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街の外のヒーロー 4

「いや~、失踪した生徒ってさ、三年に二人居るんだよ。そっちが話題になっちゃってたから、ねぇ。また古種ちゃんが引きこもったくらいにしか思ってなくってさ。オーケィ、古種ちゃんね。まだ一年目だから僕もあまり親しくはないんだけどね。古種ちゃんは目立つ生徒だったから、多分三番目くらいに名前覚えたんだよ。見たことあるなら分かるでしょ? 可愛らしいけど雰囲気になんていうか……癖、癖がある子だしね。」


 蔵世の語る古種心の印象は写真から僕も感じていた。幼い頃の一枚しか持っていないから写真を撮られて不機嫌なのかと考えていたが、常にこんな目をしていたら目立ちもする。

 無論悪い目立ち方だろう。話す蔵世も気まずそうに後頭部を掻いている。


「僕もそうだったんだけどさ、雰囲気に左右されない子なんだよ。ノリとかで生きてる子たちからしたら気持ち悪いことこの上ないよね。僕は中二病こじらせてただけなんだけど。なんていうか……こう、高校生ってさ、変な浮かれ方してるんだよ。その熱を持って無い子だったって事。そこの人見知りちゃんもその気があるよね、僕分かっちゃうな」

「共感していたってことですか?」


 麻向は、所在なさげに折り紙を積み上げていく。僕には蔵世の勝手な共感に機嫌を悪くしたのだろうか、いつもより手が乱暴だ。


「もちろん共感って言っても良いのかは分からないよ、分かったつもりになってる。もう一つ言いたいのは、僕と違って、どーも古種ちゃんにはカリスマ性みたいな物があった」

「クラスのアイドル的な?」


 何を言ってるんだろう、今までの情報とカリスマ性は同居できるとは到底思えない。


「存在感が違ったのかな。あの子が機嫌悪くしているとあたりの子も刺々しくなってく。あの子がつまらなそうにする時はクラスは皆寝ちゃって死屍累々。水に染料を溶かした時みたいに影響力が尋常じゃないんだよ。僕だって機嫌の悪いあの子がいたら視界に入ってなくてもどこに居るか分かるもの。そういう子居なかった?」

「過剰な程ムードメーカーだったと」

「まあどうでもいいんだけどね。古種ちゃんが来なくなるちょっと前だよ、三年の子の内一人が来なくなったの。」


 追って消えたと思いづらいのは今までの彼女の情報からだろうか。

 僕の中の彼女はもっと自己中心的に自分の抱える問題だけに集中しそうだな、と思えた。


「ウチ自体も連続行方不明が有ってギスギスしてるから、気をつけるんだよ。良い子ばっかりとは言いづらいからね」


 蔵世が大袈裟に肩を竦める。


「ありがとうございます。麻向、質問は?」

「してください」

「僕は聞くこと無いよ」


 蔵世は気まずそうに笑ってココアを飲み干してから出て行った。彼も彼で忙しいんだろう。麻向の折り紙を本棚に積み上げた後、談話室を後にした。


 

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