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2-28 四十六日目

賞金首生活最終日。

今日で予選も終わり、明日からは本戦となる。

今回はゲーム内時間加速等は用いられないそうなので実質二日間の祭りだ。

予選で既に祭り前のお祭り状態と化している市街地は今日も騒がしい。

自分もお祭りに参加している内の一人なので早めに合流したいところ。

ただ今日は呼び出しがあったので騎士団長さんの所へとやって来た。


「入ります」

「お、来てくれたか」

「来て下さいましたか」


やって来た部屋には騎士団長さんと役人さんが居た。

部屋の中央のテーブルにデカ目の平たいケースが置かれているのが疑問点か。

とりあえず思いついた事を聞いてみる。


「ケースの配達依頼ですか?」

「ああいや違う、これの中身を君に渡す為に来て貰ったんだ」

「色々とこちらの思惑は有りますが指南役の両名からは許可を得ています」

「先生と師匠が?」

「それにこちらとしても丁度良いと思ってね」

「一先ずは受け取って頂いてからご説明したいと願います」

「わかりました」


本来であれば仕事に忙殺され切っている二人が此処に居る。

それらに多少の疑問を抱きつつもテーブル上のケースに歩み寄り開けようとする。

鍵などは掛かっていなかったが空気が重い気がして一瞬二人の顔色を見てしまう。

ええーっと。


「爆発したりはしませんよね……?」

「「それは無い」」

「だったら安心、ですかね……」


ともあれ中身とご対面。

そこにあったのは平べったい金属の板だった。

長さは自分の身長と同程度、横は自分の肩幅の二人分程度と言った見立て。

表面はグラデーションが掛かったかの様に金属がパズルの如く組み上げてある。

ゆっくりと端を持ち持ち上げてみれば裏面に持ち手が見えた。

どうやらこれは盾らしい。


「盾、ですか」

「ああ、国宝だよ」

「特殊指定物でもありますね」

「は!?」

「おっと」


驚きで指を滑らせケース内に落としかけた瞬間騎士団長さんの手が支えていた。

役人さんは若干表情が硬くなり溜め息を吐いている。

えーっと?


「す、すいませんでした……」

「説明を後にしたのはこっちの都合だったからね、すまない」


もう一度そっとケース内に置かれたのを確認してから役人さんが口を開く。


「ではこの盾が国宝とは言え特殊指定物に分類されている理由を説明します」

「お願いします」

「この盾はですね」

「はい」

「防御としての性能はトップクラス、硬度も申し分無し」

「はい」

「費やされた職人技は複製不可能な域に達している代物です」

「は、はい」

「しかしですね」

「はい」

「非常に脆く、一撃でも貰えば砕けちるでしょう」

「はい。……え?」


騎士団長さんの顔を見る。

含み笑いを噛み殺している。

役人さんの顔を見る。

真顔であった。


「言い直しましょうか」

「……はい」

「これはもはや盾の形をした宝石とでも言った方が良いでしょう」

「よ、よくわかりました……」


よくわかりたく無かったが現実は非情である。

今度は慎重に手に取りアイテム説明を読む事に。



鍛えられ過ぎた盾 品質?? レア度?? 重量20(5)

とある鍛冶師が王命を受け作成した一品

数十種類にも及ぶ金属が用いられている

それぞれが鍛えられ過ぎた為に硬度はあるが全体の強度は無い

防御+2500 ※修復不可 ※攻撃直撃時全損可能性極大



あっ、あー、あー、あー……。

防御力の高さに驚きたいのに付け加えられたバッドステータスに目が行く。


「あの……、先生達は一体なんと?」

「『丁度良いスキルあったわよね?』『お前なら使えるじゃろうて』と」

「スキル?……あっ」

「有るのかい?」

「有りました」


スキル【シールドチェンジ】。

今現在盾棍棒が入っている特殊枠にこの盾が加わればどうだろう。

祝いの首飾りで二倍の5000でまた凄まじい強化になる。

しかしこれだけ積んでも先生と殴りあえる未来が見えないのは何故だろう。

龍化すれば組み手は出来るようになる……かな?

やっぱりぶっ飛ばされる気がする。


「それは良かった。受け取って貰えて助かったよ」

「助かった?」

「ここで受け取って頂けなかった場合最悪国が傾きかねませんでしたから」

「ええ!?」

「忘れがちだけど君の先生方は聖女と英雄、加えて片方は龍なんだよ?」

「加えて貴方は彼らの弟子と言う事もあり相応の対応が要求されます」

「ええ……、お、お手数をお掛けします……」


よくよく見れば二人ともうっすらと疲れを滲ませている。

これも演技だと言われれば納得してしまうが心底疲れているんだろうと思った。

先生と師匠は数日前から逗留しているらしく宝物庫を物色していたそうだ。

先生達の要望ではなく国からの懇願と言った形なのが力関係を表している。


「お詫びを受け取って貰えないと色々問題があったんだ」

「そこでそれを解決する為の一つとして国宝を差し出す案が提示されました」

「ただ純粋な武具を渡すと奪われた場合に何が起こるか解らないから……」

「敢えて当人にしか扱えないであろう一品を選択して渡す事になりました」

「は、はぁ……」


先生達の事だから何となく解る。

国側の意図をしっかり汲み取った上で自分の火力を上げる一品を選んだのだと。

それにしては凄まじいバランスで成り立っている盾だとは思いました。

自分みたいな特殊事例が居なかったら倉庫送りだったんだろうな……。

形式として破損した場合の部品回収等を出来る限り行う契約書にサインする。

体裁は大事。そう言う事だろう。


「これで受け取りは終わりですかね?」

「ああ、手間を掛けさせてすまなかったね」

「いえ、この後は市街に繰り出すぐらいでしたから」

「そうだと有り難い。……しかし、だね」

「はい?」

「暴れ過ぎた挙句城門前の衛兵に迷惑を掛けるのは控えて欲しかったかな」

「すいませんでしたああぁ!!」


二歩下がって土下座しようとしたら肩を掴まれて止められた。

顔を上げれば二人とも苦笑している。


「君が帰ってくる場所がここだってバレてるからかな、色んなのが来たんだよね」

「基本的には新兵の訓練相手として対応させて頂きました」

「す、すみません……」

「ただ例外もあってね?」

「聖女様方がお連れになられたペット?なる三匹が城門前で大暴れを」

「あ、ああ……」

「彼らが賢くて助かったと思うよ」

「こちら側の被害は無し、ただ大勢が聖女様の手により負傷を経験しています」

「先生がまた何か!?」

「ああ、少々、ね」

「新兵のご指導をして下さいました」

「ああー……、あ、ああー……」


楽しそうにやったんだろうなあ、としか思えない自分は少し大人になった気がする。

手加減に手加減を重ねた上でぶっ飛ばしたに違いない。

新兵には口さがない者も多いと聞いているのでそれも関係していそう。

案の定身分を隠した上で教官として対面した結果起こった事件だった様だ。


「ともあれ自分達はその場所に居たんだけど痛快だったなあ」

「聖女様は胸部の事を言われた直後から笑みが硬くなった様に見受けられました」

「あー……」

「女性にその辺りは禁句とは言え男の集団だったからね、同調もあった」

「まず言った者の頭を掴み壁へめり込ませると次を手に取り」

「純粋な腕力ですか?」

「龍の膂力に人が抗えると思うかい?」

「ですよねぇ」

「ともあれ一度シメられた所で通常通りの指導が始まりました。が、」

「今度は英雄殿のご登場でまた荒れてねえ」

「師匠もですか?」

「騒ぎを聞きつけ止めに来たと後に説明されました」

「その場でお二人の組み手が始まって以降は武舞の観覧会の様だったよ」

「何か口論とかしてませんでしたか?」

「会話内容は昼食に関する駆け引きでしたね」

「最後は龍も飯には勝てないで締められたのには笑ったなあ」

「うわー……」


思わず頭を抱える。

そんなこちらを見ながらも二人は笑みを崩さない。


「何はともあれこの国を救ってくれて有難う。明日からも宜しく頼むよ」

「明日以降もまた助けを請う形になりますがどうか宜しくお願いいたします」

「はい。頼まれました」


後始末が有ると言う二人と別れ城外へと急ぐ。

今日は何をしようかな?

ブクマ、アクセス、閲覧、感想、評価等々いつもありがとうございます。

気分やテンション次第で変わってしまう物語ではありますが楽しんで頂けると幸いです。

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