22 報酬と加護とツタ
え、あれ?イベント?イベントって何?
名前からして運営イベントだとは思うけどさ!
え、何、何が起こってたの!?
あ、とりあえずイベント概要を見よう!
見れると良いな!
そうして大量の通知に混乱しながらも今の戦闘が何であったかを知った俺は叫んだ。
「適当に歩いたらイベントマップってそりゃないでしょーに!」
そうやって混乱していると目の前に白く光るドアが表れその中から女性が出て来た。
キャラ作成の時に会ったあの美人秘書さんとは別のお方だ。
銀髪ロングの碧眼少女風。しかも背中に翼付き。
おお、おお!
周りを見回し俺しか居ない事を確認してから丁寧に一礼される。慌てて返礼。
『イベントクリアおめでとうございます!』
「はい」
『他の参加者の方は何処に居られますか?』
「居ません」
『えっ?』
「俺一人です」
『どう言った理由でそうなったのか、聞いても?』
「歩く方角を間違えました」
『……えっと、どう言う事でしょうか?』
「簡単に話すと師匠達に熊を狩って来いと言われて送り出されて歩いたらイベントマップでした」
『師匠達?』
「ダンガロフ師匠とルーネ先生です」
『それはもしかして今湖畔に居られるお二人でしょうか?』
「はい」
『あの二人は今回のイベントのお助けキャラになる予定だったのですが』
「お助けキャラ?」
『はい。熊達に対しての手助けをして下さる様になっていました』
「手助け?あ、まさか」
『何か心当たりでも?』
「えっと、俺のステータスと装備とスキルってそっちから見えますか?」
『確認致します。……これは一体』
「多分手助けされた結果なんじゃないかなと」
『確かにこれだけのモノがあれば善戦は出来たと思われますが…』
「勝てるとは言い切れ無いんですね」
『その為の物量でしたから。一番変異しているのはその盾です』
「やっぱり」
『それとスキル【職務投棄】自体もユニークスキルと言うべきものですね』
「おかしいんですか?」
『……効果を考えて下さい。攻撃力が0な事で防御力に大半のリソースを避いていたのにそれが全て火力になるんですよ?』
「おかしかったです。はい」
『それにこれらのモノがあっても扱いきれる貴方も中々だと思いますよ』
「結構ステータスでゴリ押したと思うんですけど」
『それでも工夫するのは本人次第ですから』
「はあ」
『それにしても今回のイベントクリア報酬はレア装備だったのですが』
「要りませんよね、しばらくは」
『こちらとしても今付けられている神話装備をこれ以上強化するのもどうかと思いまして』
「やっぱり神話クラスだったんですね」
『はい。一応は鎧などがありますが』
「うーん、要らないです」
『そうなると武器となりますが』
「どんなのがありますか?」
『刀剣類、打撃類、投擲系、射出系、魔法系の物から一つ選択してもらいます』
「俺が使えそうなのってありますか?」
『一つ釣り合いそうなユニーク武装がありますね。いえ、貴方だから使えそうと言えますか』
「おお、どんなのですか?」
『攻撃力は0なのですが「なんでも切れる剣」と言う刀です』
「はい?」
『効果は実際にお試し下さい』
「は、はあ……。じゃあ、それにします」
『是非ご活用下さい』
「それで報酬関連はこれで終わりですか?」
『完了となります。それと一つ強制では無いのですが』
「なんでしょう」
『今後の運営の為にタテヤ様の行動ログを参照しても良いでしょうか』
「別に構いませんよ」
『ご協力ありがとうございます。それと戦闘を録画した物をお渡ししておきます』
「はい、ありがとうございます」
『では最後にこの戦闘のモンスターからのドロップ品を全てお渡しします』
「えっ」
『激昂兎の毛皮254歯276肉345、激昂狼の毛皮126牙140爪320肉42、トレントの原木123、
アントの甲殻204、激昂熊の毛皮8爪9、激昂角兎の角14、角狼の牙9、角熊の毛皮が1となります』
「え、そんなに倒してたんですか」
『幾つかは同時ドロップも含まれますが倒した数はこれより多いですね』
「うげぇ…」
『戦闘詳細は公式ページにも載せられますのでそちらの方でご確認下さい』
「あっ、はい」
『それでは改めましてイベントクリアおめでとうございます』
「はい」
『今後とも『インフィニティ・サクセス・オンライン』をお楽しみ下さい』
そう言って優雅に一礼をした後AIさんは去っていった。
残された俺の手には一振りの刀。
うっひょー!日本刀風味じゃないですかヤッター!
さてステータスは。
なんでも切れる剣 品質B レア度4
何かで作られた刀
切れ味は鋭い
攻撃力+0
自己修復【大】
あれ?
自己修復が凄いだけで後は頑丈とかそう言うのなのか?
それと柄も刀身も鞘も真っ白なんだけどある事を思い出すのは気のせいですかね?
深くは考えない事にしましょう。
さて左腰の帯の隙間に差し込んで…っと。
≪古代龍の加護を確認≫
≪なんでも切れる剣の能力が解放されました≫
≪何でも切れる剣が改名され古代龍の刀となります≫
え?
慌てて確認すると真っ白だった刀は柄と鞘に青で流水が描かれ、鍔は雲の形にその装飾を変えて行く。
刀身は波紋を残して鋼色に変わって行き波紋の形に残った以外は白の面影は見えなくなった。
そしてステータスにも変化が。
古代龍の刀 品質XX レア度XX
古代龍の牙で作られた刀
装備者の敵を切り裂き続ける
攻撃力+0
new!自己修復【特大】new!即死【特大】
また先生の加護がハッスルしたようです。
マジですか。
そうやってまた半笑いで佇んで居ると何かに掴まれる感触。
俺の身体を包み込む何か。
「なんだ!?……ツタ?」
首から下を残してツタが絡まっていました。
敵襲か!と思い身体を動かそうとするも動けない。
そして困惑しつつも冷静さを感じさせる原因に気付いた。
「あれ?カウンターが発動してない…」
トレントのツタに絡まれた時は発動していた物が発動していない。
と言う事は敵意は無いのだろうと信じたい。
そう考えている内に何処かに連れて行こうとする動き。
「とりあえず流されてみよう」
疲れた身体を休ませるかの如くベッド上になったツタに持たれかかりつつしばし不思議な旅を楽しむ事にした。
これで町に行けると思いつつ。
先生の加護が効き過ぎて怖い。




