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23 加護と師匠と先生と

ツタの長さにも限界があるだろうと思ったけどそんな心配は要らなかったようだ。

移動して行く先々からツタが生えてきて俺の乗っているベッドを引っ張っていく。

上から見るときっと長い緑の線になっているだろう。

眺めていても仕方が無いので寝転がるとすっかり昇った陽の光が眩しい。

目を細めているとツタが伸びて繭状になり大分遮られたのでありがたく目を瞑る事にする。

森林浴?は気持ち良いなあ。


そうしてどれだけ経っただろうか。

動きは止まっており繭は開いていて自分が寝ていた事に気付く。

身体を起こすとそこは洞窟の終着点だろうかはたまた途中なのか部屋の様な形で存在していた。

中央には青々とした葉を茂らせた木が一本腰を曲げた状態で伸びておりそこに女性が一人座っている。

その横には何か威厳を感じる額に二本角の男性が立っている。

どこか清浄な空気を感じるのは木があるからだろうか。


こちらが少しでも身じろぎをすると男性の方が微かに動くのは女性の護衛なのだろう。

これは下手な動きをしたら死に戻りそうだ。

とりあえず籠手と大盾と刀は外しておこう。

さすがに道着は許してもらいたい。

こんな人達と話すのに布の服ズタボロバージョンで立ってはいけませんからね!

武装を外すと警戒を緩めてくれたのか男性の眉間から皺が少し取れる。

正解だったようだ。

とりあえずベッドに腰掛けていよう。


そうして無言で居ると女性の方から先に声を掛けられる。


『おはよう。良く眠れたかしら?』

「はい。心地よかったです」

『そう、それは良かったわ!私の術もまだまだ行けるじゃない!』

『アル様、色々話したい事もあるでしょうが今は呼び出した用件の方を』

『もー、ヤクは硬いのよ!』


なんでしょう。

ルーネ先生を思い出すんですが。


『じゃあ用件を言うわね』

「はい」

『森を守ってくれてありがとう!』

「はい」

『……』

「……」

『……』

「えっ、終わりですか?」

『アル様、それだと感謝しか伝えていません』

『ああ、そっか。じゃあこっちに来てくれるかしら』

「良いんですか?」


男性の方を見ると目で促してくれたので前に出る。

そうして女性の前まで言って片膝を付く拝謁姿勢を取って胸を手に当て言葉を待つ。

宮廷作法の片膝拝謁。知識だけでやってるけど大丈夫かな。


『ちょっと失礼するわね?』

「はい」


頭上に手を掲げられる。



あれちょっと待って数日前にこれと同じ光景見た事ある気が


≪【緑龍の加護】を授けられました≫



……。

…………。


また、エライもん増えたなあ。


『……アル様?』

『だってネルが気に入るなんて相当じゃない?』

『それでもいきなり渡すのはどうかと』

『……先に話しとかないとダメだった?』

『アル様。また見栄を張って対抗しようとしてませんか?』

『うぐぐ。あ、そうだ少年君!』

「あ、はい。なんでしょうか」

『ネルに会ったら私が会いたがってたって言っておいて!』

「わかりました」


多分ルーネ先生だろう。

見栄を張ってとか言ってたし。


『これで用件はおしまい!』

「はい」


終わり、かな?

そう思った所でヤク、と呼ばれた男性がこちらに頭を下げる。


『少年。今回の件は私からも礼を言う』

「はい」

『それじゃあまた会おうね!』

『では送ろう。もう一度寝て欲しい』

「わかりました」

『さすがにこの場所を知られる訳にもいかないのでな』

『ヤクは硬いわねえ』

『アル様や他の方々が自由過ぎるのです』

「では、お願いします」

『またね!』

『また機会があれば』

「では」


今度は光が差さないように繭がしまる。

その後唐突に睡魔が襲って来たので任せる事にする。

戻ったら師匠達に話す事が増えたなと思いつつ。



目を覚ますと湖のほとりに寝転がっていた。

日はそれなりに傾いているが湖の傍を歩いていれば師匠達の所まで辿り着くと思う。

横にはツタで編まれたベッドがそのまま置かれておりなんとなく持って帰る事にする。

決して安眠出来そうだからとか言う理由じゃありませんよ?

嘘です。ふかふかで丁度良かったんです。

爆睡してました。

さて、帰ろうか。

色々あったけど報告せねば終われないだろう。

……走ろう。急ごう。そうしよう。

ルーネさんにお礼を言わないといけないな。

勝てましたよと。


そうして岸を走る事数十分。

デカいよこの湖!

それでもようやく遠目からでもテントが見えてます。

師匠達もこちらに気付いた様でルーネ先生が飛び跳ねてる。

あれ何メートル垂直ジャンプで飛んでるんだろうか。


「戻ったか」

「おかえりなさい!どうだった!?」

「色々と話したい事がありまして」

「まず先に聞こう。熊は?」

「倒しました」

「うむ。なら良い」

「いやー、タテヤ君送り出してからその方角に大量のモンスターを感じてね?」

「助けに行こうかと思ったんじゃがどうにかなったようじゃな」

「ええ。色々、ありました……」

「それでまさか、とは思うが倒したのはお主か?」

「はい。全部、倒しました」

「すごーい!凄いじゃない!」

「あの、師匠達も気付いていたなら助けてくれても……」

「ワシも行こうかと思ったんじゃがルーネ師匠がの」

「元気そうだったから大丈夫ー!って言って止めたの!」

「凄い理由で放置されてた!?」

「何、昨日の様子を見ていた限りじゃといけそうじゃったしの」

「いやー、面白かったわね~、吠え声がする度モンスターがどんどん集まっていったのは」

「あ、それで今日は静かなんですね」

「まあまたしばらくすれば増えるじゃろうて」

「で、渡したアイテムはどうだったの?使ってくれた?」

「ああ、血ですか。ちゃんと使いましたよ。なんですかこの効果量」

「私だからね!」

「ルーネ師匠、わかっていないならそう言ってくだされ」

「い、良いじゃない使えるんだから!」

「それと刀を貰いました」

「刀?」

「それで腰に差した途端色が変わりまして」

「ルーネ師匠……」

「え、また私なの!?」

「攻撃力が無い代わりに即死効果が付いてます」

「またなんともエグイのう」

「さすが私!」

「あ、それと終わってからツタに包まれて連れて行かれた後の事なんですが」

「ツタとはなんじゃ」

「ツタ?……あっ」

「そこでアル様という方とヤクと呼ばれている方が居まして」

「ああ!アルちゃん!」

「『会いたがっている』と伝えろとの言葉と共に加護を貰いました」

「何?加護じゃと?」

「本当に緑龍の加護が付いてるわね」

「一体何をやらかしたんじゃ?」

「この辺一体のモンスターを一時的に壊滅させたんだと思います」

「思う?」

「戦っていた時間が長かったもので」

「そう言えばずっと音がしてたわね~」

「聞こえたんですか?」

「ワシには無理じゃ」

「その結果貰った加護なんですがこれどうすれば良いんですかね」

「貰っておきなさい!」

「貰っておくしかないじゃろう」

「ですよね」

「ま、予想外の報告も聞けたがこれで試練は終了じゃ」

「お疲れ様!」

「はい!」

「明日には町に出ても良いが出る前に少しだけ時間を貰うぞ」

「はい。大丈夫です」

「よし。夕食にするかの」

「どうやって戦ったのか聞かせてね!」

「わかりました」


その日の夕食は少し豪華になった。

そして今日の戦いぶりを頑張って再現して話し続けた。

静かなる怒れる熊が出たのは久々だったようで師匠も驚いていた。

先生は大盾の話をすると「ちゃんと守れてるのね」と笑っていた。

何はともあれ試練も終了。

明日からは町デビューが出来そうだ。


決して田舎者の都会デビューとか思ってませんよ?

思ってませんからね?



今日は疲れた。ログアウトしましょう。

ふかふかベッドにいざダイブ!

エライもんが増えました(パート4

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