13 起床と適応と気絶
四日目。
ログインすると何やら身体が重い。
何か暖かいモノが胸から下に乗っているようだと思い見るとルーネ先生の寝顔。
添い寝と言うかうつ伏せに乗られている。
胸の感触。えっ。
垢BAN案件!?
叫びそうになったがグッと堪える。
逃げ出そうとするも何故か動けない。
足の方が見えないが先生が両足を器用に使い俺の右足首が極められているようだ。
少しでも動かすといったーい!
左腕を動かそうとするも先生が右手で俺の手首を極めているようだ。
少しでも動かすといだだだだだだ!
そうして抵抗しようとするも失敗し続ける俺に反応したのか眉間に皺を寄せる先生。
そしてポツリと寝言。
「逃げると許さないわよ……」
物騒過ぎる寝言に慄き動きを止めつつ昨日の修行中にルーネ先生の寝起きの悪さを物語る師匠の話を思い出す。
「昔旅しておった時の事なんじゃがの」
「はい。二人旅の時ですか?」
「そうじゃ。その頃はまだ治安が悪い所もあってのう、野宿をすると夜盗の類が出たりしたんじゃ」
「大変ですね」
「それである時ルーネ師匠が寝ている時に襲撃があっての。ワシは外で戦って居たんじゃが……」
「何か問題が?」
「盗賊の一人がルーネ師匠のテントに押し入りよった後ソイツが布を突き破って吹き飛んで行っての」
「あっ、まさか」
「起きたルーネ師匠が笑顔で額に青筋を立てつつ『うるさーい!』と言いながら火魔法を放ちよったんじゃ」
「師匠はどうしたんです?」
「全力でルーネ師匠を止めに走ったのう。それでもかなりの範囲が焦げたが」
「あー……」
「まあ、夜盗はそれで逃げ出したんじゃがルーネ師匠が追い掛けて行って殲滅したと言うか、焼失したと言うか…」
「それ以上は言わなくてもわかります……」
「まあ、その、じゃからルーネ師匠の寝起きには気を付けるんじゃぞ?」
「はい!」
誰だってぐっすり寝てる所で無理矢理起こされたら怒るとは思いますけどね。
俺だってぐずる。
でも師匠!逃げられないのはどうかと思います!
色々怖いし一度ログアウトするかな?
でも何故かログアウトの文字が現在灰色です。
恐ろしい。
現実逃避をしようそうしよう。
あ、通知が色々来てる。
≪加護【古代龍の加護】によるステータス向上があります≫
≪加護【ルーネのお気に入り】によるステータス向上があります≫
≪加護【古代龍の加護】により攻撃力が変動し『両手盾』が『騎士』になります。宜しいですか?YES/NO≫
≪加護【ルーネのお気に入り】により攻撃力が変動し『両手盾』が『騎士』になります。宜しいですか?YES/NO≫
あらら。騎士になっちゃうのか。てっきり盾かと思ったんだけど。
その辺も複合ステータスかね?
んー、攻撃力が増えるのはありがたいけど元々想定外だったしな。
ネタキャラの為にここは両方ともNOにしよう。
≪加護【古代龍の加護】による攻撃力増加から『両手盾』を維持する為に攻撃力の変動を無効にしますか?YES/NO≫
≪加護【ルーネのお気に入り】による攻撃力増加から『両手盾』を維持する為に攻撃力の変動を無効にしますか?YES/NO≫
おお、ありがたい。
YESを選択。
≪加護【古代龍の加護】による攻撃力増加分のポイントがBPに加算されます。宜しいですか?YES/NO≫
≪加護【ルーネのお気に入り】による攻撃力増加分のポイントがBPに加算されます。宜しいですか?YES/NO≫
あ、そう言う風になるんですね。
YESで。
≪加護【古代龍の加護】の適応を完了します。宜しいですか?YES/NO≫
≪拒否した場合は最初の設問からとなります≫
≪加護【ルーネのお気に入り】の適応を完了します。宜しいですか?YES/NO≫
≪拒否した場合は最初の設問からとなります≫
ここもYESで。
≪加護【古代龍の加護】によりステータスが向上しました≫
≪加護【ルーネのお気に入り】によりステータスが向上しました≫
完了かね?
さてステータスはどうなったんでしょう。
それなりに効果があると良いなあ。
さて現在のステータスは。
名前 タテヤ Lv13
職業『両手盾』Lv2
攻撃 0
防御 60(+100)(+200)
俊敏 20(+100)(+200)
精神 20(+100)(+200)
知力 20(+100)(+200)
生命力 20(+100)(+200)
残BP 90(+100)(+200)
残SP 80
あっはっはっはっは!
「どうしよう」
え、いや、あの、えっと、ほんと、どう反応すれば良いんですか?
迂闊に話せない事がどんどん増えていくんですけど。
えっと、古代龍が合計600、ルーネのお気に入りが合計1200。
合わせて1800でレベルアップだけだと360レベル換算……。
いや、ね?ステータス見るまでは全体的にそれぞれ50も上がれば良いかなーとか思ってたんですよ。
まさかね?こんなにガッツリ上がるとは思ってなかったんですよ。
それにね?古代龍の加護よりも気に入られた方が高いとは思わないよ?
そもそもね?何この状況。
そうして呆然としているとルーネ先生の目が覚めたらしい。
「おはよう、タテヤ君」
「おはようございます。ルーネ先生」
「うん、受け取ってくれたみたいだね」
「加護について色々聞きたい事もあるんですが、その、まずですね」
「うん?」
「起きますので退いて頂けると……」
垢BANが怖いんです。
逃げられない上にログアウトも封じられているこの状況が非常に心臓に悪いです。
「んー……」
「せ、先生?」
「ぐー……」
「寝たァ!?」
もうやだ誰か助けて!
そこに救いの声が掛けられる。
「ルーネ師匠、タテヤは起きましたかの?」
「あ、師匠!助けて下さい!」
「おお、起きたか。ルーネ師匠は?」
「寝ました!」
「……そうか、出て来れるか?」
「関節極められて動けません!」
「……そうか。起きるまですまんがそのままじゃの」
「師匠!?」
「さすがのワシでも無理には起こせんからの」
「ええっ!?」
「タテヤ君うるさい」
「あ、すみませ ガッ!?」
うるさかったのか不機嫌そうにしつつ左手で俺の顎を打ち抜いたルーネ先生。
ダメージの無い一撃は一瞬で意識を刈り取った。
またかあ……。
「タテヤ?…入るぞ。ああ、これは出れんのう」
そうして師匠が見た物は関節を極められたまま気絶している俺の姿と。
上に乗って熟睡しているルーネ先生の姿だったと言う。
その後しばらくしてルーネ先生が先に起きたらしく今度は関節を極められていなかった。
ログアウトも出来るようになっていて何が原因だったのだろうかと思うがわからない。
先生はどうやって入ったのだろうか。
俺がテントを出るとダンガロフ師匠の前で正座させられているルーネ先生の姿。
「起きたか。ほれ、ルーネ師匠?」
「寝ぼけちゃってごめんなさい!」
「は、はあ」
「しかしまさか熟睡とは。そこまで気にいられるとはやるのう」
「はい?」
「ダンガロフちゃんが居たからちょっとね?」
「ルーネ師匠。だからと言って弟子を気絶させないで下さい」
「はい…」
「ま、まあ事故は置いときましょう。師匠、今日の予定は」
「兎の数を増やして結果次第では次は狼じゃの」
「あ、そういえば言ってなかったのですが」
「む、どうした?」
「昨日貰った加護が効き過ぎてステータスがおかしい事になってます」
「……師匠」
「だ、だって良い物あげるって言ったじゃない!」
「しかしそうなるとどうするかのう」
「俺は一対多の練習をしたいと思うのですが」
「ふむ。そうじゃの、四匹にするか」
「えっ」
「身体で覚えろ」
「あ、じゃあ私がたまに弓矢で撃ってあげる!」
「ヒィ!?」
「能力が上がったなら慣れんといかんからのう」
「だね!」
「……ちゃんと助けて下さいよ?」
「「もちろん」」
四日目。
生き残りてえなあ…。
先生の矢から。
龍の知己で平均10
龍の友で平均25
龍の親友で平均50
です。
えらいもん渡されました。




