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109 六日目深夜~七日目早朝

持ち上げた所で戦闘の余波で服がボロボロになっていたヨミに気付き街から出る前に装備していた魔王装備のマントで包む事にした。ため息が聞こえたが流石に肌が露出している面もあったので目に悪かったのだ、許して欲しい。

その後の帰り道も元気な先生と謎のやる気に満ち溢れた味方達が突進にて道を開けて行き、呆気無い程に簡単に街に帰り付く事が出来た。

既に勝利の報が知らされて居たのか歓迎ムードだったのだが周囲のモンスターの群れは未だに街に対しての侵攻を止めようとはしていなかった。

疑問に思っていると先生が申し訳なさそうな顔をしつつ皆に説明を始めた。


「えっと……、『侵攻は止めるが落ち着くまでは耐えてくれ』って事を熊さんから言われてね」

『え?』

「勝ちは勝ちなんだけどね、ここまで来ちゃうと本能で襲っちゃうみたいで……」

『え……』

「だから、この一帯を全滅させないと終わらないんじゃないかな……」

『えー!?』

「わ、私も手伝うから、あともう少しだけ頑張ろうね!」

『はーい……』


元凶を倒してハイ終わり、とは行かない様だ。

残敵の掃討が残っているらしい。

士気がダダ下がりしているが最後までこなさないと防衛にはならないので戦わないとなあ。

でもその前に休憩を、少し、取りたいねえ……。

抱えたままだったヨミを丁度前線近くに居たカナミに渡して宿へと向かった。



目に光を感じ瞼を開けると木板の天井が見える。大分寝ていた様だ。

首を巡らせてみればここは宿屋の一室で、向かいのベッドにはヨミがメイド服姿で寝ていた。

確か昨日は最後に女子陣に押し付けてから退散した覚えがあるのだが。

多分いたずら好きな何人かがやったんだとは思うがわざわざ同じ部屋に戻しに来なくても良いだろうに。

早めに退散しないと俺がやったと勘違いされそうだ。


「んー……、あれ、天井?」

「おはようさん」

「おはよう。どうなったのか聞かせて頂戴」

「熊には勝ったけど後始末に追われてる状態だな。それとその恰好に関しては俺は何もしていないと言っておきたい」

「勝てたのね……。後始末?は詳しく聞くとして、かっこ……う?」

「言い訳をしておくとウチの女性陣に任せた結果そっちが横で寝てたと言っておく」

「……そう、わかったわ」


少しの後に目を覚ましたヨミに対して先に防御壁を作っておく。

こちらを見て、自分の服装を見た後にしばしの黙考の後表示枠を開き何事かを打ち込む。

少ししてこちらにもメッセージが一通届いた。


『タテ兄、私の名前出してないよね?』


アリス、お前だったのか……。

『言ってないぞ』とだけ返信しておく。

大分メンバーの性格を把握しているヨミにビックリです。

かと思えば「全員に『着せたのは誰?』って送っただけよ」と説明された。

ああ、なるほど……。

そして「タテヤの方に犯人からメッセージか何か届いてると思うんだけど」と聞かれる。

すまんアリス、バレているらしいので俺は自分が生き残る道を選ぶよ。


その後、笑顔のヨミに呼び出され床で正座をさせられるアリスの姿を見る事になった。

結構土や砂埃で汚れている辺り延々戦っていたのだろう。

その状態でも容赦無く叱る辺りヨミはメイド長にしか見えなくなってくる。

まあ昨日戦った後に自分のマントで包むくらいには服がボロボロだったので着せたのだろう。

それを説明すべきかどうかで悩んでいるとアリスから恨みがましい目つきで見られ始めた。

おっと、そろそろ助けないとな。


そろそろアリスがヨミの圧力で泣きかけていたのでフォローに入る。

説明し始めた所で顔を赤くしたヨミに自分も正座させられたがメイド服は自分のリクエストではないと言うと立ち上がる事を許される。結局フォロー失敗してるなコレ。

アリスに聞いた所によると他の装備類もすぐには調達出来なかったらしく丁度良く持っていたメイド服を着せたらしい。

その後は再びヨミを布などで包んで隠した後にこの部屋まで運び、置いて行ったそうだ。

何故この部屋?と思ったが休憩所だと覗こうとした連中が多発した為、らしい。

私の寝顔なんて覗いて意味あるのかしらね?とヨミは言っていたがうん、まあ、うん。

説明したら墓穴を掘りそうな気もするのでそっとしておこう。


「とりあえずアリスは無罪な訳ですが」

「そうだったのね。ごめんねアリス」

「……解ったから、そろそろ崩してもいい?」

「「あ」」


正座に慣れていなかったのかプルプル震えていたアリスは許しを得ると床にぐでっと寝転んだ。

ヨミはそれを見て「あら、慣れてなかったのね?」と言っているが正座って座り方結構難しくて膝に負担掛かりやすいんですって。

だからトドメを刺そうと近づかないであげて下さい。あ、つつかれてる。悶絶してるな。

そっとしておこう。


扉を開けた先にはアリサとカナミとミカとカナとカスミとアデルとコノハナとミノリと御茶葉さんと烏龍さんと代表さんが階段の傍で待ち構えていた。

こちらの姿を見止めると全員の動きが止まる。

代表して御茶葉さんが手を挙げる。


「一体なんです?その集まりは」

「えっと……、ヨミちゃんの寝顔はどうだったかな?」


ふむ。この人達も一枚噛んでるな?


「……答えないと?」

「部屋内に突入してヨミちゃんから昨日の事を色々聞き出します」

「一応小声でも良いですか」

「うん、オッケー」

「じろじろは見てませんがメイド服姿の少女が寝てるのって不思議だなあと思いました」

「そっちかー!そっちの評価かー!」

「ははは、普通に返したら絶対にからかいに来るでしょう貴女達」

「確かに君はそんな奴だったね!」

「はっはっは」


そこに参加者全員に宛てた通知が届く。

自動的に開いたそれには次の二文が書かれていた。


≪只今を持ちましてイベント名『アルタ街防衛戦』が完遂されました≫

≪10分後に通常サーバーに転送されます。イベントリザルトは後日送られます≫


「おお?」

「イベントクリア、ですかね?」

「しちゃったみたいだね」

「終わりましたか」

「それじゃまた明日、かな?」

「このままのテンションでイベント終わるって、そんな……」

「仕方無いね!」


皆で顔を見合わせ苦笑する。

後ろの扉が開いたかと思えばヨミの姿。


「タテヤ」

「なんでっしゃろ」


そこでヨミは一旦溜めて、ビシッと指を突き付けて来た。


「明日は反省会、するからね!」

「アッハイ」



それから数分後。

通常サーバーに転送された後は強制的にログアウトさせられ、眠りに入った。

締まらない最後だなあ……。

急ぎですが。

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