27 殺気と攻城戦と魔王の笑顔
戦闘描写に手間取りました。
読みにくかったらごめんなさい。
さすがに広場でやるのは迷惑なので街の外でやる事に。
俺とヨミが先頭で後ろにギルドメンバー。
その後ろに作戦を話し合ってる男共の集団。
段々数が増えてるけど気のせいだと思いたい。
聞こえてくる声はこんな感じ。
「おい、どう攻める?」「基本は前衛中衛後衛だろ」「おい壁役誰だ」「ウチで引き受ける」「りょ。じゃあ俺は後衛でヒーラーを」「おう。後衛は魔法使いと遠距離武器で固めてくれ」「足速い奴は前衛の隙間と遊撃頼む」「じゃあ俊敏に多く振ってる奴で剣士系は中衛で前衛の隙間埋めな」「短刀持ちは遊撃で」「りょー。作戦は?」「まずは壁並べて遠距離で削る」「だな。それにしても一人で相手するのか?」「何、何とかする手立てがあるんだろうさ」「それにしてもあっさり引き受けたけどアイツ強いのか?」「誰か見た事ある奴いるか?」「無いな」「まあアイツ倒せば声掛け公認だ。気合入れるぞ」「「「オウ!」」」
ガチかい。
ちょっと待ってくれまた過剰火力なのか。
そう思いヨミを見るとさすがに申し訳なさそうな顔。
「なあ、何人位に声掛けられてたの?」
「えっと……ざっと数百人?」
「多いわ!」
「私達皆合わせてだから多いに決まってるじゃない」
「あー……」
「で、作戦は?」
「全部カウンター」
「攻撃スキル使っても良いのよ?」
「ドヤ顔ダブルシールドをしたい」
「まさかその両腕に付いてる盾って」
「うん、手に持てます」
「はあ……」
「どうしてもキツかったら使うから」
「負けないようにね。後は?」
「サブ枠に先生の盾入れてシールドチェンジかなあ」
「刀はどうするの?」
「あんまりにも面倒だったら抜く」
「酷い話ね」
「やらせたヨミがそれ言う?」
「これでも申し訳無いと思ってるわよ?」
「でも負けたら怒りますよね?」
「当然」
「頑張ります……」
「よろしい♪」
そんな俺達の会話を聞いていたのか静かにキレる男共。
「アイツあんなに俺達のヨミさんと楽しそうに話しやがって…」「倒さなきゃいけない理由が増えたな」「リア充滅殺するべし」「なあ、集団戦で勝っても面白くないよな」「全員とタイマン張らせるのか?何時間掛かるよ」「だったらタイマンやりたい奴はやって集団戦じゃないとキツイ奴等はそれで良いんじゃね」「魔法職とかキツイしなあ。前衛も分けてくれないか?」「おーい、遠くから眺めてるだけでも満足勢は集団戦行くぞー」「うーい」「じゃあタイマン勢はなるべく少なくしてくれ」「マジかよ」「でも確かにヨミさん達の時間取るのもなあ」「女神達を優先しよう」「おう」「ただアイツは絶対倒さないとな」「「「だな!」」」
……。
再びヨミを見ると目を逸らされた。
「ご、ごめんなさい」
謝られた。
それと誰一人として一対多数がおかしい事に気付いてくれない。
悲しい。
街の外に草原があったのでそちらの方でやる事になり。
そして現在俺の目の前には300人近くの男共が居ます。
多くね?
一部女性が混じってるのはなんと言うか、うん。
どうやら話を聞いて増えたらしい。
まずは集団戦らしく10名程がヨミさん達の横に行く。
じゃんけんで一対一をやる権利を勝ち取った組らしい。
平和ですね。
そうして立っているとヨミの声。
「PvP扱いだけど3桁規模は初めてだから今後の参考にとAIさんも見る事になりました」
『よろしくお願い致します』
えっ。
全員が驚いてヨミの方を見ると立っているその隣に背に翼の生えたAIさん。
先のイベントで会いましたね。
「それとここにいる面々はちゃんと名前を控えてもらうので負けた場合に往生際が悪い奴はGMコールをされた場合重くなるわよ?」
『約束は守りましょう』
男共が静かになった。
ですよね。と言うか俺も声掛けしたらコールされるんでしょうか。
怖いです。
でも俺チート技能、装備、ステータスなんですけどこの場合はどうなんでしょう。
そう思いAIさんを見ると微笑を返された。惚れ掛けたけど違う。
聞いてみよう。手招きをしてみる。自分を指差すAIさん。
うなずくと小首を傾げながら近付いて来た。可愛い。
「えっと今の俺ってこのまま戦っても良いんですかね」
『何がどうあれ獲得された物は使っていただいて結構です』
「ああ良かった。戦闘した後にチートとかで通報されるのが怖くて」
『その心配は御座いませんよ?』
「え?」
『特例ですから』
「は、はあ。あ、そうだ」
『なんでしょう』
「先生とアルさんの加護と相殺出来るステータス低下の装備って貰えませんかね」
『…?わざわざ下げるんですか?』
「普段からこのステータスだと困る事もありまして」
『はあ……。では今度お会いした時には』
「ありがとうございます」
『戻ってもよろしいでしょうか?』
「はい、ありがとうございました」
戻っていくAIさん。
それと同時に更に膨れ上がる殺気。
AIさんと気軽に話していた俺に対するヘイトが更に上がったようだ。
やっちまったな?
AIさんが戻ったのを確認して待ってくれていたヨミに目礼。
「よし。じゃあルールは一つ。どっちかが全滅するまで!良いわね?」
最後の良いわね?はオレに向けられて居たので頷く。
それと更に防御力にBPを叩き込んでおこう。
現在の防御力は素で310、加護分で800、装備が小盾二つに背中の大盾と先生の大盾で合計95、籠手40道着40の80を合わせて1285。
攻撃力を除くその他は素で20、加護分で400追加の420。
スキルはガード3、フォートレス2、全速回避を新規取得。
ガード2とフォートレスを経由しないといけなかったが問題無い。
左腰には一応刀を装備しておこう。
【ガード3】
防御力を20%上げる
【フォートレス2】
盾の防御力を1.2倍にしPTメンバーに
現在の自分の防御力で10%を付与する
両手盾専用スキル
【全速回避】
俊敏と知力を15%上げ防御を5%減らす
やっぱり加護が強過ぎます。
貰い物なのに自分が強いと勘違いしそうなので怖い。
早急に自分でも死に掛ける場所を探さないとな。
まずは目の前の事を片付けてからになりますが。
頑張りましょう。
「それじゃあ始めるわよ?良いなら全員承認してね」
そう言って表示されるウィンドウ。
≪PvPを申請されています。承認しますか?YES/NO≫
YESを選択。
≪PvP『攻城戦』が開始されます。1対284となります≫
そうして始まるカウントダウン。
人数多いな!
いかんこれはさっそく先生の大盾案件かも知れん。
でも最初ぐらいはライアさんに貰った盾を使おう。
名付けてうちわ作戦を決行する!
そうしてカウントダウンが0になり。
PvPが始まった。
「ガード!フォートレス!」
向こうの布陣は一列約30名で前衛が3列、中衛2列、後衛5列と作戦通りの布陣を取っている。
寄せ集めらしいが指揮官もちゃんといるのが凄いと思う。
まずは遠距離から色々飛んで来る。
前衛が戦況を固め中衛に居る遊撃部隊が動き後衛の指揮官が把握するタイプの様だ。
「まずは小手調べだ!後衛、投擲!魔法も合わせろ!」
と言っても飛んでくるのは矢やら砲弾やら鉄球やら魔法弾やら投槍などと色々だ。
しかも面状に飛んで来る。様子見ってなんだっけ。
「ひいぇぇえ!うちわ作戦!」
ライアさんに貰った大盾を背中から取り出し両手でばっさばっさと振り回す。
上手い具合に飛んで来た物に当たると投擲系は持ち主の元に跳ね返り魔法系は消滅した上で打ち出した者のMPを減らして行く。
しかも3倍返しの効果付きなので威力が上がっているわ追加で1.5発分のMPが減らされるわと言うお返し付き。
周りに着弾して土くれを撒き散らしたりちょくちょく自分に直撃もするが問題無し。
何回か振り回していると遠くの方で後衛がズタボロになっているのが見える。
人数的には半分潰したか?
よし。
次は前衛を倒しに行きましょう。
とある後衛の男
「……は?」
今俺は何を見たのだろうか?
1対284なんて馬鹿な勝負を受けた奴を倒すのは難しく無いと思っていた。
それこそ開幕だけでHPバーが倒せるだろうと。
それがなんだ、情けない悲鳴と共にアイツが大盾を振り回したら盾が光って攻撃が跳ね返って来やがった。
慌てて避けると周りの実弾系で弾かれていた奴は大分被弾していた。マジかよ。
魔法系は跳ね返って来て無いらしいが様子がおかしいな。
あんなにMPが減るような魔法だったか?
どうも盾に当たって消滅する度に減っていくような……。まさか!?
「おい!あの盾に魔法系が当たるとMPが持ってかれるぞ!」
その声は遅かったようだ。
ごっそりMPが減っている魔法職の面々。
投擲系も威力が高かった連中は軒並み沈んでる。
まさか威力が強化されてるってのか?
クソッ、これじゃ継続的な支援が出来そうも無い。
耐えてくれよ、前衛。
後衛からの援護が無いとわかった所で一気に突っ込んでくる前衛と中衛の皆さん。
素早い反応ですね。困ります。
一応大盾は先生の物と入れ替えておきましょう。
そして背負いなおしたら両腕の小盾を手で持つ。
そう。あれだ。
ダブルシールドだ。
敵の数は多い。だがやってみたい。
どうしてもダメなら砦盾と籠手と刀を使いましょう。
勝たないと般若になる人が居ますからね。
にやけ面になるのが止められない。
「行くぜ!ドヤ顔ダブルシールド!」
とある前衛の男
「なんだ、あれ」
今俺は何を見ているのだろうか?
戦闘が始まってからよくわからん内に後衛が潰れたと思ったら今度は前衛の攻撃を受けてもビクともしてねえ奴が目の前に居やがる。
攻撃に対して積極的に盾を当てに行く戦法なんぞ誰がやると思う?
それに両手に盾を持ってるがまさかガードカウンター、か?
それにしてもどう言う対処の仕方だ。
わざわざこっちの戦列に突っ込んで来るだと?
大正解だよチクショウ。
攻撃力が高い連中はカウンターでごっそりHPが持ってかれてるって言うのに後衛からの支援が届いて来ない。
クソッ、ヒーラーが落ちてやがるか?
あとどれだけ稼げば後衛は戻ってくる?
ああ、目の前の奴が倒された。
次は俺か。
頼む、誰かこのドヤ顔ダブルシールドを倒してくれ!
何となく囲まれる前に突っ込んでみよう精神で突っ込んだら予想してなかったのか戦列が崩れたので正解だったっぽい。
ひたすら走りながら攻撃が来れば盾を当てにいってはいるものの人数が多いな。
何しろ皆さん鬼気迫った顔でまるで魔王と対峙してるみたいな感じで挑んで来るのでちびりそうです。
それでもなんとか出来ているのは加護で上がったステータスのお陰です。
知力と俊敏と精神が上がっていると判断と動きと胆力が付く様で。
お、目の前の人も削り切れたか。それじゃ次行きましょ。
全滅させないといけませんからね。
大変です。
とある中衛の男
「おい、おい、嘘だと言ってくれよ」
後衛が潰れた。
そして今前衛が崩れそうになっている現実。
信じられない。信じたくない。
まさかガードカウンターをあんな風に使う奴なんて居たのか。
両手に持った木の盾二つと大盾一つでこっちが既に半分以上壊滅だと?
笑えねえ。
ああ、チクショウ、目の前の列が落ちやがった。
ああチクショウ、笑うなよ、笑うなよおおおお!
それにコイツの笑み、まさか、まさかまさかまさか!
あのレイドボスのー!
なんだろう、皆さん決死の表情なんですけど。
あれ?
特に変わった事はやってないような。
まあ今考える事じゃないし後で考えよう。
ほーれほれほれ攻撃してこーい。
おっと笑みが。
あっ怖かったですか?
すいませんね下手な笑みで。
「よっ…と。これで半分くらいかな?」
ふとぽっかり空いた隙間の時間。
周りを見回すと戦闘区域外に飛ばされた大量のプレイヤー達の姿。
「魔王、魔王だよアイツは!」「本当に攻撃スキル使って無いのか!?」
などと言う声が聞こえてきます。魔王とは失敬な。
そして辺りを見回すと残っているのは残り十数名ほど。
皆さん絶望の表情をしています。
あれ?
首を傾げていると一人の男性プレイヤーの声。
「こ、降参だ!」
「そうは言われましても全滅が条件ですので……」
「じゃ、じゃあなるべく簡単に頼む!」
「はあ。わかりました」
職務投棄を発動させ一発殴る。
それだけでHPバーが5割以上減ったので二発でトドメ。
よし。残りも行きますよ?
その様子を見て心が折れたのか動かなくなった人達をサクサク殴って行って戦闘終了。
ううむ、職務投棄使っちゃったな。
≪タテヤ撲滅連盟が全滅しました。条件を満たした為プレイヤータテヤの勝利となります≫
勝ちました。
あれ?先生の大盾結局使わなかったな。
俺も成長していると思いたい。
既にタイマン勢は心が折れかけてます。




