114 友人とのチャット 17日目
十七日目。
『で、説明して貰うわよ』
「アッハイ」
『まずは何処に居たのか教えてもらおうかしら』
「なんやかんやで隣街まで行ってました、はい」
『情報は本当だったのね……』
「まずログインした時からもう下がてんやわんやだったからなあ」
『一気に加入希望者も増えて対応が面倒になったのよねー……、勧誘も増えたし』
「しばらくは全面的にお断りかねえ」
『そうなりそうね。……普通のプレイにも支障出て来ちゃってるし』
「通知量もおかしかったからなあ。それに何、MVP投票って」
『こっちも聞きたいんだけど祝福の効果。あれ、何?』
「体感としては魔獣含めた動物に好かれやすくなるって感じだったが」
『投票の方は公式イベント。そっちに6割近く入ってるみたいよ』
「マジか」
『マジよ』
「マジだったか……」
『ええ。それで、今日は?』
「まあ流れとしては家から逃げて冒険者ギルドに行ったら指名依頼を受けた感じだ」
『厄介事?』
「依頼自体は隣街までの護衛」
『へえ』
「護衛対象の少女がバル王の孫だった」
『……なんで受ける事になったの?』
「まあ、ノリと言うか街から逃げ出したかったと言うか……」
『そうしてくれて助かった面もあるから強くは言えないんだけど、少しは連絡も頂戴』
「その後畳みかける様に色々あってな、忘れてた」
『へえ、一体何なのかしら。デカイ狼と一緒に居たって噂もあるんだけど』
「そのデカイ狼なんだがな、神狼だった」
『は?』
「よく言われてるフェンリル?らしくて名前はロンって言うらしい」
『……えーっと』
「それで、色々話してる内に『神狼の守護』を貰った。呼べば来るらしい」
『えー……』
「後はまあ隣街で普通にバル王とお茶の時間を貰ってからログアウトしたなあ」
『色々とツッコミどころがある数時間ね』
「他にもいろんな種類のメッセージが届いてて驚いたわ」
『こっちは新規プレイヤーの参入で街ごと大騒ぎ』
「ああ、そう言えばプレイヤー増えたんだったな」
『そうよ?お蔭で街の付近の狩場は埋まるし』
「北側と西の山側は駄目だったのか?」
『まだレベル的にも戦術的にも安定しないのよね。野球方式が安定するみたいだけど』
「球は兎か?」
『兎ね』
「それで街の周囲の狩場がゲームが始まった当初レベルで混雑してる、と」
『そっちは知らないわよね?初日の混雑』
「知らない。どんな感じだったんだ?」
『モンスターが見えた瞬間プレイヤーのタコ殴りで消えて行くのってどう思う?』
「とても……、密集地帯です……」
『それがまた起こったから第一陣のプレイヤーは次の街に行こうって流れが起こってるの』
「ふむ、それじゃ皆こっちに合流して来るのか」
『一応街ごととか都市ごとに転移可能らしいからその辺は楽らしいわね』
「フィールドに出てた場合は?」
『専用魔法かテントを張るしか無いみたい』
「さすがに万能じゃないか」
『見つかるかも知れないけどね』
「魔法技能とか育てないとなあ」
『そう言えば異様に色々とレベルが上がってたんだけどバグとかじゃ無いわよね?』
「自分も詳しい数値は覚えてないが二桁単位で上がってたな」
『やっぱりあの熊かしらねー』
「悟った熊だろうなー。大分戦ってたし」
『気付いたら抱えられてたんだけど何があったのかしら』
「他から説明行ってなかったか?」
『「嫁を運ぶ魔王」としか言われなかったから信じない事にしたわ』
「ああ……」
『それで、本当の所は?』
「まあ寝てる所を起こすのも悪いしって事で運んだのは事実だ」
『服とか結構破れてたと思うんだけど?』
「持ってたマントで包んで運んだから直接触った部分は少ない……、と思う」
『……感想は?』
「言いたくない」
『嫌悪的な意味で?』
「羞恥的な意味で」
『そう。……そう。そうなのね』
「怒ってるか?」
『いえ、先は長いなって思っただけよ』
「一体何がだ……?」
『いつかは気づいて貰うつもりだから、そのつもりで』
「お、おう。皆目見当もつかんがまあ任せろ」
『……それに謝らないといけない事もあるのよね』
「え、何か失敗したのか?」
『まあ、ちょっと前にね』
「ふうん?」
『まあ今は置いておくわ。それで、私も途中で街の外に出たんだけど囲まれちゃったのよ』
「何に?」
『妖精とか魔獣とか動物とかモンスターとかに』
「ああ……」
『それで困惑してたらライアさんが助けてくれてどうにかなったんだけどね』
「でも原因も彼女なんだよなあ」
『そっちの方が酷い事になってるかも知れないって言ってたけど何の事か解る?』
「先生の力とアル様のかごとヤクさんの装備類が合わさり大分解りやすかったらしい」
『結果は?』
「歩いてたら後ろに大名行列の如く群れが……」
『楽しそうね、それ』
「でも真横にデカイ狼が居たから緊張しっぱなしだったけどな」
『それに護衛任務もあったのよね』
「実際困った。まあどうにかなった訳だが」
『こっちはライアさん頼みで散らして貰った感じね』
「祝福は実際効果量が凄かったなあ」
『散歩がしやすくなるって言うか気配を森そのものに近くするらしいのよね』
「それで動物が多かったのか……」
『森に住んでるからって事でしょうね』
「まあそれは良いとして神狼のロンからもらった守護でクエストクリアが出来た」
『情報組が発狂しそうな事サラッと思い出すのやめてくれない?』
「思い出した物は仕方ない。とりあえずは使役可能枠が消えたみたいで新しく増やすにはまた別の特殊条件が必要になるらしい」
『使役はしてないけど守護って面で消えたのかしらね』
「多分な。後は狼にも自分の考え方は少しズレていると言うのを聞かされた……」
『最近のNPCは賢いわねー』
「軽いな!」
『まあ、ええ、実際特殊だと思うのよね……』
「そうかなあ?」
『普通なら絶交されててもおかしくないレベルの事態にこっちから巻き込んでるのよ?』
「そうだったのか?」
『その考え方が既に特殊よ……』
「ははは、美少女は守るものだろう?って感じにやってただけなんだけどなあ」
『女の怖い所は食い付かれないと逆に誘いに掛かるって言う面倒な性質があるのよね……』
「自分の女性不信が悪化しそうなんですがそれは」
『面倒でごめんね?』
「友人なら大丈夫だ」
『知り合いは?』
「まだセーフ」
『顔見知りは?』
「辛辣な事を言われなければ、多分、きっと、大丈夫」
『超絶美人からは?』
「何の罰ゲームを相手がやらされているのかを考えつつだな」
『つくづく損な性格よねー』
「まあうん、自信を付けるのって大変だよな」
『それは解るけど……』
「それでもだな。思い込みから十数年間顔を隠して生きて来たからその辺がなあ」
『その割にはモテてるみたいだけど?』
「モテてるのかなあ?」
『……まあ、NPC、だけど』
「関節技はもう嫌だあ!」
『あー……。自覚無しかしら?この反応は』
「何の自覚が無いって?」
『私の口からは言えないわね』
「悪い方向で?」
『良い方向だけど私からすれば悪い方向』
「じゃあダメかなあ」
『その根拠は?』
「友人の言葉は実際重い」
『……』
「どうした?」
『いえ、ありがとう』
「そうか。……あ、今日はこの辺で落ちる」
『はーい。また明日、学校で』
「……?」
『いつになったら気付くのかしらね?』
「待て、それは色々と胃に悪い」
『それじゃおやすみなさい』
「お、おやすみなさい」
久々のチャット。
それと昨日の夜11時前後に投稿しようとしたのですがサイト側でエラーが起こっていたのでこんな時間になります。
すみません。




