デートに誘うより誘われたいjk
寒い
夏は日が長い。午後7時を過ぎているのに、まだ夕日が地平線のうえに留まっている。
辺りがオレンジ色に照らされていて、それに負けないほど、深川愛理の頬も赤く染まっていた。
原因は、例のメールだった。
補習の休憩時間に彼から送られてきたそれを、深川愛理は二つ返事で了承した。メールを見た当初は嬉しさのあまり、補習に手がつかなかった。だが、時間が経つにつれて食事に誘われた意味を考える余裕も出てきた。これは、ひょっとするとひょっとするかも知れない。
成瀬とさかは、自分から女性を食事に誘うような男ではない。そんな男から、ふたりっきりで食事に誘われた。デートに誘われたのだ。それに、成瀬が深川と行くために予約したという店は、高校生では場違いな高級料理店だった。しかも、奢ってくれるらしい。
(なんだか、とさかが彼氏になったみたいだ…。やっぱり、あんなに高いお店を予約してくれたのも、告白する為のムード作りだったりするのかな?そ、その後はホテル行ったりしちゃったり!?)
もちろん成瀬にそんなつもりはない、いや、ないとも言い切れないのだが、いかんせん度胸がない。高校生に手を出すとか、字に起こしただけでも危なく感じる。それに何より、そんなコトをして深川愛理に嫌われるのが怖かった。
でも深川に、成瀬の頭の中まで知る術はない。
(どうしよう、そんなコトになったら超嬉しいんだけど!そうだ、格好は何でもいいとか言われたけど流石に制服じゃ味気ないよね。せせっ、せっかくのデートなんだし…オシャレしてきても良かったよね。)
待ち合わせの時間まであと15分。深川愛理の頭の中では、答えの出ない疑問が渦巻いていた。
明日も投稿します