2-25 四十三日目
賞金首生活四日目。
大体の参加者を狩り終え、現在は逃げられていた参加者に飛び掛っている。
賞金首と言うよりはタチの悪いチンピラみたいな感じですね。
「あはははははははは!」
「なんで削り切れないんだ!?」
「自動回復してやがる!」
「MP切れですー!」
十数名のプレイヤー達と交戦中で今もなお新手が来ている現状。
テンション上げないと不味いな?
と言う訳で叫びましょう。
「『参加者以外をキルしてもプレイヤーキラー扱いにならない』のは良いなあ!」
「誰かコイツにトドメ刺してくれねぇかなあ!?」
「無理だ無理!鎧に当たる度にダメージ反射だぞ!」
「アサシンが速度負けしてるぞ!?」
「アイテム切れましたあ!」
ちゃんと鎧の隙間はあるので頑張って貫いてみて欲しいと思います。
何しろ現在防御力0なので。
その理由としては昨日から周知されたのか一定の戦法を取られる様になっている。
こちらの隙を無理矢理作り、そして飛び込んでくる一撃特化型。
実際には事前に他のスキルも発動しているものの最後に叫ぶスキル名は一つ。
「『鎧貫き』!」
「『職務投棄』!」
「ごっばはぁぁあ!」
「ぐげっ刺さった!」
「ステータスころころ変わり過ぎじゃねえかなあ!?」
「あっはっは!守る気ありませんから!」
「お前本当に盾職かよ!」
叫びながら散っていった者とは別の鎧貫き発動者にまた喉を突かれる。
関節の隙間とかあると思うんですけどね!?
ただ防御力比例に対して防御力が無い状態で戦い続けてるのでいずれバレる。
つまり素で攻撃を食らった場合がっつりダメージが入る。
食らうつもりはあまり無いけれど。
「と言う訳で一命様ごあんなーい!」
「きゃああああ!」
「ヒーラーァァァァ!」
「彼女には特別ポイント付かないから幾ら狩っても安心!」
「そもそもキルしてるけどな!?」
デスペナ無いから大丈夫大丈夫。
それに一撃で大体消し飛ぶけどヒーラー除去は基本だから許して欲しい。
この蹴りはサービスだと思って欲しい。
サッカーと言うか風船蹴りみたいになってるけれど。
「『職務投棄』キーック!」
「盾関係なっ……」
「おいタンク役が盾で受けた上で消し飛んだぞ!?」
「火力幾らだよあれ!」
「確実に数千以上あるぞ!嘘だろ!?」
「あーっはっはっはっは!楽しいなあ!」
触れるごとに散っていくプレイヤー達の隙間を縫う様に都市を駆ける。
気を付けてはいるものの時折装備部分に触れてしまい壊してしまう事も。
なるべくHPの減少だけで済ませたいと思ってはいるものの難しい。
大分調子に乗ってるなと思って来たのでそろそろ修行モードに移行しよう。
ここで取り出しましたるは修練の輪。
修練の輪 品質?? レア度??
装備者に辛苦を与える輪
装備者のステータスを1/10にする
HP自動回復【微/瀕死時特大】自己修復【中】
加護効果適用不可
ステータス的には弱体化も著しい装備品。
だが今回は役に立つだろう。
自分にトドメを刺したいプレイヤー達が増えた今なら瀕死時特大回復は役立つ。
ゾンビの如く戦い抜きたい所存で御座います。
「と言う訳で会いに来たんだ」
「タテ兄、私達も昨日狩られたんだけど……」
「特別ポイントは重ねがけで増えるんだ」
「あの情報本当だったんだね……」
『偶然』見つけたアリス達と遭遇。
もちろん数分前から告知時間は伸ばしてあり、まだ人は来ないだろう。
既に修練の輪で弱体化している事は伝えてあるものの皆嫌そうな顔をしている。
それでも戦闘体勢な辺り中々解っている。
「アンタが都市全域走り回ってるせいで情報がバラバラなんだけど……」
「この遭遇の為でありましたか!」
アリス、アリサ、コノハナ、ケンヤ、ミカ、ミノリ。
ライアンとガノンはソロで戦っているらしい。
まだ遭遇出来ていないのだが今後会う気がする。
ヨミは別行動、だがきっと自分みたいに何かに巻き込まれている筈。
何せライアさんとミツさんが一緒だからな!
「大丈夫大丈夫、昨日と同じで全員で掛かってきて良いから」
「今防御力以外のステータスがほぼ初期値と言われても勝てるイメージが……」
「と言うか勝ったら勝ったで狙われるの私達ですよね!」
「先輩先輩!談合と疑われ兼ねないと思うんですけど何で情報開示を?」
「強者が来たら鍛えて貰えるだろ?」
あっさりと言えば静寂が場に満ちる。
死んでも死なないゲームなのだからこう言う楽しみ方もあると思うんだけどな。
それに今は賞金首。
ある戦法も使えるので存分に楽しませてもらおう。
その戦法とは!
戦い始めてから暫く。
まずアリサがキレた。
「『追われる』賞金首が『逃げる』のはそう言えば当たり前よねえ!」
「そう言う事だ!」
「背中側の方が弱点少ないんだけど!」
「鎧プラス盾!これぞ最強なり!」
「嘘よねぇ!」
「嘘だっっっ!」
「ああもう腹立つ!」
「あっはっはっはっは!」
現在の自分は大分弱い。
弱いと言っても諸々強化された上で10分の1になってるので普通に強い。
ただ複数人を相手にするのは辛い。
そんなバランスの中自分は走り続けながら対処し続けている。
飛び交う魔法を盾で殴る様はモグラ叩きみたいですね。
「さすが魔法使いメタの『ジャストガード』ですねっ……!」
「ん?メタになってるのか?」
「ええ、先輩が大勢の前でやったお陰で盾持ちは基本取る様になりました」
「成る程。……ごめんな?」
「謝らないでくださいーっ!」
アリスとアリサとケンヤが牽制兼アタッカー、ミノリが回復よりの牽制役。
メインはコノハナとミカで関節抜きを狙って来ている。
今の所はテンションもあるので動けているものの落ち着いて来たらキツくなる。
それまでに何人かトドメまで持って行きたい所だが。
前に向き直った所で道の向こうから人が駆けて来る。
「どうもランキング29位です!」
「どうもランキング14位です!」
「どうもランキング75位です!」
「どうもランキング5位です!」
「と言う訳で!」
『いい加減にポイント寄越せ!』
「来たなランカー!」
先ほどの情報提供で現在弱体化している事は掲示板に載せられている。
それにしては到着が遅いと思ったものの人数を集めていたのだろう。
良い笑顔をしながら前方から大勢プレイヤーがやってくる。
大半は二度ほど自分に狩られた結果修羅の戦いに放り込まれた者達だった。
「今日の自分は生き延びる事を優先しますよ!」
「狩ってやるから覚悟しろ賞金首ィ!」
「「はっはっはっはっは!」」
盾棍棒を取り出し一振るい。
大通りに人が飛び交い怒号で満ちる。
その最中を駆けて行く人達の姿はまさに祭りの開幕に相応しい物だった。




