15 装備と加護と激昂兎8
……。
……はっ。
また意識が飛んでいたようだ。
この四日間で何回意識が飛んだかな?
ルーネさんが規格外過ぎます。
全てはそこに集約される。
しかしこの二日間が激動過ぎる。
でも戦う相手は兎です。
なんか違うね。
「あの、師匠、先生。聞きたい事があるのですが」
その声に雑談を止めて聞く姿勢を取ってくれる師匠達。
この光景昨日も見ましたね。
「ワシらも何が起こったか聞きたいからの」
「なんでも聞いてよ!」
「まずはこの装備って他の人からは性能としてはどう見えるんでしょうか」
「お主の側では何かが変わっているんじゃろうがワシからはそもそも名前が見えん」
「私は素材提供者だから見える感じかな?」
「じゃあルーネ先生の【古代龍の加護】が無いと見えない感じですか」
「ほう?」
「正解!」
「それにしてもなんて物を渡すんですか全く。また意識が飛びましたよ」
「何が起こったんじゃ?」
「えっとですね、まずは加護で情報とスキルが開示されて新スキルを入手しました」
「うむ」
「で装備が簡単に言うと殴るたびにHPとMPを相手から猛烈に奪って別枠で自動でHPが恐ろしく回復し
す」
「ん?」
「で勝手に防具が直る速さが異常な上に大量の耐性が付いてます」
「お、おお……」
「極め付けに【職務投棄】と言う両手盾専用スキルを獲得しました」
「なんじゃそれは?職場を投げ棄てる?」
「そんな名前のスキル取っちゃったの!?なにそれ!」
「防御力を0にしてその差額を攻撃力にぶち込むそうです」
「盾とは……」
「師匠。俺最初から盾職じゃなくて格闘家みたいな修行させられてたと思うんですが」
「まあ、カウンターを決められるようにする修行じゃったからの……」
「あ、それとこの籠手なんですが何故か俺が装備すると両手盾扱いなので多分殴ればカウンターが発動します」
「なんじゃと!?」
「あはははははは!」
「あと殴るのでダメージも普通に入るんじゃ無いでしょうか」
「……一体何が起こればそんな装備になるんじゃ」
「俺が知りたいですよ……。ルーネ先生は何か知ってますか?」
「多分ねー、私が上げた加護の強さで装備の強さが変わるんだと思う」
「あ、それじゃ師匠の時はどうだったんです?」
「ワシは【龍の友】で籠手に【全力全快】道着にはHP回復と属性耐性じゃったかの?」
「あれ、違うんですね」
「装備者に適したスキルを授けてくれるのね?初めて知ったわ~」
「え、先生は知らなかったんですか?」
「ダンガロフちゃんのしか見ては居ないから、ね」
「それにしても本当に俺専用装備みたいになってますねこれ。色も変わってるし」
「そこまで綺麗なのも初めてね」
「ワシの時は加護不足か装備に気に入られなかったかのどちらかですかの」
「加護不足?……もしかして」
「二つあげちゃったから凄い事になっちゃったね!」
「先生!この加護外せませんか!?そうすれば俺は一冒険者に戻れるんです!」
「だ~め!」
「ガッデム!」
「ルーネ師匠……」
「まあまあ!使いこなせれば良いんだから!それにもう一式装備あるし!」
「えっ」
「爆弾、ですな」
「えっ、防具だよ?」
「爆弾、ですね」
「え~?」
小首を傾げるルーネ先生。
しかし俺と師匠は引き攣った顔で苦笑いをしていた。
師匠も同じ事を考えていたと思う。
神話クラスの防具をポンポン渡されても困る、と。
「で、頑丈になるだけの防具を貰ったと思ったら恐ろしい物を貰ったんですがこの後どうしましょう」
「さっき手に入れたスキルを使わなければええじゃろ」
「防具自体の効果は?」
「それは仕方が無い。が、籠手でも発動させられるなら扱えるようにしておけ」
「はい」
「と言う訳で自力でHPを回復できるなら内容を厳しくしても大丈夫そうじゃの」
「えっ」
「大丈夫じゃ。まだルーネ師匠には攻撃はさせんからの」
「は、はい」
とても不安です。
厳しくなるってどうなるんでしょう?
答えがこちら。
目の前には激昂兎が8匹。
ちょっと待て。
何か向こうで先生が「あ、ちょっと呼び過ぎちゃった?」って言ってるのが聞こえる。
いきなり6匹増えたんですけど。
一匹角付き混ざってるんですけど。
しかも既に全部激昂してるんですけど。
あれ?
死に戻るんじゃね?
あっちょっ一斉に飛び掛ってくんな!
「ぬわーっ!」
そこからは色々酷かった。
収穫も多かったが。
まず一斉に飛んで来た兎達を咄嗟に地面に伏せる事でやり過ごす。
第一波が過ぎ去った後急いで体勢を立て直しいち早く飛んで来た兎に対し拳を打ち込む。
腕にダメージも無いまま兎のHPが削れ吹き飛んだので籠手で守っている部分は盾の判定で良さそうだと見切りを付ける。
掠りもありHPも削れていたがその一撃で吸収し自動回復もあって大分HPに余裕が出来た。出来てしまった。
そしてその結果に何か魔が差したのだろうか。
何となく飛んで来る兎をひたすら撃ち落す事を目指してみた。
真正面に飛ばす。
ちょっと下めに角度を付ける事に成功。
右に飛ばす事に挑戦。
左に飛ばす事に挑戦。
足元に撃ち落す事に挑戦。
二匹飛んで来たので両手で一気に相撲の押し出しの用に拳の甲の部分を叩き付ける。二匹を迎撃成功。
しかし腹に着弾。
これはマズイと右手でコンパクトに打ち込む事に。
HPが回復出来たので身体をスイッチさせながら殴り続ける。
段々もぐら叩きみたいになって来た。
そこからはHPに余裕があるからなのかもぐら叩きもといウサギ叩きが楽しかったのか時間を忘れて殴っていた。
覚えている限りの最後辺りの思考はこんな感じ。
あの兎は今吹き飛ばしたから後数秒はいけるな。
あ、右側に二匹飛ばしたっけ。
じゃあそっちを向いてはいワンツーワンツー。
ありゃ倒しちまった。
じゃあ振り返って腰を回してソイヤッ!
あら倒しちまった。
それじゃあ右を向いて前に三匹だけど殴りに行く前にしゃがまないとな。
後ろから兎が二匹前に飛んで行ったから立ち上がるついでに前から飛んで来る二匹を殴って一匹避けて。
ついでに前進してさっき飛んで行った二匹の兎を追って、そら倒した。
最後の一匹、角付き兎も多少球速が早くなったぐらいだったので上から下に撃ち落す。
その後再び首を捻って戦闘クリアー。
≪スキル【ガードカウンター】を規定回数使用しました≫
≪スキル【ガードカウンター】が上書きされ【倍返し】になりました≫
ん、何かまた新しいスキル取れたな。
上書き?レベルアップじゃなくて?
なんなんだろ。
【倍返し】
【ジャストガード】時自動発動
相手の攻撃力の50%を反射する
ジャストヒット時は100%反射する
体術でも発動可能
おっふ。
マジかい。
確かに発動させ続けてたな……。
普通なら連続でやるのは難しい筈なんだがステータス補正が効いたかな?
ぼんやり考えていると呆れた表情の師匠と興奮した様子のルーネ先生。
「あの戦い方はなんと言えば良いのやら……」
「タテヤ君凄いね!早速使いこなしてる!」
「あ、師匠、先生。この装備凄いですね、まさか勝てるとは」
「ワシとしては無茶振りだと思ったんじゃがのう」
「私の装備、凄いでしょ!」
「凄過ぎて麻痺しそうです」
「外して別のでやるかの?」
「そんな!折角の装備なのに……」
「どうします?師匠」
「まあ、厳しくして行けば自ずと限界も知れるじゃろうて」
「はい」
「しかし今ので8匹でも時間を掛ければ倒せる事がわかったのう?」
「あっ」
「厳しくしても良さそうじゃな」
「ああっ!?」
「よしよし!どんどん行こう!」
「今日は兎狩りじゃの」
「ゲーッ!?」
「その装備なら死にはせんじゃろ」
「絶対に生き残れるね!」
「そ、そんなあ……」
四日目。
同時に8匹の兎を倒せるようになりました。
一人で。
あれ?
前衛(一人で全部倒す
職務投棄を発動させその状態でガードすると
ジャストヒット以外は防御力0ですのでごっそり食らいます。
殴った場合腕へのダメージでカウンターが発動し反射した上で攻撃が入ります。




