2‐2 ゲーム内にて。二十七日目
書き方を忘れました。
二十七日目。
いつも通り学校を駆け巡る放課後を過ごし、関わる人数の増加に若干怯えつつも帰宅してログインしてみれば妙にそわそわしたヨミが執務室(魔王の部屋)の中で待っていた。
こっちの姿を見るや否や席を立ちこちらに詰め寄って来る。
「きょ、今日のあの挨拶は何か理由があったのかしら!?」
既に若干染まった頬もそのままに口調も慌ただしく聞いてくる。
突然の事に驚き若干身体を後ろに逸らしつつも落ち着かせないとと思い口を回す。
「落ち着けヨミ、口調が凄い事になってる」
「あ、そ、そうね。でも説明してもらわないと納得出来ないんだからね!」
その右手にはいつの間にやら剣が握られておりいつでもこちらを斬れる状態になっていた。
「とりあえず一旦落ち着け」
うっかり斬られたくは無いので剣を持った右手を上から左手で握る。
同時に振り上げていた左手もこちらの右手で捕まえれば更に顔を赤くし、その身体の力を抜いていく。
「……はい、ごめんなさい……うぅ」
うん、可愛い。でも自分の顔も若干赤くなってると思う。
強制的にクールダウンさせた所で本題に入る。
「さて、なんで突然朝の挨拶をしたかと言うとだ」
「切り替え早いわね!」
お互いにまだ熱は引いていないものの強引に切り出す。
「下手に引っぱるとお互い傷が深くなるぞ?」
「そ、そうね」
「まあ理由は単純だ。名付けて『~お友達から交際相手へ~ まずは朝の挨拶から!』作戦だ」
”理由”を一息に言い切るとしばしの空白が場を満たす。
ややあってヨミがポツリと零す。
「……一つ言っても良いかしら」
「なんだ?」
「馬鹿と天才って紙一重よね」
「自分でも無理矢理なのは重々承知だよ……」
的確な作戦名だとは思うがコレ、男友達に相談するタイプの名前じゃないかと思う。
「作戦名に対して色々言いたい事はあるけどその前に外に出ても良いかしら」
あれこれ考えているとヨミが無表情のまま顔全体を真っ赤にすると言う技を披露しつつ窓枠を求めて足を動かそうとしていた。
「まあ別に構わないけど。一体どうした?」
「察しなさい」
「どの部分から?」
「恋する乙女は凄いのよ?」
そう言われ、先程言った事を思い出す。お友達から交際相手へ。これが意味する物は?
「なんとなく察した。だけど行った先で名前を叫ぶのは勘弁してくれ」
適当に男がやる様な行動を言ってみればヨミの動きが止まった。
「……なんでやろうとしてた事がバレたのかしら」
「え、ホントにやろうとしてたの……?」
思わず口調が素に戻るレベルの衝撃が走った。
その後どうにか思いとどまるように説得を試みている内に落ち着いたのかヨミの目に光が戻って来た。
そしてそのままソファーにうつ伏せでぐったりしだした。
数分が過ぎ、流石に空気が気まずくなって来たので恐る恐る声を掛ける。
「……大丈夫か」
「……駄目かも知れないわね」
「冷静になったか?」
「別の意味で叫びたくなったわね」
「勘弁してくれ」
「やらないわよ」
「助かる」
大きくため息を吐けばヨミにまた頬を染めたまま睨まれる。
睨み方に力が無いと思うのは自惚れだろうか。
その口元が若干笑っていた様に思えたのだから。
反応の速さにビックリです。ありがとうございます。19:57




