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2-15 続々三十八日目

暴走状態をどうにかしようと言う事になった。

シンプル。

でもどうやって?


「暴走魔結晶を砕けば元に戻るとか」

「侵食済みとあればそうも行くまい」

「何処まで食い込んでるのかにもよるわねー」

「でも取り除かない限りは……」

「ワシ達が出張る事になるじゃろうな」

「あれ、自分がこのまま戦うんですか」

「修行だって言ったでしょ?」

「あれえ!?」


貴重な経験を積ませてくれるそうで。

ともあれ殴り合いは避けられないようです。

ピンポイントで殴り砕かないと駄目らしいです。

難易度高めですね。


「砕いた後の事ですが、侵食痕は残ると思いますか」

「変質後であるならば残るじゃろうな」

「それなら、」

「手遅れならば送ってやらねばならん」

「……はい」


考えておけよ、と言ってから師匠は再び先生と相談を始める。

その姿を眺めながら色々と考えるも思考が纏まらない。

ふと上を眺めれば木漏れ日差す木々の隙間から青空が見える。

眺めつつ自分の手持ちで出来る事を考える。

結果はシンプルなもので、実に自分らしい。


殴ってから考えよう。

あ、いや違った流されてから考えよう。

今更ですが両手盾ってなんなんでしょうね?

正道では無いですが楽しいので良しとします。


「……大丈夫かの」

「大丈夫だと思わない?」

「まあ、任せてみましょう」


なんて事を考えつつ心を落ち着かせている内に目的地に到着したらしい。

一見すると広場と言って良く周囲の木々が円形に削られ地面が見えている。

地面は焼け焦げた後が無数にあり、草もまばらに生き残っていると言った様相。

奥には貢物が置かれていたと思える台座が見え、そして広場の中央にそれは居た。


赤と黒の縞模様の体毛を持ち尻尾と顔の一部に白を見せる巨躯の虎。

通常は黒と黄の体毛で白などは見られないらしいのでこれが目標だろう。

山道からやって来る者を待ち構えるように中央で寝そべっている。

こちらから見える腹部には明らかに毒々しい何かが突き刺さっている。

明らかに異物なアレが暴走魔結晶なのだろう。

暴走魔結晶の周囲には網のように結晶体が伸びており脈動を続けている。


「襲われませんね」

「ルーネ師匠が居ると言うのもあるが、その線はまだ越えるな」

「この広場との境目ですか」


山道と広場の境界。

そこから先は相手の領域とでも言うように草が消えた大地。

試しに踏み込みかけた瞬間威圧を全身に浴び、たたらを踏む。

……マジ?

師匠達は涼しい顔。


「私達だと駄目そうね」

「初手から殺し合いになりますのう」


強いけど狩れる認識なんですか。

先生は解りますけど師匠もその頂にいるんですね。

そんな二人が殺し合いでは駄目だと言う。

じゃあ。


「行って来ます」

「うむ、行って来い」

「いってらっしゃい!」


蛮勇を通すしか無いでしょう。



境界線の前で深呼吸を一つ。

次に装備の確認。

籠手、道着、大盾、刀、脚甲、首飾り。

盾棍棒もシールドチェンジに入れてある。

良し。


スキルは?

ガード3、フォートレス2、全速回避、地足根張。

そしてジャストガード、五倍返し、職務投棄。

龍化を取ってSPは残り50。

ガード4を取って残り10に。

残りのBP70も全部防御に割り振って2495と化した。


ステータス面での準備は出来た。

挑む為の一歩目を踏み出す。


「……ガァ」


来たか、と暴虎が起き上がると共に純粋な殺意がこちらに向けられる。

続いて紫電を身に纏い出すが途中から黒が混じり黒雷に変化。

嫌な予感がしたので咄嗟に上に大盾を向けた瞬間爆発の衝撃が身体に響く。

周辺に電光が走り抜け続ける中、地面に膝を突きつつ雷雨に耐える。


「がっ、あっ!?」


ジュゥッ!と言う音を大盾の表面が立て、HPも削れて行く。

爆音が鳴り響く中確かに土を踏む足音が聞こえ、焦燥感を煽り続ける。

十数秒に及ぶ雷雨が途切れた次の瞬間前に向けた大盾ごと吹き飛ばされる。

宙を吹き飛び元の場所に戻った所で師匠に片足を捕まれてから地面に落ちる。

恐らく突進で吹き飛ばされた模様。


「油断しおったな」

「油断しちゃ駄目よ?」

「よくわかりました……」

「まあ生きてるなら及第点、でも勝ちなさい」

「はい……」


仰向けに倒れたまま暴虎の方を向けば再び最初の位置に戻りこちらを見ている。

黒雷の黒味が若干薄くなっているのは気のせいだろうか。


「先生、気のせいですが相手が若干スッキリした顔をしているような?」

「そうね、溜め込んでた不要な力を放出し切るまで付き合ってあげなさい」

「あ、そう言う……」


過大な出力を抑え込んでいたとしても作られた力自体は蓄積される。

溜め込み過ぎると身体への毒になる。じゃあ発散すればマシになる。

自分の役目は耐え続けてサンドバッグ状態になりながら勝つ事らしいです。

挑む前に必要スキル使っておくべきでしたね。

相手をナメて掛かってた気がします。


「でも先生、自分だけだとキツイです」

「じゃあどうする?」

「助太刀を呼びます」

「許可します」

「わあい」


と言う事で援軍召喚。


『ようやく呼び出されたと思えば、何をやっているのだお主は』

「相手のストレス発散相手ですかね?そこで時間稼ぎをお願いしたく」

『それは殺すなと言う意味合いか』

「なるべくは」

『何を望む』

「一人格の正常な返還を」

『良かろう。では先に行く』


ロンが早速暴虎とやりあっているのを見ながらスキルを発動していく。

大盾も砦盾を発動して鎧武者状態に。

そして発動、新スキル。


「龍化!」


ゴギリ、と何かが捻じ動いた音と共に全身の感覚が研ぎ澄まされていく。

次いで力が満ちると共に専用技としてのブレスの使い方が頭に入って来る。

一点収束型かつ短時間の持続により薙ぎ払いも出来るらしい。

まあ早々打たないとは思いますが。

さてリベンジ行って見ましょう。



先程から左手に逆手持ちで刀を持ちつつ地面を斬りながら駆けてます。

雷雨の方は豪雨から小雨程度に減少しているが威力は変わらずと言った所。

地面に流せているのもほんの少しだとは思いますがやらないのとでは段違い。

加えてロンに風系列の魔法で不純物の無い空気の層を作って貰ってるのも大きい。

お陰であまり雷撃を食らわずに済んでいる。


しかし相手は虎。

元々の戦闘力が段違いな訳でして。

すなわち人と虎の殴り合いが発生すると言う事に。


「食われる気がするんだがっ!」

『耐えろ』

「んぎぎぎぎぎぎぎ……!」

「ガァァァアアア!!」


現在暴虎と前足と両手で掴み合い、兜を齧られながら尻尾で殴られてます。

耳元でギシギシ言ってるんですが大丈夫だよな?

一応龍化のお陰で色々耐えられては居るもののそろそろ打開したい。

向こうも大分発散出来たのか理性が戻って動きが段々鋭くなって来ているし。

そろそろ暴走魔結晶を砕いても良いかな。


「先生、師匠……っ!」

「そろそろ良いわよー」

「うむ、殴って良いぞ」


二人の返答と同時、兜を齧られたまま暴虎の口腔内にブレスを打とうとする。

攻撃を察したのか拘束を離し一瞬で飛び退っていく相手を追いかける様に放つ。

数秒の後、自分のMPが危険域に達した所でブレスは切れ、しかし距離は開いた。

ここで取り出したるは先生の血ポーションと、超狂走ポーション。

両方を使った所で刀を仕舞い、拳を軽く振る。


「グルゥ……」

「いざ尋常に」

「ガァッ!!!」

「参る」


こちらの変化を察した暴虎が攻撃をしようとする前に懐に飛び込み上に拳を振るう。

気付いた向こうも前足を振ってくるのを横目に見ながら職務投棄を発動。

籠手先が触れた所から結晶体が砕け散っていき、暴虎の身体も宙に浮いた。


「ガッ…………」

「あっ」


思い切りアッパースイングの状態でフィニッシュした為に後の事を考えておらず。

力が抜けた暴虎が自分の上に落ちてくると言う事は下敷きにされると言う事で。

つまりはまあ、詰めが甘かったです。


目標達成。


≪レベルアップしました≫

≪ボーナスポイントを20点獲得≫

≪スキルポイントを20点獲得≫


≪職業レベルがレベルアップしました≫

≪ボーナスポイントを80点獲得≫

≪スキルポイントを80点獲得≫


≪スキル【盾】がレベルアップしました≫

≪スキル【回避】がレベルアップしました≫

≪スキル【受け】がレベルアップしました≫

≪スキル【精密操作】がレベルアップしました≫

≪スキル【身体強化】がレベルアップしました≫


「うーん、あんまり苦戦しなかったわねー」

『……龍よ、もう少し人の尺度で考えてやれ』

「そう?そっちも最後の方傍観してたけど」

『我の場合は手助けの範疇だ』

「なるほどなるほど。ダンはどう思う?」

「まずは助けてからでは」

「あっ」『ぬ?』


超狂走ポーション。

デメリットは使用後にHPとMPを90%失う。


下敷きによるスリップダメージで死に掛けました。

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