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師匠の指示通りに狂魔結晶を倒し、闘技場に叩きこんでからしばし。
降りて来た師匠と先生に話を聞くことにする。
「なんで最後あの場所に降ろす事になったんですか?」
「ルーネ師匠がの、何かイラっとすると言ってな……」
「なんとなーく、なんとなーくよ?上の陣との繋がりがある気がしたのよね~」
若干スッキリした顔でニコニコしながら先生がそう言えば、直前に指示された場所に走る羽目になった師匠がため息を吐きつつも装備を再度整え出していた。
どうやらまだ終わっていないらしい。
「まあ確かに最後の悲鳴とかおかしかったですもんね」
「隠ぺいに関しては完璧だった筈じゃがの、ルーネ師匠の勘にはなあ……」
「自分がした事を最前列で見たいと思ったのが運の尽きよねー、多分」
自分はと言えばさっきの無理が祟ったのか龍化が強制解除されている。
まあ大一番も越えただろうし後はいつも通りで大丈夫だろう。
「ちなみに離れられ過ぎてた時はどうしました?」
「勘で追いかけるけど」
「ええ……?」
「タテヤ、ルーネ師匠は大体勘じゃぞ」
「それは確信では……?」
先生に更に恐れを抱きつつもこちらの様子を見てか、イベント終了の告知が無いのを見てか周囲のプレイヤー達も再度準備を行っていき、そしてその時が訪れた。
先程叩きこまれた魔結晶の下の瓦礫が震えだし、震え続け、そして遂には爆発した。
『一度ならず二度までも……、許さんぞキサマラァァァァァァ!!!』
「で、次がアレですか」
「アレじゃの」
「アレね~」
明らかにズタボロになった服を着替えたのだろう、生身は土で汚れつつも服は綺麗な魔族の男がそこから飛び出して来た際に思った事は自分からしてみればシンプルなものだった。
明らかにキレている先生を前に彼は果たして朝日を拝めるのだろうか?と。
しかし彼は思った以上にしぶとく、傲慢で、そして準備を怠っていなかったらしい。
『重ね重ねの我が身への愚弄、抵抗、攻撃全てを許さんぞ!』
『こうまで足掻くキサマラには相応しいモノをくれてやろう!』
『殻を砕くのにも苦労したキサマラには丁度良いおもちゃをくれてやる!』
彼がそう言って手をかざした先、先程砕いた鋼岩の塊と魔結晶に光が宿り始め、そしていくつかの事が瞬時に起こり始めた。
魔結晶の体積が減っていく毎に戦場に極端な変化が訪れる。
まず一割が減ると、上空の巨大転送陣に再度光が集まり始め。
ついで二割が減れば、闘技場を含めた周囲一帯から大量に魔物が出現し。
三割が消えたかと思えば、男から都市全域に広がる勢いの黒い波動が撒き散らされ。
残った四割全てが消えたかと思うと鋼岩と周囲の建材を巻き込んで。
『ゴォォォォォォォォン!!!!!』
二足二腕の超巨大ゴーレムが目の前に君臨した。
『抵抗はあったようだが俺は終わらない!終わらん!』
『終わるのであればキサマラも道連れにしてやる!!!』
『アーッハッハッハッハッハッ!!!!』
「「「はぁぁぁぁぁぁ!?」」」
思った以上に派手な絶望感が降ってきて。
今日と言う日はまだまだ終わらないらしい。
●
時間は数舜前に遡る。
男が動き出した瞬間、ルーネとダンガロフは即断で動き出していた。
いや実際には動こうとしていた所をルーネがダンガロフを背中に庇う立ち位置に入り、目の前に到達する瞬間の黒い波動を掴んだかと思うとそれを抱きしめるかのように引っ張り、自分の体に取り込み始めた。
如何なる原理かそのままだと都市全域に撒き散らされていた黒い波動を己の身に叩きこみ続けていく。
「ルーネ師匠!?」
「ダンはそのまま待機!!!」
「なぜっ……、これは!?レベルダウン!?」
「そ!」
その言葉を示すようにルーネに庇われているダンガロフ以外は皆デバフの影響か動きが鈍くなっていく。
恐らくは赤子か子供並に、もしくはレベル1にまで落とされているかも知れない。
それを横目に見つつもルーネがこれの大半を引き受けて、かつ干渉しているからこそ、闘技場の外にまでは広がり切らないだろうと言うのが目に見え始めた。
「師匠!この後は如何様に!」
「守りなさい!」
「承知!」
そのやり取りが終わる頃にはダンガロフはルーネを守るように自身が使える最上級の結界を張り、ルーネが座り込むのを見てから、唐突に訪れた修羅場に対して自身が介入すべき戦場を見極めようとした。その矢先。
ゴッガァァァァァァンンン!!!!!!!!!
と言う凄まじい音と共に超巨大ゴーレムが都市外に飛んで行く様子を目にしてしまい。
「なんじゃぁ!?」
「タテヤ君ったらまだまだ元気ねー!」
ゴーレムが立っていた足元に、拳を振り上げた弟子の姿をそこに見た。
その身体に黒いモヤを纏わりつかせたままに立っている弟子の姿を。
●
一瞬の内にこちらが負けそうなぐらいのモノがお出しされてしまった。
転送陣、魔物召喚、レベルダウンデバフ、超巨大ゴーレム。あと魔族。
ルーネ先生がダンガロフ師匠だけは守ってくれたが自分を含めたプレイヤー達はそうもいかず。
周りから聞こえてくる声も悲鳴ばかり。
次の瞬間には敵が動き出しており、そして蹂躙され始めようとしていた。
それでも。
「レベル1だろうとスキルは残ってるぞー!」
「盾持ちナメんな!」
「あの馬鹿げた精度は無理だが俺たちもやれるんだよ!」
今まさに魔物の大群に飲み込まれかけたプレイヤー達はそれでも抗っていた。
強制的なレベルダウンによって大幅な戦力ダウンをしたとしてもそこは歴戦のプレイヤー達。
前衛、中衛、後衛。
前衛が防波堤を作り、中衛がそれを支え、後衛が火力を出す。
レベル差を強制的につけられようともそれは諦める理由にはならなかったらしい。
実際にはヤケクソ気味な叫び声ばかりが聞こえてくるが、皆エンジョイしているようで何よりだと思う。
魔族に関しては先程の無理が祟ったのか一旦動けないようで、後ろのガチギレ万全状態なダンガロフ師匠と睨み合っている。
ただそれでもニヤケ面が収まらないようで、超巨大ゴーレムを賛美するように両手を広げて高笑いをし始め、それと同時に超巨大ゴーレムが動き出した。
先程の投下時にへばり付いていた素材をほぼ全て使った全長は百数十メートル程もあり、単純な打撃と踏みつぶしだけでプレイヤー達や地形に甚大な被害が及ぶ事は想像に難くない。
そして実際にゴーレムが拳を振り上げ、振り下ろそうとしているその真下で。
レベル1な自分は待ち構えて。
迫りくる超質量を前に呟きながら拳を叩き込んだ。
「ルーネ先生の矢の方が速いんだよなあ……」
ゴッガァァァァァァンンン!!!!!!!!!
『ゴォォォッォォォォォ!?!?!?!?!?』
カウンターによって盛大に宙を舞い、都市の外に見た目はゆっくり飛んで行くゴーレムを見つつ。
どう追いつこうか考えているとドバシャァァァン!!!と言う落雷音が真横に落ちると同時、トドロキが現れたかと思えばその身に赤黒い放電を纏わせながら魔族の男を睨むように横に並んできた。
どうやら都市外部から何かを察知してやって来てくれたらしい。
「トドロキ?」
「ガァッ!」
こちらを一瞬見た後は再度魔族の男を睨んでいたトドロキだったが。
「ちょっと頼みがあるんだが」
「ガァ?」
自分はアイツを噛み殺したいと言った様子のトドロキには悪いが。
「ちょっとアレの落下地点まで運んでくれないか?」
「ガァ?…………? !?!?!?!?!?」
今まさに空を飛んで行く超巨大ゴーレムを見てしまい絶句しているが。
「自分がアレを相手してれば皆が楽になると思ってな」
『『『すいませんよろしくお願いします!!!』』』
「な?」
「ガ、ガァ……」
すっごい嫌そうな顔をした後に背中に乗せてくれた。




