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2-30 四十七日目

遅くなりました。

本戦当日。

ゴンガンバンゴンズギャンバギャン!!!と戦闘音が鳴り響く闘技場。

階段状の客席が闘技台を取り囲む様に作られており、自分はその最上段に居る。


「いやー、やっぱり派手なのは良いわねっ!」

「ルーネ師匠、『参加するとか言い出しませんよね……!?』と涙目で関係者が見ているので身を乗り出すのはやめて頂けますかの」

「えー?」

「不測の事態が起こった場合はお止めしませんので……」

「わかったわよーぅ。それにしても二日で256人から優勝者決定って大変よね」

「一日目で4分の1、64人まで減らすそうです」

「8人一組で32試合、それぞれ上位二名ずつ進出、ねぇ?」

「一気に減らす為と戦略性を作り出す為と聞いております」

「二日で纏めないといけない理由としては?」

「……参加者の都合だそうですな」

「へぇー……?」


左隣では師匠と先生が座り酒と食事を嗜みながら談笑中。

師匠はどうやって気付いたんだろうと思いつつも確かに参加者の都合です。

こっちに寄りかかって目を合わせようとして来る先生が若干怖い。

身隠しの仮面付けてるのにどうやって視線の先を判別してるんですかね……。


「この度は快く来て下さった事、甚く感謝する」

「今回に関しては其方が原因では無いのだからそう気張らなくても良い」

「いやしかし、それでは……」

「今日は両国の友好を示す親善試合、それを見る為に我等はここにおる、じゃろ?」

「それはそうですが……」

「それに前提が間違っておるぞ?」

「は、はぁ……?それは一体」

「『ワシ自身は貴国の内情を聞いていない』、意味が解るな?」

「単に『国家間親善試合の招待客』として扱えと……?」

「まあそうなるのう」

「……。では『この度は国家間親善試合の提案を受けて下さった事、感謝しています』」

「うむ。『これによる両国の交遊が深くなる事を願って』見るとするかの」


右隣ではゴルドラン王がバルガロフさんに挨拶と言う名の謝罪中。

内容としては色々ひっくるめての謝罪をしてるゴルドラン王に対して今回の来訪は先生の無茶振りで発生したとバルガロフさんが返している形。

激昂の森で喋っていた事は本当だろうから表向きには気を遣って何も知らない事にしたらしい。

一般市民が深く聞いちゃいけない会話をしてる気がします。

なんでこの二組に挟まれてるんだろう……。


「自分は明日の試合まで自由行動だと思ってたんですけど……」

「客将身分、と言うのが妙手じゃの。お主も歓待する口実になっておる」

「あれ、師匠。先生は何処行ったんですか」

「遠くからではよく見えんと審判達の横に行った」

「え……?」


慌てて窓に近寄り目を凝らしてみればあちこちを飛び回る先生の姿。

この距離でも視線に気付いて手を振ってくるのがまた凄まじい。

隣で閑談中の王達も気付いたようで慌てて立ち横に来た。


「あの御方は、また……」

「ダンよ、あれはどう見る?」

「おおかた反則などが起きておった場合の宣言役だと思うが」

「気付く、と?」

「龍の知覚でか?」


ゴルドラン王が問えば師匠は気まずそうに顔を逸らした。

あ、これはもしかして。


「龍が身に付けた人の技、ですかなぁ……」

「ダンよ、まさかとは思うが教えたのは貴様では無かろうな?」

「……うむ」

「おい、……おい!」

「ワシだけでは無いが、まあ、同じ事か……」

「それもまたシャレにならんな……!」


二人のやり取りを聞かされていたゴルドラン王を見る。

目線は遠くの空に合わされたまま半ば意識を飛ばしている様だった。


「……あぁ」

「……?」

「……タテヤ君」

「は、はい。なんでしょう?」

「我が国の未来を救ってくれた事を後世に語り継いでも良いだろうか」

「えぇ……?」


どうしようか。





256人を32組に分けて上位二名ずつがトーナメントに進出する為に戦う。

一試合は15分、間に5分を挟み執り行われる。

組み分けはランダムに八名ずつ割り振られる為に時にはこう言う事も起きる。

数十メートル四方の石床で出来た闘技台の上、ヨミは溜め息を吐く。

正確には隣に立つ女性に向けて。


「……ツルギさんとはトーナメントで戦うとばかり思ってたんですが」

「昨日の敵は今日も変わらず敵だけど今は味方にしない?」

「そうしないとダメっぽいですね……!」


アイツと同じくらいの身長の黒髪の美人。

腰に剣を刷き、重要部位に革鎧を付けた冒険者スタイル。

ここまで普通なのも珍しい。


加えて大事な情報がもう一つ。

彼女は昨日まで『首狩り』と呼ばれていた。

そして自分が昨日倒し損ねた相手でもある。


二人が相対する先、開始直後から相談を始めていた六人が居る。

彼らも256人の中に入れる程には実力があるのだがそれでも困惑を隠せていない。


「『首狩り』と『鬼嫁』が組むとかマジかっ……!?」

「いやしかし六人で掛かれば!」

「あの二人一対多の戦闘シーン動画大量に挙がってるけど?」

「いやだが仲違いと言う希望も……!」

「遠距離で詰めればいけそうじゃないか?」

「じゃあこの『火球狂い』がここで散ってみせようじゃないか!」

「「「「「マジか!!!」」」」」


そう言う事になった。


そして数分後。


「盾。二段」

「はい、はいっと!」

「壁。続けて発破」

「発破って大分無茶言うわよねぇっ!」


2対6、お互いに砲台役を置いて周囲がそれのサポートをする図式。

あちらは火球狂いと言っている魔法使いをメインに5人が牽制兼足止めを狙ってくる。

相方は的確な指示を単語で出して来るものの回数の頻度が高くなって来ている。

ヨミは目の前の光景をどう表現したものかと思いつつも言える事は一つ。

向こうがやたらと騒がしい。


「やっぱりだ!『首狩り』自体の投擲技術はそこまで高くないぞ!」

「それに加えて5人の連携は『鬼嫁』も辛いと見た!」

「ああ!今までの相手は大抵が連携してなかったからな!」

「だけど俺達も勝った所で同士討ちが不可避!」

「だが今は気にしない!有名人に勝てればそれでっっっ!」

「次弾装填完了!まだまだ行けるネェッッッ!」

「「「「「よっしゃあぁ!」」」」」


ええいやかましい。そう思いつつも実力があるのが腹立たしい。

火球狂いはひたすらファイアーボールの連射に特化した人物らしい。

とりあえずMP切れまで連射して来るのはどうかと思うけど。

そしてこちらも昨日とは違って的が少ないからか手間取っている様子。


「昨日みたいにサクッと狩れないの!?」

「その点に付いてだけど一つ問題があるのよ」

「何!」

「今日から1試合に持ち込める武器の個数が制限されたわ」

「はぁぁぁぁ!?」

「「「「「「アンタのせいかっっっ!」」」」」」


ともあれ何とかするしか無い訳で。

それからまた数十秒間戦い続けながらぽつりと呟く。


「いい加減キレそうだから聞くけど隠し玉とか無いの?」

「真面目にやったら数秒で終わるけど良いの?」

「最初からやりなさいよっっっ!!!」

「はいはい」

『ええーっ!?』


そこからは数瞬の出来事。

ツルギが一歩目を踏み込むと同時、一人目に肘防具が投げつけられ退場した。

ツルギが二歩目を踏み込むと同時、二人目に膝防具が投げつけられ退場した。

ツルギが三歩目を踏み込むと同時、三人目に足防具が投げつけられ退場した。

ツルギが四歩目を踏み込むと同時、四人目に胸防具が投げつけられ退場した。

ツルギが五歩目を踏み込むと同時、五人目に腰防具が投げつけられ退場した。


六人目。

火球狂いは追加で数歩を引き出す事に成功したものの結局は叩き切られた。


「……確かに隠し玉ね」

「鋲の一つでも付いてると攻撃力判定って出るのよ?」

「つまりは?」

「絶対に武具を壊すけど極大攻撃力を出せるから極論なんでも良いのよね」

「……戦いたくないんだけど」

「当たらない限りは大丈夫じゃないかしら」


『首狩り』ツルギ。

『鬼嫁』ヨミ。


両名本戦トーナメント進出決定。

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