つまりライアさんは命の恩人だと?」
「それに飛び起きたにしては痛みが無いと思ったら身体が完治していてね、何の魔法かと思ったもんさ」
「完治?もしかして血の匂いとかはしませんでしたか?」
「ああ、したよ?でもどうしてアンタが知っているんだい?」
「えっと、このポーションの匂いを嗅いで貰えませんか?」
そう言って先生の血ポーションを差し出す。
「これかい?……これだよ、この匂いだよ!アンタこれを一体何処で手に入れたんだい!?」
「ルーネ先生から渡されました」
「聖女様の、血……?アタシャ一体なんて物を貰っちまってたんだい!聖女様に会えるかい!?」
「会えますよ。ライアさん、また道案内お願いします」
ニコニコ笑顔で頷かれる。じゃあ、行くか。
「アリスはどうする?」
「今度連れて行ってくれるなら我慢する」
「俺方向音痴だからライアさん頼みになるけど良い?」
「構わない」
「今回はお預けって事で。ヨミにも説明お願い」
「わかった。また明日」
「帰ってくるの前提ですか…。行って来ます」
「話は纏まったみたいだけど本当に森の中を行くのかい?」
「まあそれは裏技がありまして」
「裏技?」
「ライアさんと手を繋ぐと気配が木になります」
「なんだって?」
「ですよね?ライアさん」
笑顔のまま右手をdの状態でグッと突き出される。
可愛い。
「歩くのがキツかったらツタベッドを使ってライアさんに運んでもらいましょう」
「あ、ああ、本当に会えるのかい……あの英雄達に」
「ええ、二時間程掛かりますが良いですか?」
「ああ、大丈夫さ、行けるよ」
「じゃあ行きますか」
そうしてライアさんを挟んで右にケティーさんが加わる事となった。
ライアさんは孫ポジだろうか。
英雄達と言われても先生の性格のせいで信じきれない自分が居ます。
許して下さい。
7日目に街に来て次の日にとんぼ返り。
旅行ですかね?




