118 騒がしい一日と組手の時間
しばらくは投稿間隔が不安定になりそうです。
予定は未定ですが。
※登録名をペンネームのモノに変更し、リンクを作成しました
二十一日目。
そろそろ日が傾き、昼と夕の境目の光を屋上にて浴びながら正対して立つ少年少女が居る。
片方は黒の髪を腰まで垂らした少女。
もう片方は黒の髪を目元を隠す様に頬まで伸ばした少年。
「それじゃ要件を言わせてもらうわね」
「は、はい」
少女は平然と、いや少し緊張した面持ちで言葉を続ける。
少年はおどおどと、緊張しきった身体でそれを聞く。
「好きです。付き合って下さい」
その言葉を境に時が止まったかの様な静寂が訪れる。
少年は上手く回らない頭を再回転させ、どうにか言葉を絞り出す。
「えーっと……。え、今なんと?」
「私が貴方に告白をしました」
「え、てっきり罵倒されるのかと思ってたんだけど」
少女はさっぱりとした顔でそう言い切り、少年は自分の性格から導き出される疑問を問うた。
瞬時に少女は声を荒げ、少年は一歩後退さる。
「何よそれはっ!しないわよっ!」
「ひっ、ごめんなさい!」
そこで少女は何を思ったか一度ため息を吐いた後にやや慌てだす。
少年が不思議に思っている間にも少女の口調は上ずり畳みかける様に言葉を発する。
「と、とりあえず返事は後日で良いからね!」
「は、はい」
「それと告白の方は本気だから!」
「わ、解りました」
「それじゃまた明日!」
「え?あ、はい、また明日」
屋上から去る時に少女の頬が赤く染まっていたのは気のせいだろうか。
それを見る事が出来なかった少年はそれからしばらく困惑し続けていた。
◇◇◇
「注意が散漫だね? それっ!」
「へ? どああああ!」
現在カウンター無し+修練の輪装備で龍神様との組手中です。
ジャストガードでひたすら凌げと言われたのでやってますが掠っただけで3割ほどHPが持って行かれる現状に恐怖を抱き続けています。
一撃の速さは自分でも見えるぐらいに遅くしてくれているらしいのだが本当にそうなのだろうか。
「ふむ、その感じだと人付き合いの悩みかな?」
「雑談を振りながらその貫き手はやめてもらえませんかね!?」
「それじゃ特訓にならないじゃないか」
「ええ……」
昨日「しばらくここで鍛えて行くかい?」と風呂に入っている途中龍神様からありがたい申し出、もといこれ断ったらどうなるんだろう的な提案を受け、鍛える事になった本日。
集中しないと簡単に死に戻りしかねない現状なのだがどうにも集中し切れないのはやはりログイン前の一件が関係しているだろう。
まさか『あの』四方木さんから呼び出しをされた上にクラスの面々からの手助けによって、今まで放課後にやって来た事を肩代わりしてまで自分と四方木さんを二人きりにしようとするとは思わなかった。
「確かに合ってますよ、人付き合いの悩みです」
「へえ、君達に合わせる為に口調を軽くしているけどそれはちょっと軽過ぎないかい? えい」
「ぬおおおお! すみませんすみません!舐めた口利きましたあ!」
「まあそこまで気にしてないんだけどね」
「ならなんで今のが一番速かったんですか!?」
「ああ、そこに虫が飛んでたからね。潰してあげようかなって」
「嘘だッッッ!」
今朝の事である。
「今日の放課後、屋上に来て」と授業開始前の時間に右隣の四方木さんから渡された紙片に書かれたそれを見て自分はまず四方木さんに対して何をしでかしたのかを考えだした。
何しろ彼女は美少女だ。容姿は勿論の事学業テスト等も基本上位の部類に入る。
そして彼女の一言で大体の諍いが静められる事が多く、それなのに反発する者も少ないと言う貴女一体何処の聖女なんでしょうかと言う部類の少女である。
そして大体は話し合いの為に呼び出しと言う手法を取っており、自分が被害妄想に近い事を考え始めたのも無理はないだろう。
「それで、君の悩みは女性絡みと見た」
「なんか胡散臭い占い師みたいになってません?」
「ははは失礼だね君は。 そら」
「うおおおお! 首は!首狙いは勘弁して下さいよ!」
「そこに何かが居る様な気がしてね」
「幽霊でも取りついてるんですか俺は!」
その後の授業内容はさっぱり覚えていない。
ただノートは取っていたので後でどうにかしようと思う。
思い返せば休憩時間にも逃げ出す事をせずやって来た人達に前髪をかき上げられ見た人は鼻血を出して帰って行くと言うのを繰り返していた気がする。
自分の体臭はそこまで酷いのだろうか?
昼食も確か引っ張られる筈だったのが気付けばクラスメイト達が説得をしてお帰り願っていたような気もする。
久々に静かな日を過ごして居たような感じがあった。
「それにしてもモテるんだね君は」
「え、何処がですか?こんな顔ですよ」
「自覚は無いのかな?」
「ははは、駄目な顔なのは自分でもわかってますから。皆優しい人で良かったですよ」
「君は一度自己評価を変える気は無いのかい?」
「どうなんでしょうね、顔だけで好かれているとは思いたくないからでしょうか」
「ふむ、自己嫌悪って訳じゃ無さそうだね」
「ただあの人から告白されるとはなあ……」
「へえ?何かあるのかい?」
「それに答えても良いんですが」
「何かな」
「攻撃の手、少しは緩めて貰えませんかね」
「駄目だよ?」
「そうですかー……」
そして迎えた放課後。
何故か屋上に上がる途中に妨害される様な事も無く辿り着けばいつもは人で賑わっている場所も自分が立っている校舎の上には人一人居なかった。
代わりと言うのか周りの校舎の上にはいつもより多い人が居たが気を回してくれたのだろうか。
先に辿り着いて待っていると四方木さんがやって来て、先の回想の通りとなる。
自分はあの後しばらく放心状態になった後気付けば家へと辿り着いていた。
そんな精神状態のままログインするのもどうかと思ったが一旦頭を整理する為にもと思いログインしたがどうにも気持ちは切り替えられなかったらしい。
「それにしても」
「それにしても?」
一旦思い出すのをやめて組手に意識を戻せばそれだけで伝わったのか再び元の速度に戻る。
それを左前腕と右手に持った盾を用いて受け続ける。
時折脛狙いの蹴りが飛んで来るのでタイミングを合わせて脚甲で受けないと悶絶する羽目になる。
と言うか既に数回食らっている。
「なんで神様直々に組手して貰ってるんでしょうか自分は」
「龍の中でも一番上ってだけなんだけどね、神では無いよ」
「龍神って聞いたら山一つ分のデカさを想像してたものでして」
「一応その姿も取れるけどね、戦いにくいじゃない?」
「その発想が出来る貴方にビックリです」
誰だ教えたの。ルーネ先生の強さはもしかしてこの人からか?
「まあとある人族に言われたからなんだけどね」
「へえ、どんな人なんです?」
「そうだねえ、『身体がデカイと言う事は的もデカくなる!つまり被弾も増えるぞ!』って言われてね。僕も痛いのは嫌だから姿を真似してみたんだけど存外扱いにくくてね。慣れるまで何年掛かったかな」
「……」
しばし言われた言葉の意味を考えてしまい、動きが止まった所で思い切り吹き飛ばされる。
激減したHPに戦慄しつつも回復魔法を掛けてもらい立ち上がる。
向こうも予想外だったようで一発で全快する物を掛けて貰った様だ。
「どうしたんだい?急に」
「いえ、何も。あ、それ何年前ですかね?」
「人族の間では神話時代、だったかな?」
「あー……」
「何か知っている事でもあるのかな?」
「いえ、俺は何も知りません」
「ふうん……?」
ま、いつか聞く事にするよ。
なんて言ってくる龍神様に愛想笑いを返しつつ思考の片隅でこう思う。
開発者(?)さん達、関わり過ぎじゃないですかねえ……?
そして組手が終わり今日のダメ出しも終わった所でメッセージが届いている事に気付く。
お茶葉さんからの様だ。
『さっきヨミが顔真っ赤にした状態でログインして来たんだけどさ
魔王の家にある私室から出て来ないんだけどタテヤ君は何か心当たり無いかな?』
一体全体、なーぁにがあったんでしょうかねぇー。
設定の2話に関してですが消そうかなと思っています。
あのネタバレは自分でもどうかと最近思いまして。
活動報告にでも載せて読みたい御方が居られましたら読んでもらう形にでもしようかなと。




