14 激昂兎と籠手と道着
早速本日の修行開始の前に師匠から言いたい事と渡したい物があるらしい。
なんだろうか。
「今日からは更に数を増やす予定じゃがその前に」
「はい」
「タテヤ、お主に装備を渡そうと思う」
「え、良いんですか?」
「数が増えればその小盾一つでは対応出来なくなるからの」
「確かに二匹に増えた途端袋叩きにされました」
二匹に増えた時の事を思い出す。
昨日の事だ。
「さて、二匹同時になる訳じゃがやる事は変わらんがキツくなる」
「アドバイスを貰っても良いでしょうか」
「なるべく同時に倒せ」
「何か理由が?」
「まあ、実際にやってみればわかる」
「はあ」
「とりあえずやってみい」
「はい」
そうして俺は激昂兎の名前の意味を知る事となる。
「よっ、ほっ、はっ!」
兎の攻撃は体当たり、突進、噛み付きだけだが結構キツイ。
何しろバスケットボールサイズの物が勢いよく飛んでくるのだ。
しかも片方を弾くと直ぐにもう片方が飛んでくる。
なので一匹を集中的に弾きつつもう一匹は受け流しを試みていた。
ダメージを蓄積させたい方には腰を落として左腕の小盾を正面に構えて受ける。
もう一匹には弾道に合わせて盾を傾けて道を作る。
この道を作るのが難しく失敗するとかなり削られる。
しかし少しでも出来ると後は回数で経験を積めば良いのでかなり楽になった。
そうしてしばらく動き続け削ったのだが。
「よし、一匹は瀕死に出来たな。もう一匹は……なんだあのオーラ」
一匹はもう少しで倒せる所まで削った所でもう一匹の方に変化が。
身体から赤いオーラを立ち上らせつつ体毛が真っ赤になっていき表示の所には怒りマーク。
「あっこれもしかして」
激昂兎。
単体ではひたすら攻撃を仕掛けるモンスター。
複数だと一体が瀕死になればその他全てが激昂状態になる。
範囲攻撃もしくは瀕死で止まらないよう倒せば激昂状態にはならない。
そこからは酷かった。
どうにか瀕死を仕留めようと動こうとするも激昂状態の奴が邪魔をする。
体当たり、突進、噛み付きのどれもが超攻撃力になっており掠っただけでHPバーが3割消失。
戦々恐々としつつも数を減らさないとどうにもならないと思い瀕死を追いかけるがすばやく逃げられる。
そのくせ激昂兎に向いた途端飛んでくるのだ。勘弁してもらいたい。
激昂兎がひたすら飛んで来るのでそれを無理矢理いなしつつ瀕死を倒した所で飛び掛られた。
咄嗟に盾を構えた所クリティカル。
カウンターにより激昂兎は自滅した。
ここまでが昨日の記憶である。
やっぱりおそろしい。
「確かに左手だけだとキツイですね」
「ああ。しかもお主は攻撃力が無いじゃろう?」
「カウンターで地道に減らすか捕まえての締め技ぐらいですからね…」
「そこでじゃ。ワシには扱えんかったがお主なら扱えると思っての。これをやろう」
「ありがとうございます!……籠手と道着?」
???の籠手 品質?? レア度??
???で作られた籠手
装備者を攻撃から守り続ける
防御+40
自己修復【特大】
???の道着 品質?? レア度??
???で作られた道着
装備者を攻撃から守り続ける
防御+40
自己修復【特大】
おお!自動修復!?
これとんでも無い物だよな!?
防御がやや物足りないけど基準がおかしくなってる気がする。
籠手は肘から第一関節まで覆われており末節は出ている。
内側は何か袋のようなもので作られており外側に何かの鱗が並べられている。
色は所々に使われている接合部以外は真っ白である。
俺が手に持った時から時たま脈打っているように見えるのはなんだろうか?
道着の方は黒色に染められており帯を腰で締めると格闘家になった気分になれそうだ。
これもやはり脈打っているように見える。
名前が見えないのは何故だろう?
いやしかし凄い装備だ。
幾らでも体当たりされても大丈夫そうだ。
「え、これを本当に俺に…?」
「うむ」
「盾を渡されなかったのには何か理由が?」
「盾はその籠手が使えなかったら渡そう。渡すかはわからんがの」
「はい?」
俺、盾職なんですけど。
要らないって?
どう言う事?
よくわからないまま受け取るとそれを見た先生が驚いていた。
「ああ、その籠手もしかしてタテヤ君に!?」
「先生、これは一体」
「ダンガロフちゃんもそれを渡すとは入れ込んだわね?」
「ルーネ師匠には申し訳無いですが元よりワシでは扱いきれませんでしたからの」
「ダンガロフちゃんに渡したんだから良いわよ別に謝らなくても」
「両手盾のタテヤならば扱えると思ったのですがどうでしょう」
「そうねー、タテヤ君なら大丈夫かな?」
「え、俺なら扱えるってそのままの意味ですか?」
「実質お主専用装備じゃ」
「あ、隠しに気付いてたんだ」
「さすがに違和感がありましての」
「とりあえず装備しますね?」
「きっと驚くわよ~」
「何分で帰ってきますかな」
「今度は一体何渡されたんですかね……」
もう驚かないぞと思いつつ装備画面を開き籠手と道着を装備する。
装備する時に何か必要とかは無く普通に装備できた。
「特に変わりは無いですね」
「本当にそうかしらね?」
「え?」
唐突に防具の色が変化する。
籠手は肘側から鱗の白に青が混ざって行き空色になった。
内側の袋は濃い紫に近い色になっていた。
鱗の色は一定ではなく白を中心に様々な色がゆっくりと動いていて美しい。
道着は黒に青と白が混ざって行き群青色になった。
見れば細かく白が散らされており星空を見ている気分になれる。
そして通知の音。
≪加護所持者の為情報が新規開示されます≫
≪加護所持者の為能力が新規解放されます≫
≪籠手の『両手盾』専用スキルが解放されました≫
≪スキル『職務投棄』を取得≫
追加情報に能力解放にスキル獲得?
加護?って言うと一つしか思い浮かばないな。
あれ?何か嫌な予感がして来たぞ?
しかし確認するのはやめない俺です。
怖い物見たさって奴?
さてなんじゃろか。
古代龍の籠手【両手盾】 品質XX レア度XX
古代龍の鱗と皮で作られた籠手
装備者を攻撃から守り続け敵を撃滅する
防御+40
自己修復【特大】new!HP吸収【大】new!MP吸収【大】
new!両手盾職が装備時両手盾扱いとなりカウンター発動可能
new!両手盾専用スキル『職務投棄』を取得する
古代龍の道着 品質XX レア度XX
古代龍の翼膜と皮から作られた道着
装備者を攻撃から守り続け何物も跳ね返す
防御+40
new!HP自動回復【大】自己修復【特大】
new!火耐性【大】new!風耐性【大】new!水耐性【大】new!土耐性【大】new!光耐性【大】new!闇耐性【大】
new!毒耐性【大】new!麻痺耐性【大】new!睡眠耐性【大】new!混乱耐性【大】new!暗闇耐性【大】new!即死耐性【大】
【職務投棄】
現在の防御力を0にする
その差額を攻撃力に加算する
両手盾専用スキル
……。
…………。
は?
えーっと。
多分この装備は師匠が先生に貰った装備で?
両手盾職専用スキルが偶然付いてて?
加護持ちじゃないと発動しないスキル満載でした?
訳がわからんぞ!
纏めの時間だ!
二匹の兎に苦労した
一対多数に対応出来るよう両手用の装備を貰った
服がボロボロだったのもあって道着も貰った
加護を持ってたから大量にスキル解放
両手盾職だったから攻撃力0なのに超火力になった
何がなんだかわからんな!
え、これどうしよう。
どないせえと。
「しかしルーネ師匠、あの装備には一体何が隠されて居たので?」
「えーっとねー、一杯!」
「ああ、やはり神話クラスでしたか」
「私の友達が私の素材で作ったからね!」
「……良かれと思って渡しましたが大丈夫ですかの?」
「うーん、多分大丈夫!強くなるだけだし!」
「それはどのくらいですかの」
「えっと、大体の敵なら無傷で勝てるぐらい!」
「やり過ぎです……」
迂闊に装備できない物が増えました。
えらいもん渡されました(パート2
主人公がバ火力になります。
盾とは一体。ウゴゴゴゴ……




