Order5【罪だと思うなら幸せを分けよ】
Order5【罪だと思うなら幸せを分けよ】
まるで心がなくなったようなレイスを眺めながら、イサとホーリィ、そしてヴェクセルの三人は、呆然としていた。
「・・・こんなのレイスじゃないよ・・・」
「そうだな・・・まぁ、過ぎてしまったことは仕方ない・・・」
ホーリィがため息を吐きながら何とか治し方を調べているが、この症状に類似したものは一切乗ってはいないようだ。
ヴェクセルもなんとかルーン魔法の範囲で何か試してみようとするが、どれもが無効化にされてしまった。
「ところでイサ、レイスを狙ったのはどんな人だった?」
「・・・魔法使い。」
「魔法使い・・・それで?」
「その・・・ちょっと聞いて欲しいんだけど・・・さ。」
「ん?」
イサの言葉にホーリィとヴェクセルは座りなおし、イサの方を向いて聞く体勢に変えた。
「・・・ごめんね。怒んないで聞いて欲しいんだ。」
「怒らないから、大丈夫。言ってみてよ。」
イサは頷くと、重たい口を開いた。
「僕は・・・あの魔法使いとは面識があるんだ。」
それを聞いた二人は驚いた。
「でも僕には戻らない記憶がある。それは、僕を作り出したプロフェッサー・ウィアド自身が持っている・・・と、いうか・・・あの人と僕は2人で1つなんだ。だからお互いに僕の記憶を彼が。彼が僕の記憶を持っている。だから、本当に曖昧な記憶で申し訳ないんだけど・・・。僕は確か・・・あの魔法使いが何かを成し遂げようとしていた・・・でも、僕はそれはやってはいけないとても大変なことだと気がついて彼に止めるように呼びかけていた。でも・・・それから先はどうなってしまったのか覚えてないんだ。でも、彼が今・・・現れたのなら、きっとその何かをまだ実行するために行動をし続けているんだと思うんだ。」
二人は話を聞いて、イサ自身の存在についても疑問を持ったが、そんなことより彼らの実行しようとしていた何かがどうゆうものかを考えた。
「わかったけど・・・その『何か』とレイスがどう関係あるっていうの?」
ヴェクセルが聞くと、イサは「覚えていない」としか答えられなかった。
「とりあえず・・・その『何か』が何なのか分からないと何も出来ないな。情報が少なすぎて無闇に行動できない。」
ホーリィの意見に二人は頷いて、その時はそうまとめあげて終わった。
「愚かだな・・・気がついていないのだ。自分の製造者《本体》の存在があんあに近くにあっても気づかずにいるのだ。」
一人の赤毛で長髪男が暗闇の中で不敵に笑っていた。
レイスを貫いた男性は彼の後ろで背を合わせるようにして黙り込んでいた。
「所詮欠陥品か・・・何の役にも立つわけがない。本体のように有能なスキルを持ち合わせていれば、どれほど幸福か。」
赤毛の男は長髪を闇の中でなびかせながら、踵を返すようにその場から立ち去っていった。
レイスを貫いた男性は赤毛の男の後ろ姿を見送ると、力が抜けるようにその場に座り込んだ。
「・・・しょう・・・ちくしょう・・・畜生ッ!!!!!!」
持っていた長めのロッドを床に落としたせいで、闇の中にその音が響く。
彼はロッドは拾わずに、床に向かって怒りと悲しみをぶつけていた。
「バニッシュめ・・・」
彼の背からは血色に染まった片翼が生えている。
その翼はまるで傷を負っているようで痛々しい。
「・・・もう・・・戻れないのかな。」
何処か悲しげな表情。
闇の中で二度と空へ戻ることの出来なくなった天使のように
彼はただ暗闇で先の見えない空を眺めていた。
「ごめんな・・・イサ・・・。」
「あれ・・・?そうだ、確かあの日は僕とアイツ・・・大切な何かを持っていた気がする。」
イサは突然1つのことを思い出した。
イサの記憶にふと浮かんだのは、透明のゲージ。
その中には確か、とても重要な何かがあったはず。
そうイサは思い出していた。
「確か・・・アレはあの場所にあったはずだよな・・・。」
イサはレイスのレイディアントを気づかれないようにこっそり借りて、廃棄スラム街エリア零へ向かった。
その様子をセネルは見逃していなかった。
「まったく・・・あの子はこんな時間に一人で何処へ行くつもりなんだ・・・ねぇ、レイス?」
そう言って沈黙してセネルの後ろに立っているレイスを見る。
返事はしないけれど、「YES」とでも言いたいのか、彼の足は勝手に動いて店から出て行く。
「やっぱりついていくんだねー。」
セネルもレイスの後に続いて店を出てイサの後を追いかけた。
廃棄スラム街エリア零
イサはたどり着くとキーボードに触れた。
『認識。命令をどうぞ。』
「格納庫1のロックを解除。」
『了解。ロックを解除しました。』
ガチャンという音と共にイサが発見された場所とは別の場所で扉が開く音がした。
そちらの方へイサは足早に向かう。
開いた扉の向こうに顔を出すと、そこにはしまわれていた多くの備品が置いてあった。
しかし、山のように積み重ねてあったのか、なだれのような跡があり、床はごちゃごちゃしていてとてもじゃないが足の踏み場がない。
部屋の中に高く積まれている本棚の上にイサが目をやると、その上にあるダンボールの中に光るゲージを見つけた。
「あれだ・・・」
しかし、イサには荷台を使ってもとても届きそうにはなかった。
届くとすれば背の高いレイスやホーリィ辺りであるのだが、彼らでも荷台を使ってやっとという具合だろうか。
だが、イサは諦めなかった。
近くにあった荷台に登り、本棚の余った棚の部分に手を掛けて、登りつめていった。
次の棚へ手をかけようとイサが手を伸ばしたとき、イサは手を滑らせてしまった。
「・・・・・・っ!」
うっかり落ちてしまったイサに続いて本棚から本が雪崩のように落ちてくる。
もちろんその全てはイサに直撃した。
「イタタッ!!畜生・・・なんでなんだよぉ・・・」
弱音が出てしまいそうだが、そこで口を閉じて、再び本棚に手をかけた。
「どうする?イサ、一人で上って本棚の上にある何かを取りたそうにしていますけど。」
入り口の影に隠れているセネルが同じく隠れているレイスに小声でいった。
もちろん今のレイスは答えもしないが、生気の無い瞳でイサをみていた。
イサは確実に一段一段登り、ダンボールに手を伸ばした。
しかし、中身の少なくなった本棚が傾いて、イサは再び手を滑らせて落下した。
そのあとに続いて本棚も落ちてくる。
(・・・まずい・・・・・・!!)
思わずイサは目を瞑った。
だが、誰かに抱きとめられる感覚を感じた。
そして、本棚が床に落下したと思われる激しい音が耳に届いた。
恐る恐るイサが目を開けて見上げると、そこには何処か虚ろな表情のレイスの顔があった。
「レイス・・・・・・!」
どうやらレイスはイサを救出したようで、抱えていたイサをそっと下ろした。
「どうやら喋りも微笑みもしませんが、レイスの中に眠るレイス自身の心に反応して体は動いているようだね。」
「セネル・・・」
「レイスに感謝しなくちゃね。そのおかげであの本棚の下敷きにならなくて済んだんだから。」
そう言ってセネルは本棚を指差した。
落ちてきた本棚は床で粉々に砕け散っていた。
ぶつかった後にあんな風になっていたなら、きっとイサは重傷を負っていたかもしれない。
そう考えるとイサはぞっとした。
「もう無理なことはしないことだね。僕らは君の味方だから、頼ってよ。きっとレイスもそう思っているはずだよ?」
「味方・・・?」
イサはセネルとレイスを交互に見た。
(まだ出会って間もないこんな自分と・・・しかも、とっても怪しいのに味方と言ってくれる人がここにいる・・・僕は・・・存在を認められている?)
イサは何故だか嬉しくなってきた。
「ごめん・・・ありがとう。」
そう言うと、セネルがレイスの分まで笑ってみせた。
「それで、イサは何をしているのかな?」
「あのゲージを・・・あ!!」
ゲージは本棚から落ちてきていた。
イサはソレを拾い上げて何処も壊れていないか確認し、心配ないことを確認するとほっとため息をついた。
「それは何のゲージなんですか?」
「フリンジゲージだよ。」
「フリンジ?」
聞いたこともない単語にセネルは首をかしげた。
「人の中から奪われた個性を響かせる素・・・それがフリンジ。レイスの中から奪われた喜怒哀楽のようなものとか声とか、そうゆうものをある一定量このゲージに溜めると本人の中へ戻っていくゲージなの。」
「じゃあイサはレイスのために・・・」
「まぁ・・・僕のせいでレイスがこんな状態になっちゃったしね・・・責任取らないと。」
苦笑してイサは申し訳なさそうにレイスを見た。
(本当・・・僕とあの魔法使いが出会いさえしなければきっとこんなことにはならなかったのだろうに。)
そう考えていくとだんだん悲しくなってきて、イサは暗い表情になっていた。
手の内に握っているゲージにこもる力も強くなっていた。
すると、セネルがそっとイサの手に触れた。
「君のせいじゃないよ。」
「え?」
「君が悪いんじゃない。だって君言ったじゃない。二人でやろうとしていたことがやってはいけないことだと気がついて、彼を止めようとしたって。そして君は今、それを止めているでしょう?それなら、全然悪くない。」
「でも・・・」
セネルは深くため息をつくと、ちょっと怒ったようにイサに言った。
「でももヘチマもないの!イサは悪くない!全然悪くない!レイスは絶対イサを攻めたりなんかしない!もちろん僕も攻めたりしない!」
「・・・レイスも?」
「そうだよ。・・・あー・・・なんかセシルみたいには上手くいえないけどさ、きっとセシルならこういうだろうね。」
「何て?」
「『絶対大丈夫だよ。』」
『大丈夫ですよ。レイスは優しいから貴方一人を攻めたりなんかしませんよ。もし、自分が過ちを犯したと思うのなら、謝りましょう!一生懸命謝って、そして過ちを犯したと思う分だけ幸せを分けてあげればいいんですよ。』
「セシル?」
「ん?」
イサにはセネルとセシルが被って見えた。
そして、直接脳に話しかけられた気がした。
(そうだね・・・幸せを分けてあげる。)
イサは立ち上がって、セネルとレイスを手を引っ張った。
「行こう!」
やっと笑ってくれたイサにセネルは微笑んで見せた。
レイスはきっと心の中で微笑んでいるに違いない。
こうして、三人は店へと帰っていった。
イサ君のテンションアップダウンしすぎじゃね?
みたいなことちょっと思った。
・・・文才なくてスミマセン・・・_ノ乙(、ン、)_