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2-36 山砕き

時たま更新して行ければと思います。

一旦は二部の完走を目的に。

相変わらず即興です。

VIP席にて。

多くの同情的な視線に晒され、疲れた表情をした魔族の少女に話しかける。


「もしかすると同位置に二発目が来るかも知れない……ですか」

「そう。私には一発としか知らされていなかったけれどアイツならやりかねない」

「お知り合いで?」

「非常に不本意ながら同世代かつ同コミュニティに属している存在」

「あ、同じ村とか同じ街みたいな」

「同意する」


少女はそう言い切ると目の前に用意された飲み物をグイっと飲み干し溜息一つ。


「そして私が内部監視役として見張っていた集団のリーダーが今演説をしていた」

「あー……、お疲れ様です」

「ありがとう」

「それで二発目と言うのは実際あり得るんでしょうか」

「理論上は幾らでも、ただ当人の魔量として即座には一発が限度だろうと予測を立てた」

「えーっと?」


少女の説明によると送り先を指定して軍団や物資を転送する手段はあるらしく、それの応用として山を転送してくる手筈になっているらしい。

今回の場合一発目は事前に貯めておいた分で転送し、二発目は自分の力で呼び出すかもしれない、と言った説明。

流石にクレーターとは行かなくてもある程度の高度から山が直撃した場合都市が崩壊するし地盤もえらい事になるのは確実で、ただルーネ先生やダンガロフ師匠であれば、多くのリソースと時間を使えばほぼ無被害に抑える事も出来るみたいです。

今回の場合は結界で受け止めた上で、頂点に意図的に開けられた穴から殴り丸ごと粉砕しようと言った雑な仕組みである。

でも少女が今言ったようにすぐに二発目があった場合に即座に再展開するのが難しいらしく、二回とも使いやすい対処法として自分が選ばれたらしい。

一応二発目に結界が間に合わなかった際でも砕くのは最優先としてその後の被害については各方面に了承を得てもらった。


「つまり自分なら殴るだけで良いから適任って事ですか」

「そーなるわねー」

「ルーネ師匠にはあの陣に直接手を出していない条件を守った上で、都市を守る為に力を振り絞ったフリもしてもらうつもりじゃから、まあお主はいつも通り殴ればそれで良い」

「いつも通り、ですか」


そうじゃ、そうよ、と言う師匠達。

そしていつも何をやっているのか疑問に思うような表情をしている少女と重鎮たち。


「そうそう!それとね?」

「なんでしょう」

「私の矢を避けれたんだから動いてる山くらい楽勝よ!」

「殴り損ねたらまた走馬灯を見せるって言ってます?」

「ルーネ師匠?」

「違うわよー?」


だけどまあ流石に私達の弟子が情けない動きするわけ無いわよね?

とにっこり笑顔で言われれば弟子は頑張らざるを得ないわけで。


山。殴るか。





色々と言いたい事考えたい事も多かったものの意識を切り替える。


山を殴るまでのお膳立ては師匠達が整えてくれるとしても。

一番の問題点。


自分に『山が直撃する』瞬間にカウンターしないといけないんだよなあ……。


いやまあ最初に山を一回受け止めてくれるんだから楽勝にこなさないと後で修行が過酷になるのは間違いないし、今更見てわかる程度の速度しか持たないモノにカウンターを仕損じる程スキルに慣れてないわけでも無いけれども。

それでも不安は不安なのである。


タテヤ:と言う訳で山を殴る事になった自分に対して一言

ヨミ:上のアレ?

タテヤ:そうそう

ヨミ:召喚?

タテヤ:転送系

ヨミ:後で?

タテヤ:後で

ヨミ:そ。じゃあさっさと砕きなさい

タテヤ:うい

一同:『ええ……?』


あ、そうだ。


タテヤ:手順なんだけど砕いた後は都市の外壁の周りに落とすから

ツルギ:あら、急がないと生き埋めね

ケンヤ:先輩!?

ミカ:私たちまだ外に居るんですけどー!

タテヤ:まあ異邦人なら埋められても問題無いだろって先生が言ってた

コノハナ:理不尽の極みでは?

アリス:でも一理はある

アリサ:道理はないけどね


皆なんだかんだ言いつつ諦めて受け止めてくれているようで何より。

あ、言い忘れてた。


タテヤ:あとさっきは言ってなかったけど二発目も可能性としてあるらしい


ヨミ:は?

一同:『え?』


タテヤ:一発目は事前準備、二発目はなんか相手が顔真っ赤になったらあるらしい

ヨミ:具体的には?

タテヤ:僕の計画はサブプランまで完璧だった系

ヨミ:全部失敗したら一騎討ち挑んで来そうね……

タテヤ:その際は先生が一発ぶん殴るらしい

ヨミ:塵は残りそう?

タテヤ:原型も残してくれるとは思う


原型は残ると思う。

性格は知らない。


タテヤ:つまりなるようになれって感じだな

アリス:それを言えるのタテ兄だけだと思うよ?


そうかな?





もうじき時間だと言う事で移動した、闘技場に一枚残った試合盤の上。

軽く準備運動などしつつ、そこで自分は空を仰いでいた。


雲一つない晴れた空に特大の邪魔モノがある。

一見では解らない程巨大な何かの記号や記述が描かれた発動陣が宙に浮いていた。

それは時間が経つと共に線に光を増していき、今や最高潮に達しようとしていた。


そして開幕の宣言が響き渡る。


『愚かなる龍よ、これが我らの反撃の一歩目だ……!』


言葉と同時、発動陣の中央に変化が見られ始める。

点が見え、染みになり、円に変わり、地肌が見え、そして。


『超特大級の岩塊』が落ちてくる事が確認出来た。


ええ……?


上の方のVIP席付近から声が聞こえる。


「ごめーんタテヤくーん!」

「なんですかルーネ先生ー!」

「さっきの子が言い忘れてた事があったってー!」

「なんですかー!?」

「そう言えばあっちの大陸だと山って言うと大半あんな感じなんだってー!」

「わかりましたぁー!!」


キレそうー!!!


しかもアレ直撃したら絶対クレーターになるタイプの形状してるし!

なんかやらかした魔族がさっきから煽りと爆笑で余計にイラつくし!

それに何より!


「失敗して今後の修行内容で岩山カチ割りメニューが増えたらどうしてくれる!?」

「アンタがキレる所そこなの?」


唐突に。

横からいつも通りのツッコミが入ってくる。


「ん?」

「何よ?」


思わずそちらを見てみればややくたびれた表情でヨミや他のメンバーも揃っていた。

他のプレイヤー達は各々都市内外に逃げたようでここにはいつもの面子ぐらいしかいない。

後でボス戦があったら集まっては来るみたいらしいが。


「いつの間に?」

「ちょっと前に大体の掃討が出来たからいい機会だし見学ツアー組んでみたの」

「見学ツアー」

「中々見れないわよねー」

「いやまあそりゃあ中々見ないとは思うけど……」


そう喋っている間もみるみる巨大になって行く上空の光景。

近付き過ぎれば逆に距離感が狂いだす緊張感も出てくるがそこは先生の技量を信じたい。


「失敗したら消し飛ぶんだけどなあ」

「それもまた一興でしょう」

「そう言うもんか」

「そう言うもんよ」


都市上空に白色の結界が張られだす。

岩塊は既に視界の中に納まらず、自分の視点だと景色の解像度が上がり続けているだけ。

やがて白の色が眼前を覆いつくし、暫くしてから岩塊が一瞬止まった。


数秒後。


激音。


何を言えば良いのかわからない勢いで衝撃波と音が直上から叩きつけられ、しかもそれが鳴りやまないまま音量を上げ続けている。

一音目で都市に砂煙がもうもうと立ち込め、幾らかの建物は崩壊を始めている。

以降の音はまだ聞き分けが出来るものの硬質なモノ同士が削り合う音が多重化し過ぎて不協和音を奏でているかの如く鳴り響き続けている。


そんな中でも声が届く。


「そろそろ送るわよー!」

「わかりましたぁー!」


こんな最中でも声は響く。


「やっかましいからさっさと黙らせなさい!」


了解。


眼前に見えたそれに対していつも通りのアッパーを叩き込む。

踏み込み。腰を回して。力を通しつつ。インパクトの瞬間。


拳を握る。


快音。



澄み渡った音がした直後、とんでもない爆音と共に闘技場の床を転がされる事になった。

どうやら爆散させた際に至近距離から衝撃を貰ったらしい。



き、聞いてない……。

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