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26 祝福と街と矢面

湖畔から森の中に入ってライアさんとテクテク歩く。

師匠から出て行く直前に3時間ほどで着くと言う事を聞いていたのだが大分短縮されそうだ。

その理由はライアさんにある。


まず一つ。

モンスターが襲って来ない。

自分がこの一体のモンスターを一時的に刈りつくしたと言うのもあるだろうがそれが理由では無い気がする。

繋いだ手を離そうとすると頬を膨らませた怒り顔でぎゅっと握ってきたのだ。

可愛い。

おそらくだがライアさんの手を離すと襲われるのだろう。

俺の事も木の気配にしてモンスターの注意が向かないようにしてくれているのかも。

遠目にチラホラ見えるモンスターもこちらを認識していないようだし。


二つ目。

ライアさんが歩く先の木々が勝手に避けて道を空けてくれるのだ。

木々が唐突に根っこを器用に使いながら避けて行く光景はなんと言うか、なんだろう。

それと地面も土が大半であまり草花も無かった筈なのだがライアさんが歩いた後に生えてきてる。

と言うか段々前方にも次々生えてきてる。

何コレ凄い。

少女がスキップする様はとても愛らしい。

ただそれでも人外パワーである様で引っ張られた瞬間肩がミシッと鳴ったのは恐ろしい。

直ぐにペコペコ頭を下げられたは良いものの謝る手に引っ張られてガクガク俺の身体が揺れたのはご愛嬌だろう。


そんな事もあり戦闘に備えていた俺は気を緩める事が出来た。

ライアさん本人は話せないが存外気まずくなると言う事も無くのんびり森林浴を楽しみつつ町を目指す。

ただ段々草花が生える範囲と速度上がってませんか気のせいですか?

それに俺の身体が微妙に光ってるんですが緑龍の加護が効いてるの?

あ、木達の動くスピードが上がってる。早っ!怖っ!

疑問の顔を向けるとニコニコ笑顔で返されたので特に気にしない事にした。


そうして歩く事二時間。

遂には数十メートル先まで見通せるようになった道の向こうに壁が見えた。

思わず叫ぶ。


「おお!町!町ですよライアさん!」


そう言ってライアさんを見るとニコニコ笑顔がションボリ顔に変わっていた。

あっもしかしてやっちまった?

どどどどうしよう。


えーっと。


「あの、ライアさんからも良かったら何か欲しいのですが……」


いやそこは普通こっちから贈り物をする所だろう!

そうは思っていても今持ってるのモンスターのドロップ品しか無いんですよ。

そう思いつつも大量にあるトレントの原木を一本取り出してライアさんに渡してみる。

するとライアさんにちょっと笑顔が戻り原木を手に取って貰えた。

よし!


見守っていると原木に手をかざし光ったと思うとその場には盾が三つと小物が一つ。

小盾が二つと大きな盾が一つ。小盾は腕に装備する事も出来そうだ。

そして小物。


今にも口に咥えた魚の腹を食い千切りそうな躍動感が有る熊の木彫り。


何故そのチョイスなんだ……。

ただニコニコ笑顔が戻っていたのでありがたく頂く。

微かに神秘的な光を放っている熊が不思議です。


ステータスはこんな感じ。


トレントの小盾 品質C レア度2

トレントの原木から作られた小盾

原木一本から多く作られる為初心者に渡されやすい

防御+15


トレントの大盾 品質C レア度2

トレントの原木から作られた大盾

あまり作られる事は無いが初心者に渡す物としては上物

防御+25


トレントの木彫り熊 品質A+ レア度5

トレントの原木を圧縮した後作られた木彫り熊

空気を清浄にする効果がある

ドライアドからの贈り物

観賞用



熊、凄いな!

何処かで飾ってみよう。

とりあえずは森を抜けよう。


抜けた所でライアさんに手を離されたので両腕の上腕と背中に大盾を装備して熊を手に持ってみせる。

ぱちぱちと拍手をされたので片膝立てての深々とした礼をしてみる。


「道案内ありがとうございましたライアさん」


すると頭に手をかざされる。

ん?



≪祝福【森の散歩の仕方】を授かりました≫



「ファッ!?」


驚いて顔を上げると手を振りながら去って行くライアさんの姿。

何がなにやらわからないが良い物を貰ってしまった。

もう一回深々と礼をする。また森に行きますね。


さて、町だ!


城壁に囲まれたその町はラルタ街と言うらしい。

町とちゃうやん!


構造は円の中心から八方に大通りが伸びており家々や職人街などは方角毎に集められているらしい。

自分が今居るのは北門でヨミに到着した事を知らせると中央広場まで直ぐ来いとのお返事を頂く。

散策する暇も無いんですね。

しかも中央広場まで一本道だから寄り道不可である。

悲しい。

そんな事を考えつつ建物の外見は東欧っぽいなー、ヨーロッパっぽいなー等と適当な事を考えつつも早足で急ぐ。

そうして中央広場に辿り着いた俺が見た物は。


「なんじゃありゃ」


中央の噴水の前で固まって周りに牽制し続けている女性7人の姿と。

それを取り囲むようにしている男共の集団だった。

それぞれで女性達に声を掛け続ける男達。

耳を澄ませてみるとギルドへの勧誘だったり用心棒の自薦だったりパーティーへの誘いなどが聞こえてくる。

確かに見目麗しい集団であるがあの中に男一人とか絶対気まずいと思います。


「うわぁ、あれの中に入って行くのか……。どうしよう、とりあえずヨミにメッセージ送ってと」


『広場に着いた、道着着た小盾二つと大盾背負ってる奴』と言うメッセージを送ると

一番前で応対していた少女がメニューを開く素振りを見せその後広場を見回し俺と目が合った。

手を振ってみる。


直後通話が掛かってくる。

こんな機能あるんですね。


「おお、大変だな」

『話は良いからさっさとこっち来なさい!』

「アッハイ」

『あとごめん、矢面に立ってもらうから』

「りょうかい」


そう言って俺はどうにかこうにか波を抜けヨミの前に立つ。

周りの男共が静かになりニヤニヤし始めた。

ナンパでもすると思ったのかな?

続いてヨミのギルドメンバーも俺の事を警戒しだす。

良い判断です。

でも睨むのは怖いので勘弁して下さい。


少し経つと所々から「おい、あの道着…、動画の奴じゃね?」「あ、そうかも?」「盾だけ、いや刀も差してるぞ?」「それにあの動画の鎧装備も着てなくね?」「装備してる盾もトレントのだしな、道着だけ真似したとか?」「まあおのぼりさんだろ」「あんな奴街で見た事無いしな」「ナンパするのか?一番硬いと言われてるヨミさんを」「無理だろ、あのヨミさんだぞ?」「既に何人物理的に斬られたよ」「アイツもそうなるな」「だな」


ヨミさん貴女何人斬ったんですか。

そう思いつつ観察してみる。


ヨミの装備は胸当てと腕、脛に皮鎧を着けており腰に長剣を下げている。

髪は黒、首の後ろでひと括りにして流しているようだ。

整った顔をしておりマジかよこれと友人だったのかよと言いたくなる。

わあい、どきどきして来ましたよ?


とりあえず挨拶から。


「すまん、早めに着いたんだが」

「後少し遅れてたら斬ってたわよ?」

「恐ろしいんですけど。あと口調は一体……」

「ネット上だとね、女だってバレたら面倒なのよ?」

「ああ、確かに」

「それにウチのメンバーにあんたの事話したら見たいって言われてね」

「理由は?」

「『信用できる奴かどうか見極めてやる』って」

「でしょうね」

「まあ結果囲まれちゃったわけなんだけど」

「で、この状況で俺がやる事は?」

「先生の装備使っちゃっても良いから全部殲滅しなさい」

「アッハイ」


周りに100人くらい居るんですけど。

と言うかメンバーの容姿よくそこまで綺麗どころ揃えましたね。

周りからは「何、笑顔で応対だと!?」「なんだアイツなんでヨミさんは怒らないんだ!」「嘘だろあのヨミさんだぞ」「あの盾野郎許せねえ!」「それに俺ら全員倒すだって?」「盾職でそんなの出来るのか?」「刀持ってるし剣士職だろ」「それにしても笑うと可愛いなヨミさん…」「言ってる事物騒だけどな」「でもそれもまた良い…」


ギルドメンバーも不思議そうな目で俺の事を見て来ます。

恥ずかしい。


「で、何を賭けるんだ?」

「そうねー、私達に声をかけたかったらアンタを倒す事が条件って事にするわ」

「負けたら?」

「声かけオーケーになるわよ?」

「文字通り矢面か」

「そ。心苦しいけどね」

「何、チートが役立つならそれで良いよ」

「あ、それとカウンターだけで倒してくれると嬉しいかな」

「え?」

「職務投棄とか使ったら即バレよ?」

「あの、砦盾は…」

「籠手だけでお願い」

「無茶言いますね」

「アンタの防御力抜ける奴が居るとも思えないから言ってるの」

「はいはい。で、これからどうすれば良い?」

「サーチアンドデストロイ」

「凄まじく物騒だな……」

「そろそろストレス感じるレベルだからね」

「確かにこれは怖いな」

「でしょ?じゃあはい、ギルド申請」

「はいよ」


そう言って目の前に差し出されたギルド加入の表示メニューの申請をポチッと。

次にヨミが加入手続き。


≪ギルド『宵闇の森』に加入しました≫


「は?」「おい今アイツ加入申請してなかったか?」「え?男だろアイツ」「その他のメンバーも呆けてるが」「じゃあヨミさんの独断?マジか」「え、入ったのか盾野郎」「嘘だろ今までどれだけ言っても斬られ続けたのに…」「何やったんだアイツ」

見ればギルドメンバーも何人か「えっ」って言ってる。え?

ヨミさん他のメンバーに何も話してなかったんですか。

やべえよめっちゃ俺が睨まれてるよ。

今更デスネ。


「これからよろしくお願いします」

「じゃあタテヤ隊員に最初の命令をします」

「はっ、なんでしょうか隊長殿」

「ウチの可愛い女の子達にちょっかい掛ける馬鹿共を撃滅しなさい」

「カウンターだけでは?」

「貴方がバレても良い覚悟を持ってるなら使って欲しいわね」

「それじゃ数も多いし全力で行くよ」

「ありがと」

「終わってからまたメンバーさんには紹介お願い」

「はーい」


そう言って声を大にしてヨミが宣言する。


「ウチの可愛い子に声掛けたかったらこの壁倒しなさい!倒せたら声掛けしても良いわよ!」


一気に騒がしくなる広場。

「おい!アイツ倒せば公認だぞ!」「ああ、今言ったよな!アイツ倒せばって!」「あの壁壊しゃ良いんだな!」「よし!土木ギルド出番だぞ!」「ウィッス!」「ハンマー持って来いハンマー!」「アイツを倒してヨミさんに斬ってもらうんだ…」「それは今でも頼んだらやってくれるんじゃね?」「いや何よりもサラッとヨミさんと話した上にギルドに入ったアイツが許せねえ!」「ああ!許せないな!」「よっしゃ倒すぞ!」「「「オオ!」」」

ギルドメンバーは胡散臭そうな目で見ている。

すんません、見た目しょぼくてすんません。

籠手に道着に刀とか盾持ってても盾職に見えませんよね。


壁扱いですか。

間違っちゃいないけど。



さて、頑張りましょう。

勝てたらちょっと期待してますよ?

次回。

主人公無双編。


緑龍の加護と間接的に繋がっていた為ライアさんも強化されてました。

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