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2-39 『すまん助けて』

上空に見える特大級の発動陣全体が一際輝き、遂に落下物が見え始めてから少し。

見ている者達は皆一様に同じ疑問を抱いていた。


なんかやけに光り輝いてない?

と。


自分も光を乱反射しまくっていてギラギラ輝いている上の物体に対して嫌でも身についた感覚がそれを本当だと言い聞かせてくる。

あの表面思いっきり鉱物じゃない?


「タテヤくーん!」

「なんでしょーかー!?」

「そう言えば伝え忘れてたんだけどー!」

「なんですかあー!?」


上の方からルーネ先生の大声。

他のプレイヤー達もなんだなんだと聞き耳を立てる中、先生は大声で情報を叩きつけてくる。


「さっきのよりも外側が数段硬いから気を付けてねー!」

「えー!?」

「後はそこの人達にも協力してもらわないとマズイかもー!」

「えええええええええ!?」


このタイミングでぇー!?


後で知る事になるのだが先生が数段硬いと言ったそれは今のプレイヤー達が触れる鉱石類と比較するとおよそ数十倍以上硬かった。



闘技場一般観客席。

ジト目のまま空を見上げるヨミにアリスが話しかける。


「ヨミ姉、更に凄い理不尽が降って来たけどあれも予習済みだったりする?」

「流石に知らないわよ……」

「だよね……」


頭上。

まだ高度差があるのと加減速においては減速になっているらしく割とゆっくりと降りてくるそれを見ながら先ほど新たに告知されたイベントの概要欄を読み上げる。


「『次なる脅威!降り注ぐ破滅を阻止せよ!』とは書いてるけどこれタテ兄と師匠さん達がほぼどうにかしてるから私達の出番ってあるの?」

「さあ?」

「それとイベントの進捗的にまだまだありそうだけど」

「さあ?」

「あの……ヨミ姉?」

「なにかしら」

「その手元に来てるメッセージ、読まないの?」


ヨミの手元、タテヤから届いているメッセージ。


タイトルは『すまん助けて』


「読んでも読まなくても後でわかるから良いのよ」

「ええ……?」


たぶんアイツはなんとかするのだ。

なんとかする筈。

なんとかするわよね?


……。


一応読んでおこうかしら。


『中身魔結晶、外めっちゃ硬い金属、へるぷみー』

「あのアホっっっっ!!!」


その瞬間ヨミは闘技場内の全員を動員する事を一瞬で判断した。



先生達や魔族の少女の減速のお陰で地表まではもうしばらく掛かるものの、それでも降ってくるモノの恐ろしさがだんだんと分かってきた。

まず表面が鉱石の光り方をしつつも見える範囲全てが蒼い。

しかも先生が言っていた通りに硬いらしく遠距離攻撃が効いているようには見えず、多種多様な攻撃がぶつけられつつもその輝きを落とすこと無くひたすら落下を継続していた。


そして視界がそろそろ埋まり始め、闘技場の直上ほどに来た頃から外に破片を出さない形に先生の結界が張られ始め、ついで他のプレイヤー達の攻撃もますます苛烈になっていった。

それでも硬く、削れず、割れず、ただただ落ちてくる。

速度自体はゆっくりな分より強烈に悪意と絶望を叩きつけようとしてくる。

そして魔族が馬鹿笑いしている。


それら全てを見聞きしつつも上の先生達の方を見上げてみる。

普通に先生と目が合い、声が飛んで来た。


「全部は無理そうだったらそっちで割っても良いわよー!」

「いいんですかぁー!?」

「たぶん中よりも先に外が全部砕けると思うー!」

「わかりましたぁー!」


とかなんとか言っていたら視界の端を見覚えのある直剣が飛んで行き、爆音と共に大きく外殻が剥がれ落ちて行っていた。

でも落下先はギリギリ観客席だったので阿鼻叫喚の地獄絵図になっているようで。

ウチの面々も楽しそうにしている。


「ツルギぃ!割るならバランスよくやりなさい!」

「じゃあ今度は右側ね」

「ヨミさんヨミさん!落ちた側の人達から怨嗟の声が!」

「今は非常時なんだから気にしない!」

『えー!?』

「了解したわ」


剥がれ落ちるペースが速くなった。


そして反対側。


先生がえいっ♪えいっ♪と鋼球を投げるたびに外殻が轟音と共に削れ落ちているのを見てしまい、狂乱と畏怖と信仰が芽生え始めたプレイヤー達と結界を維持しつつそんな事をしているのを見て発狂しかけている魔族の少女の姿があった。

そしてそれを複雑そうな顔で見ながら無言で構え終えた師匠の姿もあった。


そんなこんなで僅か数十秒の間に思った以上に削られ、ところどころ内部が見え始めたそれが目の前に到達した所で自分の出番が始まる。


自分までもうあと十数秒も無いだろう落下してくるそれを見ながらスキルを発動していく。

龍化、ガード3、フォートレス2、地足根張、ジャストガード、5倍返し。

ついで装備も確認。

籠手、道着、大盾、祝いの首飾り。


さて。


「やるかあ」


まずは邪魔な殻を砕く所から。



よーい、しょっと。



『アーッハッハッハッハッハッハッー!!!』


魔族の男は笑いが収まらず、全てを嘲笑い続けていた。

遂に、遂に、遂に、遂に!

この地が崩壊していく様が見られるのだから!

羽虫よりも醜き人けら如きが足掻こうなどと高望み過ぎたのだ。

先の一発は憎き憎き憎き聖女が押し留めたが今度はそうは行っていない。

現に今も勢いを止められず、殻を剥がす事すら苦労しているのだから。

ゆえにコレで終わりだ、終わりになるのだ。

笑わずにはいられない。

笑うしかない。

この笑いが止まるわけも無い。

これが止まるのならばそれはもう。


『よーい、しょっと』


着弾する寸前、殻の全てが破壊され。

中身が無傷で静止したのを見た瞬間だろう。


『ハハハハハハハハア、アアアアアアアア!?!?!?!?!?』


「タテヤァ!こっちに降ろせぇ!」

「わかりましたぁー!」


そしてこの男が知らない事ではあったが。

女の勘は恐ろしい物である。


数秒後、男の隠れ家は上部から崩壊した。

上から叩きこまれてくる魔結晶の光と共に。



殻を砕いた直後からはや数秒間。

「んんんんんっぎぎぎぎぎぎぎぎぎががががあああっがあああああ!!」

中身の魔結晶を抱えたまま自分は耐えていた。


重い。重い。ただ重い。

スリップダメージも入り続けている。

龍化でステータスが爆増している上でコレなので取ってなかったら潰れてるな?

おまけに着弾時に殻をなんとかしたのでそれの落下音と轟音と自分の中から軋み続ける何かの音で耳がほぼ聞こえなくなっている。


このままだと師匠達の合図も何も聞こえないなと思った所で目の前の砂嵐が爆風で切り裂かれ。

砕け散った剣を風に散らすツルギさんと必死の形相でどこかを指し示すヨミの姿が見え。


「タテヤァ!こっちに降ろせぇ!」

「わかりましたぁー!」


疑問を一瞬覚えつつも『何故か』予定とは違う方角に立っていたダンガロフ師匠の居る方向に持っているモノを押し込んでいけば。

闘技場の一角が崩壊しつつそこから多種多様な悲鳴が聞こえて来た。


『ギャアアアアアアアアアアアアアアアアア!?!?!?』


一つ多くない?




『蒼魔鋼岩』

鉄鉱石が魔力を含み変化した魔鋼石が更に押し固められ、魔鋼岩になった上に更に圧縮され全体に魔力が馴染み切ったもの。

加工難度が高く、出来る者は年を重ね技術を重ね続けた一握りの職人のみと言われている。

加工さえ出来れば凄まじい魔力伝導率と保持力を持つため、握りこぶし程度のサイズでも凄まじい高値で取引されている。


自分が読みたくなりました。

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