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2-16 続々々三十八日目

戦闘からしばらく。

広場奥の社の前に自分、師匠、先生、ロン、暴虎が座り込んでいた。

何故か背もたれ代わりに暴虎の腹を使わせてもらっている。

背中に当たる感触に結晶体のゴツさが無いのは何故でしょう。

暴虎の顔を見ればスッキリした表情に知性が宿りつつ迫力が増した感じ。


「暴走魔結晶と言う司令塔が無くなれば身体の権限が戻る解釈ですかの?」

「身体に残った結晶体も吸収再構築されて格が強化されてるわねー」

「結局元凶を砕くだけで良かったんですか?」

『馬鹿者。此奴程の強者で無ければ砕いた瞬間破裂しておるわ』

「え?」

「ガァ」


暴走魔結晶は暴走しながらも魔物強化はきっちりしていたのが原因だそうで。

ロンと先生の説明によれば自分が食らった魔力量は上澄み程度だったらしい。

『王』クラスに片脚を突っ込んでいた暴虎だったからこそ過剰供給に耐えていた。

加えて自分が侵食部位の殆どを砕いたので身体の回復中に吸収出来た、らしい。

高純度の魔力結晶体を迂闊に取り込むと格が足りない場合破裂するそうで。


何も考えずに砕いたんですけど。

……。


「その顔は何も考えて無かったわねー?先生達が言えた事じゃ無いけれど」

「結果良ければ全て良し、で済みませんか」

「まだ終わっとらんぞ」

「この後の事ですね」


報告書に書かれていた今回の事態悪化の元凶来訪者。すなわちプレイヤー。

この暴虎を狩りに来たと言う事は恐らく攻略組と言われる一部か強豪ギルド。

一度全滅した程度じゃ諦めない気がする、と言うか諦めないだろう。

自分も情報が足りなければ嬉々として狩りに行くだろうし。

かと言って知ってしまった今では色々と文句を言いたくなっている。

さて、どうしようか?


「ルーネ師匠」

「んー、もう少し時間が欲しかったかなー」

『我は動かずとも良いのだな?』

「ロン殿は警戒をお願いしますぞ」

『承知した』


自分が悩みながら毛並みに埋もれていると遠くから大勢の人間が近付いて来る音。

漏れ聞こえて来る会話の端々から討伐目的である事がわかる。

雷対処、レイドボス、ヘイト、手順確認等の単語からもプレイヤーな筈。

さてどうするかと悩んでいるとロンが目の前にやって来て暴虎と話し出す。


『どうも御主に頼み事があるらしい』

「頼み?」

『正しくは願いかも知れぬが』

「暴虎からか」

『うむ』


暴虎は既に匂いで現在接近中の集団が前日蹴散らした者達なのが判っている。

そして既にもうこの場所には居られない事も解っているらしい。

加えて自分達の会話も把握していてそれならば旅に同行したいと言っている。

しかし先程は実力を出せていなかったので今からの戦闘で見極めて欲しい。


暴虎の顔を見ればじっとこちらを見つめている。

見つめあったまま師匠達にお伺いを立てる。


「師匠、先生」

「構わぬ」

「良いわよ~」


うん。じゃあ頑張って下さい。


「グルゥ」




広場の中央付近に暴虎が立ち、静かに挑戦者を待っている。

自分と先生達は社の付近で見守る形に。

勇んでやって来たプレイヤー達は暴虎の変化に気付いた様で相談しだした。


「なんか状態が暴走から正常になってんだけど」

「討伐されてはないみたいだが、どうする」

「後ろになんか居るよな、NPC?」

「全員レベル見えないし多分そうじゃね」

「いやでも広場の中だよな、なんで攻撃されてないんだ?」

「あいつ等が暴走させてた元凶とか?」

「じゃあ虎より先にあいつ等倒せば俺達ヒーロー!?」

「いや待て、一人プレイヤーだ。名前は……」


好き勝手に喋る集団の中で一人こちらを見て顔を引き攣らせていく奴が居る。

お、気付いてくれたかな。

どうか気付いたなら状況判断を誤らないで逃げ帰った方が良いと思います。

現に活き活きと向こうから見えない位置で充電してる暴虎が見えるので。

人の話を理解出来るってロンが言ってたな。

……ブチ切れてる?


「おーい!そこの人-!」

「何かしらー!」

「俺達はそこの虎を討伐しに来たんで邪魔はしないでくれよなー!」

「はーい!」

「それと美人のお姉さん後でお茶でもどうですかー!」

「考えとくー!」


一通り話し合った結果討伐は実行するらしい。

しかし調査員さんの報告書程の嫌悪感が感じられないのだが何故だろう。

良い連中なのだろうか?

どうにもすれ違いが何処かで発生している様な……。

ただとりあえず今回は蹴散らされると思います。

一人くらいは情報拡散の為に生き残って欲しい。


と言う訳で戦闘開始。


20人程が警戒しつつ広場内に入って来ても暴虎は動かず待っていた。

陣形が整い前衛が動き出そうとした瞬間にまずは一人が雷で消し飛んだ。

後ろで見ていた自分達からは上空に雷雲が浮いているのが見えていた。


「いつの間に」

「待ち伏せておるのに準備せぬ奴はおらんじゃろう」

「私が居るわよ?」

『「「…………」」』

「もう!」


慣れているのか一人落ちた事による硬直時間は短く、素早く回復して動いている。

暴虎も一度こちらを見てから駆け出して行く。

フェイントを織り交ぜながら丁寧に潰していく辺りアピール上手だと思おうか。

ちょくちょくこちらを見なくてもちゃんと見てるから。安心してくれ。

暴走時より身体能力がキレが鋭く爪の一撃で中衛が瀕死になってる。


「暴走状態よりつよ、ガハ!」

「おら退け俺が討伐して名を上げ、ガッゴッ!」

「回復急げ死ぬ死ぬ死ぬ!」


余裕のある暴虎と余裕が一切無い上に本気出されてないプレイヤー組との対比。

とても酷い。しかし必要経費だと割り切って少人数になるまで待つ。

一人、また一人と倒れていくのに段々攻撃を苛烈にしていく辺り解っている。

代わりにプレイヤーの顔からどんどん光が失われていってますが。

そこまで丁寧に絶望植え付けなくても良いと思うんですが。

嬉しそうにプレイヤーの頭を齧りながら見てくるので大きく頷いておいた。

歯応えありそうですね。

しばらくの間、悲鳴を聞き続けた。



「俺達は騙されてたって事か!?」

「自分が暴走の解除に成功した今の状態だとそうなりますね」

「……詳しく聞いても良いか」

「はい」


人数が減って来た所で絶望し切った人達に話を持ちかける事にした。

何故挑んだのかを聞きたかったのとこのままだと印象が悪いままになってしまう。

それと戦闘前の雰囲気からどうにも物欲に駆られきった感じも無かったので。


「そもそもはこの国にやって来た日に特殊クエストがあるって奴が来てな」

「特殊クエスト?」

「討伐したら英雄になれる、だったかな。まあまずは情報を集めたんだが……」


断片的な情報しか揃えられず、時間も押しているとの事で討伐を強行したらしい。

人食い虎、山村、救援要請、裏を知らなければ自分でも連想を間違えるだろう。

そして情報提供者との関わり合いに関しても遭遇不可になったとの報告が入り。

色々ときな臭い事にようやく気付いてくれた。

自分が調査員さんの報告書を渡すと読み終えた全員が笑顔になっていた。


「情報提供、ありがとよ」

「いえいえ」


ついでに今回の国解放の裏話も話しておく。

周囲のプレイヤーが苦笑いになった。

何故だ。


「ギルドの方にはちゃんと謝ってくださいよ?」

「わかってるわかってる、NPCとの関係悪化は不味いしな」

「情報拡散の方もお願いします」

「了解した」


常識のある人に話せて良かった。

うんうん。


「で、あの虎はどうするんだ」

「勝った報酬としてしばらく旅に着いて来るそうですが」

「……勝ったのか」

「勝ちました」


プレイヤーの皆さんからドン引きされました。

ステータスでゴリ押しただけですよ?


王都に戻ったら何と言い訳しようか。

今から胃が荒れそうです。


「本人連れて行けば良いんじゃないの?」

「あー、なるほど」

「もう少し考えい」


と言う訳で連れて帰る事になりました。

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