117 友人とのチャット 二十日目
二十日目。
『おい』
「はい」
『そろそろ何が起こってるのか教えてもらいたいんだが』
「すまぬ、すまぬ……」
『謝られても困るがまあ聞いて行こうじゃないか』
「今日は山に登って露天風呂に入ってた」
『は?』
「具体的に言うとピンボール方式で上に打ち上げられながら山登りした後に露天風呂に入った」
『そこ具体的に言われても経緯一切予想できないからな?』
「こっちも良く分からんままに誘われてなあ」
『まあ最初から聞いて行こうか。ちなみにこっちは今日も今日とて平常運転だったと言っておく』
「メイド服で戦闘か……、その内戦列組めそうだな」
『既に喫茶店経営の為にメイドは何人か雇った』
「行動早いっすね」
『面接はちゃんとやってるから安心しろ』
「その辺は心配してない。が、」
『が、なんだ?』
「それ、大体トッププレイヤー勢とか言わないよな?」
『……』
「え、マジで?」
『用心棒ってカッコいいよねって理由が多くて……』
「まあ、方便だろうが決め手は?」
『メイド服を着てみたいってのが多かったな』
「後は?」
『「不利益になる様な事はしないから安心して下さい」って言われたんだけど』
「まあ……、やられたらギルド総出で追い詰める気満々だしなあ」
『既に処されたプレイヤーも居るのよねー』
「えー……」
『第二陣だから仕方ないとは思うんだけど』
「まあ仕方無い面も多いか」
『熱い勧誘パーティーを断り続けたミツさんが、その、ね』
「斬られた?」
『蹴られてた』
「ああ……」
『HPが一撃で飛んでたな』
「だろうな」
『それを見て更にウチの評判が強固になった』
「ああ……」
『魔窟らしいぞ』
「おお……。あ、そうだそうだ一つ考えを改める事にしたんだった」
『何をだ?』
「誤魔化して来たがとうとうただの1プレイヤーと言うのを諦めた」
『今更だな』
「まあなあ。詳しく話すと凄い人に会った」
『どんな?』
「龍神様」
『……』
「しかも露天風呂入ってた」
『……』
「で、その人に会う為に山登りをしたんだが、信じられるか?」
『……』
「おーい?」
『あ、すまん今頭抱えてた』
「まあそうなるよなー」
『それで?今度は何貰ったんだ?』
「何も貰っては無いが大量の謎を手に入れたぞ」
『へえ』
「何故か山が街から見るより遥かに高かった」
『ん?』
「それと岩肌ばかりで所々雪も積もってた」
『あれ?』
「でだ、今思い返してみれば街から見た時は頂上ぐらいにしか雪が見えなかったと思う」
『だな。一体なんだってそんな摩訶不思議山に登ってるんだ?』
「ロンとライアに誘われて登ったんだが辛かったな……」
『ちなみに何時間で登れたんだ?』
「大分掛かった。昼前くらいか?」
『それで登れるってのも凄いとは思うけどな』
「普通は一日掛かりだもんなあ」
『それで、景色は?』
「めっちゃ高くて若干怖かった」
『ああ、そう言う……』
「見晴らしは良かったけどな」
『それで、何話したんだ?』
「まあ龍系の人達との会話内容だったりロンとライアの昔話を聞いたりしてたな」
『お爺ちゃんっぽいな……』
「あ、そこに関してなんだが一つ違う部分があってな」
『なんだ?』
「イケメンの少年だった」
『……おじい、ちゃん?』
「年齢的にはそうらしい」
『信じにくいがお前が言う事は残念ながら嘘は無かったしなあ……』
「ホントビックリだよなー」
『ホントになっ!』
「始めてからえーっと、一か月くらいか?」
『イベントも合わせたらそれぐらいだな。毎日ビックリしてるんだがこっちは』
「飽きない日々ですね」
『いや、それは正しいとはあまり思えないんだが?』
「安心しろ、自分も今何言ってるかわかってない」
『おいコラ』
「まあ今日は平和な一日を自分は過ごしてた」
『そう言えば平和な起床、もといログインだったのか?』
「おう。左隣にライアが寝てて胸の上にロンが乗ってた」
『爪は?』
「立ってたら心臓の位置」
『ある意味怖いな』
「怖かった。それで、そっちは?」
『とにかく忙しかった』
「こっちはのんびり風呂に浸かって景色を眺めてた」
『斬っていいか?』
「勘弁して下さい」
『まあバイトの試運転だったが割とどうにかなったな』
「もう攻略とか関係無い面で楽しんでるな」
『知り合いが居れば駄弁り場って面もあると思うからな』
「それも大事か」
『そっちはあんまり関わって来なかったもんなあ』
「今てんやわんやしてるよ」
『楽しんでくれると何よりだが……、どうだ?』
「まあ飽きはしないだろうな」
『色々とな』
「まあそれで明日からは組み手をして貰える事になったんだが生き残れるだろうか」
『……誰と?』
「龍神様と」
『上位互換か……』
「手加減はしてくれるらしいけど余波で消し飛びそう」
『頑張れとしか言えないな』
「ああ、さらなるプレイヤースキルを身に着けられるようにしないとな」
『ただの格闘家になりそうだな』
「……タンカーってなんだっけ」
『ヘイトを集めつつ味方を守る職業だな』
「俺のやってる事って?」
『ハリネズミの如く全てを跳ね返してるな』
「盾ってなんだっけ?」
『守れよ、と言いたい』
「守ったら負けなんだよなあ」
『攻撃手段無くなるからなあ』
「ドヤ顔と言うよりは待ち戦法だからなあ」
『まあ今はまだそれでも行けるだろ』
「今は?」
『防御貫通系とか来たらどうするんだお前』
「職務投棄で防御力0にすれば……」
『普通にダメージ食らうだけじゃね?』
「あ」
『……マジか』
「ま、まあHPはそれなりにあるから……」
『紙装甲の部類だと思うが?』
「こ、今後改善しようと思ってるから」
『はあ……』
「と、とりあえず今日はこの辺で解散するか」
『露骨だな。まあ構わんが』
「あ、それと特に関係の無い事なんだが」
『まだあるのか……』
「今日の事なんだが隣の席の人がえらく不機嫌でな」
『ほう』
「その人を横目で見た時にヨミが思い浮かんだんだがなんでだろうな」
『他人の空似じゃないか?』
「そうか、そう言う事もあるか?」
『そう言う事もあるだろうな』
「そうか」
『そうだと思うぞ』
内容に詰まると何日か悩んだりするかも知れません。
こればっかりは辛いのでのんびり待って頂ければ嬉しいです。




