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2-4 ゲーム内にて。二十九日目。

03/08追記

やる気とアイデアがストップしてしまったので別作品を書いています。

しばらくはこちらで。


没落失敗男子は平穏を望めない

http://ncode.syosetu.com/n2797dv/

周囲から湧き上がる歓声。

店の前のスペースで繰り広げられるPvP。

プレイヤーが経営する店の近くではすっかりお馴染みと化した光景だがそれでもやはりホットスポットなる場所が存在している。

ここもその内の一つ。

ここは魔王が経営する喫茶店。

そして店の主人は現在重鎧に身を包み顔を隠したまま戦いを続けていた。

ちなみに店に来ていた常連達は鼻息荒く挑んでいった新参者にそっと手を合わせていた。


『顔を見せると外見で釣られた者が入団しようとして来るから顔を隠したまま勧誘しろ』と言う結構な無茶振りを吹っかけられた上にしばらくフィールドに出る事無く戦い続ける事を命じられました。

そんな魔王です。

今自分は一対一を望んで来る人達相手にかなりのハンデを付けたまま戦い続けてます。

具体的に言うと移動速度低下と攻撃速度低下に加えて火力関連のスキルがほぼ使えません。

ステータス差でゴリ押してますが実際辛いです。

皆全力でダメージを入れようとして来るのは『魔王』を相手取るとしたら普通なんですかね?

なんとなくで名乗ってしまった名称ですがこの世界に本物が居て、尚且つ噂が届いた時に偽物を消そうと激情に駆られない事を祈るばかりです。

さて、嘆きはここまでにして置いて現状を説明するとしましょう。

現状はですね。


初見殺しをしています。


「本当に硬いなアンタ!いや魔王か!」

「……」


左手に重たい鉄製の五角盾を籠手との合致による補助付きで持ち、相手の攻撃を凌ぐ。

右手には何故か重たい鉄製の竹槍を持たされており、相手を困惑させつつも凌いでいる。


「はっ、ダンマリかよ。良いさ、勝ったらその顔拝ませて貰うからなあ!」

「……」


戦いの最中でも話し掛けてくれる相手に何か返したいが凌ぐのに手一杯で口を開く暇が無い。

兜って見てる分にはカッコいいけど実際に被ると視界が制限されるからとても辛い。ヤバい。

しかも向こうは取り回しやすいサイズの戦槌と左腕に固定してある小盾である。

両腕でもって振り回せる分一撃が重く、こちらの槍は目前に立てられる障害物扱いと化している。


「防戦一方だなぁ?閉じこもってねえで出て来いよ!」

「……!」


そもそもカスミからジト目で装備一式を渡された時から嫌な予感はしていた。

何故、全身鎧なんだ。

何故、竹槍(鉄製)なんだ。

何故、足のパーツが異様に長いのか。と言うかこれ大道芸人がやる芸の一つの高足じゃないか?

等々言いたい事はあったが明らかに色々言いたそうな雰囲気を出されていては引くしか無く。


「……いい加減にしろやあああああああ!なんだお前!だんまりか!?だんまりなのか!?」

「……余裕が」

「あぁ!?まだ耐えられるってのか!それならこっちも本気出すしかねえなあ!」


違う、そうじゃない。と言いたいのだが更に鋭さを増した猛攻にタジタジとなり、対処に追われる。

盾で受ける事自体はまだなんとか出来ているが自分は槍なんて使った事が無いし大振りする隙も無い。

なのでこちらは全力で受けに回る事しか出来ず、結果として被弾は0だとしてもお互いにダメージが稼げない。

ひたすらガインゴインとお互いの盾に武器がぶつかり続け、段々と足技の応酬も混じって来た頃。

ふと相手の攻め手が止まる。

警戒しつつも相手を窺えば呆れた表情でこちらを見ていた。


「なあ、『魔王』サンよ」

「ん?」


先程までの威勢は何だったのかと思う程に静かになった相手に釣られる様に周囲も静まり返る。

その中心で男は問いを発する。解り切った問いを。


「俺の攻撃でだ」

「なんだ?」

「ダメージはあったか?」

「無いな」


現実を伝えると男は渋面を作り、『魔王』の所業を知っている者達を恨めしそうに睨み付ける。

がしかしそれも数秒。再びこちらに視線を合わせた時には楽しそうな笑みを浮かべていた。

なんで笑顔なんだろうか。


「噂に聞いてはいたが『勝てない』ってのは本当らしいな」

「そうでもないぞ」


師匠と先生には多少成長した位だと手加減した上で瀕死にされるしな!


「ならその鎧を脱いで戦わせてくれるのか?」

「それは……」


どうだろうか。一応今日は顔見せNGで通してる訳だけども。

顔を見せなければ鎧を脱いで戦っても良いのかな?

だが勝手にやると怒られる。絶対怒られる。それは避けたい。

なので一度竹槍を地面に刺してから相手に手の平を向けて一時休戦のポーズを取る。


「本気を出して良いか聞くのでちょっと待ってくれ」

「お、おお? ……今戦ってる最中なんだがな。まあいい、頼む」


今一つ腑に落ちないと言った表情ではあったが待ってくれる様なので安心して意識を切り替える。

周りも興味深そうにしつつも相手がどう負けるかで賭けを始めている辺り慣れは怖いなと思った。



さて、どう聞けば良いやら。

とりあえずヨミを呼び出してみる。


『おういヨミ、ちょっと話せるか?』

『んなっ!一体何!今度は何呼び!?』


一体どうしたのだろうか。いつもは冷静沈着なヨミが混乱している様子を聴いている。

リアルの方で何か問題でもあったのだろうか?


『大丈夫か?』

『アンタのせいよっ!』

『何が!?』

『きょ、今日、下の名前で呼んだじゃない!』

『え? ……あー、呼んだな、うん』


確か今日の朝の挨拶は下の名前呼びだったなと思い出す。

でもこの前家に来た時には許された筈だったのだが。


『学校ではまだこっちのメンタルが耐えられないのよっ!』

『……そうか』


予想外と言うか何と言うか。

ヨミってこう言う性格してたっけと思ってしまう位には想定外だったらしい。


『とりあえず盛大な自爆をしてくれたお陰で疑問が解けた。ありがとう』

『……もしかして、関係無い理由だった?』

『うん』

『ログアウトしても良いかしら』

『それはちょっと待たないか』


自分としては早い所こんな戦いなんて切り上げて執務室でのんびり過ごしたいのだ。

決して師匠と先生に会いに行って修行を付けられたく無いからとかじゃ無いんだ。


『まあ話を戻すとだ。今店の前で戦ってるんだが鎧が動きにくくてな』

『うう……。 ああ、さっきカスミから言われてたのはそれだったのね』

『何か言われてたのか?』

『なんでも「イベント以来放置された恨み」で置物と化す装備類作ったらしいわよ』

『何も言えんな』


精神的ダメージを負った者にはスルーする事が必要。

なので進まない話を進めれば自分が原因だったと言われ若干の困惑と気まずさ。

確かに放置してたわ。うん。


『ちなみにどんな装備渡されたのアンタ』

『鉄製の全身鎧と鉄製の竹槍』

『鉄製の竹槍』

『そう、竹槍』

『意味不明ね』

『だろう?』

『まあ相手が男なら普段通りで戦って良いわよ』

『女だと?』

『一撃で仕留めないと粘着されるわね』

『……既に十数分戦ってたんだが』

『男で良かったわね』

『全くだ』

『さて、それじゃ勝って来なさい』

『はいよ』


通話を終え、アイテムボックスに鎧と竹槍を収納する。

ただ兜は自分の成長も見込んで残して置く事にした。

後は右手にも盾を持ち、反射ダメージを有効にすれば用意は完成する。

いつも通りの構えを取れば待ち構えていた相手の顔に笑みが浮かぶ。

あ、このスタイルは既にバレてたみたいですね。


「ありがとよ、魔王殿」

「ただの運が良い一般プレイヤーですよ、自分は」

「運が良いのは恨まれても仕方無いと思うが」

「……勝った方が運が良いと言う事で」


そうかい、と相手が呟いた所でお互い再び意識を切り替えて行く。

同時に踏み出した二人の真上に流れる空は今日もまた快晴だった。



勝負には勝ったけど今度は顔面傷塗れだと勘違いされました。

兜を脱がない理由としては正しいか……。

戦闘シーン。

戦闘シーン……?


多分戦闘してました。

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