29 ホームと質問とヘタレ
頑張ってそれなりに口調に個性を持たせました。
喫茶店を出て周囲のなんだあの男はと言う目線を受けつつヨミに案内される。
後ろのメンバーの視線が怖いです。
一軒家自借コースかな?
ギルドの外見は3階建てで三階がギルドメンバーの宿泊施設、二階が各種生産職設備階、一回が食堂とロビー。
そして現在ロビーに置かれているテーブルの上座側に自分とヨミが座って他の面々は3対3で座っている。
一番手前に魔法使い二人、二番目に忍者と魔法剣士、奥に鍛冶師と美人さん。多分弓使い。
姉妹からはとても睨まれており忍者と魔法剣士からは興味津々な目を向けられ鍛冶師と美人さんは何か別の事を考えている様子。
とても、アウェーです。
胃がキリキリして来ました。
緊張から口調が安定しそうに無いです。
何を口走るのやら。
「なあ、ヨミ、俺ここでやって行けるのかな」
「まあこれから質問攻めにあって貰うからそれ次第かな」
「マジか」
「じゃあまずはアリサからお願い。次はアリスね」
アリサとアリスと呼ばれた二人。
アリサが黒髪碧眼、アリスが白髪真紅。
まずはアリサからの質問。
なんと言うか、面接官みたいな感じでした。
「まずアンタの名前は?」
「タテヤと言います」
「職業は?」
「両手盾です」
「ふざけてるの?」
「実際に攻撃力が0です」
「はぁ?」
「本当です」
「まぁいいわ。何処でヨミと知り合ったの?」
「別のMMOで男キャラ同士で知り合いました」
「ヨミと気安く話してるのはなんで?」
「チャットの口調が男言葉だったのでそれを相手にしてる感覚が抜けなくて」
「へぇ……。ヨミの性別を知ったのはいつ?」
「二日前です」
「え?ホント?ヨミ」
「そう言えば言うの忘れてたなーってチャットで書き込んだ後で思い出して」
「雑っ!ええと、じゃあなんでウチに入ったの?」
「ヨミから押し寄せる有象無象の恨みつらみ対象になれと言われまして」
「はぁ?それ了承したの?」
「友人だし良いかなーと」
「ねえ、ヨミ、コイツって馬鹿なの?」
「どうだろう?タテヤはどう思う?」
「美少女からのお願いは断っちゃいけないって男友達が言ってた」
「ソースは?」
「ヨミから」
「ねえ、ヨミ、あんた何教え込んでるの?」
「チャットでの会話だから!まさか本気にするなんて」
「嘘です」
「コイツ……」
「ヒィッ」
「じゃれ合い、ねえ?じゃあ次、さっきの戦い方は一体何をやったの?」
「ガードカウンターを無理矢理発動させただけなんだけど」
「は?」
「自分で当たりに行ってクリーンヒットしたら発動するかなと思ったら出来まして」
「え?何よそれ」
「本当です」
「……頭が痛くなって来たわね」
「アリサ、そろそろ」
「はいはい。まだまだ聞き足りないけど最後。アンタは私達を見てどう思う?」
「綺麗どころが集まってるけど怒ると消し炭にされそうだなあと」
「失礼ね!」
「そんなー」
「はい、じゃあ次はアリス」
「はい」
なんと言うか苛烈な方でした。
さてアリスさん。
訥々と言われるのでポンポン返す。
何も考えていませんね。
「貴方が私達を守ってくれるんですか?」
「なるべくは」
「絶対とは言わないんですね」
「自信が無いのです」
「それで守れるのですか?」
「出来れば自衛して下さると助かります」
「護衛で雇われたのに?」
「護衛はヨミの頼みですので」
「へえ、じゃあ私からもお願いしても良いですか?」
「どうしましょうかね」
「お願いはなるべく守って下さい、です」
「それぐらいなら」
「ええ。では私はこのぐらいで」
睨まれてたのはなんだったんだろうか。
「次、コノハナ」
「主殿は何故斯様な出で立ちを?」
「忍者だ!?」
「む。この様な言い回しは慣れておらぬ故至らぬ点があれば申し訳ない」
「あの、ごめんなさい、今だけは普通にお願いします」
「わかった。とは言っても自分からはあのヨミが連れて来たと言うだけで信用出来る」
「ヨミってそこまで信頼されてるんですか?」
「我らを守ってくれていたのはヨミなのでな」
「へえ、凄い事やってたんですね」
「何しろ見目麗しい少女達の集まりだ、男も集る」
「それで何人斬ったとか言ってたんですか」
「あまりに酷かった者達はな。何、今日の事でしばらくは収まるだろう」
「だと良いですけどねえ」
「明日もやってもらう事になるやもしれん」
「あ、残りですか?」
「そんな所だ。私からはこのくらいで」
「はーい。じゃあカナミ」
コノハナさんは不思議な方でした。
ヨミさん貴女初日からやってたんですか……。
なるほどこれは確かに急いで欲しかっただろうな。
すまぬ。
「うーん、私もヨミさんが連れて来た人だから今言う事は無いかな」
「えっ」
「あ、そうだ一つ」
「はい」
「私って可愛いかしら?」
「どちらかと言えば美人の方かと」
「うん、なら良し」
「はあ」
「カスミ、貴女の方が聞きたい事多いんじゃない?」
「じゃあ次、カスミ」
カナミさんはさっくりと良くわからない質問をされた。
なんだったんでしょう。
「鍛冶師としては素材に興味がある」
「あ、そう言えば激昂の森の素材ギルドに入れるんだったな。ヨミ、やり方は?」
「メニューのギルド項目からストレージ」
「あいよ。じゃあ全部入れとくから好きに使ってくれ」
「え、全部入れるの?」
「後でカスミさんから俺が注文しても大丈夫なら何か作ってもらうよ」
「構わない。ヨミの言う通り君は面白いな」
「そうですかね?」
「ああ。それにこれだけの素材を今市場に流されると大混乱が起こるから助かったよ」
「やっぱりおかしな量でしたか」
「まだプレイヤーの大半が激昂の森を探索すら出来ていないからね」
「ああ、やっぱり無理ゲーステージだったのか……」
「良く生きてこれだけの量を持ってきたね。……この静かなる怒れる熊とはまさか君は」
「あっ」
「君には色々頼む事になりそうだ。よろしく」
「よ、よろしくお願いします」
ああ、確実に素材集め要員ですね。
「じゃあ最後、カナ」
「えっと、タテヤ君はあの動画の本人なのかな?」
「ヨミ」
「ネタキャラとしか言ってないわよ?」
「じゃあ俺が道着のままやったからバレたか?」
「えっと、周りの人が笑い顔を動画で見たって言ってて…」
「え、俺笑ってたの?」
「笑顔だったわよ?」
「うわぁ……」
「で、そんな凄い人が入ってくれるなら大丈夫かなって…」
「これはオーケーなのか?」
「良いんじゃない?ただカナは優しいから困らせない様に」
「うん、そもそも神々しくて近づけない」
「可愛いでしょ?」
「美人じゃないかな?」
「あの、その、困る…」
「すいません」
「これでカナも終わり?それならこれからタテヤもココ拠点で色々動いてもらうけど」
「はい、大丈夫です」
質問タイムは終わりらしい。
あ、そうだ。
「なあカスミさん、あの素材売った金でこの街の何処か一部屋くらい借りれません?」
「それは大丈夫だけど君が出て行くのかい?」
「さすがに最初は気まずいものでして」
「それくらいなら直ぐにでも渡せるけれど」
「別に本気で言った訳じゃなかったんだけど別にここが拠点なんだし良いのよ?」
「いやあ、壁要員がここに居たらハーレムとか言われるだろ」
「あー……、そうなるか」
「それに用があったら呼んでくれたら良いと思ってるんだがどうだ?」
「本当にここに構えないの?」
「他の女性プレイヤーも増えるだろうここに居ると緊張で吐くぞ俺は」
「本当に緊張してるのね」
「ヨミの事も今までのチャット付き合いがあるからどうにか耐えてるがここは無理だ」
「仕方無いわねー、持って来る物に対する報酬に色を付けるのは許しなさいよ?」
「それぐらいならまあ、良いか。すまん」
「無茶言ったのはこっちだしね、良いわよ」
「まあ元々何やるかも決まってなかったししばらくは集ってくる者共を倒せば良いだけ楽だな」
「ああ、それとこっちのレベル上げ、付き合ってくれない?」
「ん?ああ、行けるぞ?」
「よし。じゃあ皆もそれで良いわね?」
『はい、ヨミさん』
「お前本当に姉御みたいになってんな」
「う、うるさい!」
受け入れられた、のかな?
ただとても息苦しいです。
困った。
ヨミさん強い。




