2-5 ゲーム内にて。三十日目。
リアルが慌しくなってきた今日この頃。
嬉しい悩みとちょっと困る悩みに挟まれつつもログインしました。
学校の事はゲーム内ではあんまり考えない!
考えないったら考えない。
自爆する彼女が居るからあんまり意味はないけれど。
「と言う訳でヨミに対してどうすれば良いのか、またはリアルで知り合いな人は俺に暴露しましょう会議第一回を始めたいと思います」
ヨミがちょっとしたクエストで居ないのでギルドメンバーを集めてからのギルマスの言葉に対しての返答はみなが無言で慰める様にこちらを見てくる事だった。
しばしの目線の交し合いの後、代表してアリスが手を上げる。
「タテ兄、疲れてる?」
「まあ、うん……」
最近連鎖的に起こり過ぎだと思う。
受け止めるのに時間が掛かるものが多いのが原因。
とても忙しいですはい。
仕方ないのかな?
そうなのかも知れない。
「精神的な物だから解決すれば治る……か?」
「多分治らない。不治の病」
「重っ!」
「ただ和らげる事は出来る。今日はそこから」
「おお…・・・」
後光が差してるように見えますよアリスさん。
でもね、後ろで円陣組んで相談してる面々と高速で何かしらへのタイピングを始めた人達との温度差が酷いね。
そんな中でも泰然としてるミツさんは安心感があるなあ。
ライアさんはヨミに付いて行ってて居ないけど。
ミツさんと目が合う。
沈黙。
[こちらを見られましても話の流れからすれば只のチキン野郎ですかと返すかどうか悩んでいる事を伝えるかどうかで揺れているだけなのですが]
「俺のハートが砕け散る台詞はやめてくれないか!?」
[ジョークですよ]
「ほ、本当に?」
[ええ、1%程ですが]
「悪意の塊ッッッ!」
うっかり泣きながら部屋を飛び出す所だった。
未だにツタで全身ぐるぐる巻きな分言葉で遊ぶのが気に入った様です。
「それにしても唐突にどうしたんです?何か向こうでやらかしたんですか?」
「うっかり向こうで会った時にヨミって呼びそうになったんだけど」
『あー・・・・・・』
ケンヤに返答してたら何人か増えてる。喫茶店組か?
全員目が笑ってる辺り確信犯だな?
そうに違いない。
「楽しそうだね君達……」
「だって人の恋路に口を出せるのは友人のとっけ……ちょっとタテヤさん笑顔やめてくれませんか!?なんで前髪上げてるのに目元に陰が落ちるんです!?」
「うん?」
「ダメですよその顔!皆引いて…何人かは戦おうとしてますが」
「おや」
「うん?」
「あれ?」
気付けば部屋は静まり返りライアン、ガノン、ケンヤが身構えていた。
当人達も思わずと言った様相で自分は一体どんな顔をしていたのだろうかと。
思わず苦笑い。
あっちょっと皆喫茶店側に逃げないで。
お願いだから。
願い空しく結局逃げられたのでいつの間にか茶を入れていたミツさんと話す事に。
[それで結局何をどうされたいのですか]
「どうしようか?」
[不明瞭な回答には実力行使が妥当でしょうか]
「それはちょっと……」
[では行動するしか無いでしょうね]
「手厳しいなあミツさんは」
[メイドですので]
「執事じゃ?」
[私は問われたから返していますので]
「だからメイド?」
[だからこそメイドなのです]
そう言い残し階段を下りていくミツさん。
動きが滑らかになっているので少しずつ直しているのだと思う。
ぼんやりと今日は勉強の日にするかなと思いつつ淹れてもらったお茶を一口。
うん、美味い。
あれ、結局皆に相談出来てないんだけど。
まあ良いか、またの機会に個別に聞いてみよう。
うっかりしてますね。
≪言語学がレベルアップしました≫
≪ギルドチャットに複数件の書き込みが有ります≫
また増えていた王都からの色々な品々を処理していた所でふと気付けばこのログ。
一体なんだろうと見てみれば喫茶店側に行った面々からの怒涛のメッセージ。
『タテヤさんヘルプ!ヘルプお願いします!』
『今日のお客さんは一体なんだ!?全員メイド服だぞ!』
『メイド部隊!もう発足してたんですか!』
『嘘でしょ!?』
『ケンヤ君何か知ってるの?』
『掲示板の方でリアルメイドにご教授願い隊と言う人達が居まして』
『『『えっ』』』
『おそらくミツさんに会いに来たのでは無いかと……』
『それならまあ、普通に応対すれば良いのかな?』
『静かな方も多いですね』
『でも皆さんテーブルの下で指が凄い勢いで動いてるんですけど』
『あ、代表の方が「ヨルミちゃん」希望だそうです』
『『『えっ』』』
えー。
『今日はゆっくりしてたいんだけど』
『『『ダメ』』』
『暴動には発展しませんが威圧のある笑みって怖いです!』
『男性陣が既に被害に!』
そして無情にもノックされる自室の扉。
居並ぶ女性陣。何故か居るアリス。メイド服を持ったミツさん。
まあ、流されましょう。
「「「「「「「「………………」」」」」」」」
「ヒッ……」
階段を降り始めて階下にスカートの端が見えたと思った瞬間下の喧騒がピタリと止んだ。
自分に続いて降りようとしていた面々も異様な雰囲気に動きを止める。
思わず動けない視線の圧力。
「これ行かないと駄目?」
『お願いします』
「駄目かあ……」
意を決して再び降り始めると静かな興奮がさざ波の様に外まで伝わっていくのを感じた。
もう既に怖いです。
あ、今日の変装には一手間加えてベールを付けてます。
ただそう言うの関係無しにバレそうなんですが。
何名かにはバレていた様で意味深な笑みを向けられました。
胃痛が発生してる気がします。
まあ背丈一緒だからね……。
それはそれとして。
「今日も戦いに来ました魔王の兄貴!」
『今日は不在です』
「な、何ィ!?」
『まあお茶でもどうぞ』
「しょ、しょうがねえなあ……」
一般のお客さんも来る訳で、そう言う場合はメッセージボードを介した会話。
世紀末ファッションで来る奴が多いのは何故だろう。最近の流行りですか?
ただそれでも暴れようとするプレイヤー達は増えた闇討ち部隊によって消えて行く。
いつの間にかお客さんとして来ていたメイドさん達も居ないのですが。
あ、路地裏に一瞬翻るスカートが見えた。
無茶しやがって……。
楽しそうですね。
ヨミから着信。
『アンタ一体何やってるの?』
『向こうからやってくるんだから仕方ない』
『悪ノリは?』
『若干』
『ちゃんと楽しんでるなら良いけれど』
『流れに乗ったらこうなった』
『今度会った時に報告書でも書いてもらおうかしら』
『絶対カオスな事になるんだが』
『……アンタ以外で頼んでおきましょうかね』
『えー』
『まあ頑張りなさい』
『まあ楽しんどくよ』
『じゃあ』
『また』
『なんでこのやり取りが向こうだと出来ないのかしらね』
『なんでだろうな?』




