Order3【セシルを受け継ぐ者とイサ】
Order3【セシルを受け継ぐ者とイサ】
仕事がまだあるヴェクセルを置いて、俺は一人先にセシルの店へと急いだ。
薄暗い地下通路の中。
上層部のプレートが壊れたところから光が差し込んでいて、セシルの店が照らされている。
確かまだ記憶が戻らないままの俺が始めて来たのがここだった。
仕事の帰りに立ち寄った時は魔法でセシルが綺麗に変えるまでかなり古びていた。
その店の鍵を回して、俺は店に入り、セシルと出会った。
そしてまた・・・今日も
俺はこの店の扉を開けた
俺が店に入ると、一人の男性が振り返った。
年齢はおそらく俺より年下・・・まだ幼さが残る顔。
しかし、彼はセシルによく似ていた。
「初めまして。貴方が・・・レイスさん?」
水色の髪の毛が揺らいだ。
アメジストの瞳は最初の頃に出会ったセシルのようにしっかりと俺を捕らえていた。
「そう・・・俺がレイス。君は?」
「僕はセネル。セシルの意志を受け継ぐ者。」
セネルはピエロのような服をなびかせながらレイスに近づいてきた。
「ねぇ、君はセシルを受け継ぐって言うけど・・・セシルとはどういった関係なの?」
「ん?僕はセシルの子どもってとこかな。セシルにね、『おっきくなったら未来に飛ばすからその時はレイスのことヨロシク〜( `・ω・´)ノ』って言われたから今回来てるの。」
きっと俺今凄い顔になってないか?
多分ニュースにするんなら『衝撃!!セシルできちゃった婚か!?』ってタイトルつけたくなるな。
「あ・・・うん。で、えーと・・・どうしよう・・・君はこれからどうするの?」
「やだなぁ・・・言ったでしょ?僕はセシルを受け継ぐって。だからいないセシルの代わりにレイスのサポートするに決まってんでしょー。」
えへへと笑いながら、セネルは俺の腕を掴んで走り出した。
「え?ちょ・・・何処に行くの?」
「まずは腕試し!鈍ってるんじゃないのぉ?」
そう言ってセネルはポケットから手帳を取り出してぱらぱらとめくっていく。
「うん。これがいい。『アンチAI20体討伐』報奨金は8,000ギル。」
「クエストって奴か?何処行くつもり?」
「場所は廃棄スラム街エリア零!」
と、いうことで俺はなまっているであろう腕をならすためにクエストを始めました。
しかも、人気の無い廃棄エリアで。
「やるじゃないですか!」
レイディアントを振り回し、アンチAIを切り倒しながら俺は久しぶりすぎる魔法を使う。
風の魔法で飛び上がり、重力の抵抗により落下する力で切り裂く。
「ふぅ・・・やっぱ久しぶりすぎー。ちょっと疲れた。」
レイディアントを腰に戻して、俺は一息つく。
「あれ・・・レイスちょっとまって今座ろうとしてるの・・・―――」
「んぁ?」
セネルが止めようとしたけどもう遅いっちゅーに。
ガコン・・・
「・・・やっべ・・・何か動いた?」
「見事に動きましたよ。」
動揺を隠し切れない俺たちだけど・・・つか、俺何の上に座ったんだ?
視線をゆっくり尻の下へ移動させると、そこには石版製の何かのスイッチがあった。
「・・・・・・トラップかこれ?!」
「トラップとは言いにくいですね・・・反応が無いようですが・・・壊れているのでしょうか?」
それならそれで嬉しいからさっさとここから去ろうと思い、俺たちはひとまずこのエリアから退散しようと思った。
しかしその時、奥の方で何か機械が動くような音がしているのが俺たちの耳に届いた。
不思議に思った俺たちは、一応慎重気味に奥へと向かった。
奥の方へ進むと、今は使われていないであろうと思われる何かの研究室のような部屋があった。
大型のディスプレイとキーボード、端末。散らばる書類、飛び散ったガラスの破片。
倒れた椅子、零れている何かの液体と鉱石のようなもの。
「何だここ?まさかここで新人類計画をしていたのか?」
「違うね。あれは王室で行われたはずだし。それに新人類AIに使われる因子の反応がない。」
「因子?」
「特殊な因子を新人類AIに彼らは埋め込ませてAIを製造していたみたいだけど、その反応がないということはここはそんな場所じゃないはず。」
「それは・・・どうして分かるんだ?」
「セシルから貰ったこれで分かるんだ。」
と、いいながら、セネルは左耳のピアスを見せた。
それはいつもセシルがつけていた金属性の薄っぺらいピアス。
鈴の音色のような音が鳴るピアスを目にしてちょっとだけ俺の気持ちは複雑になった。
「・・・で、それでどうやって?」
でも、そんなこと考えてもしょうがないので俺はそこで考えを切断した。
「因子に反応するとピアスが赤色に変わるんだ。だから。」
確かに、セネルのピアスの色は未だ金色のままだ。
と、いうことであればここはとりあえずそうゆうヤバイところではないようだ。
「でも・・・なんなんだろうな。」
俺はそっとキーボードの埃を掃ってみた。
すると、いきなりディスプレイが起動して、全てのコンピューターも起動し始めた。
おそらくメインコンピューターであろう大型のコンピューターも起動していて、何か1つに対して集中処理をしているようだ。
「・・・・・・」
俺はただそれをぼーっとみていた。
セネルが後ろで焦ったように呼びかけているけど、その時俺の耳には届いていなかった。
気がついたら俺の手は無意識の内に動き出したコンピューターを操っていた。
そして、何かのセキュリティを解除してしまっていた。
『プロフェッサー・ウィアドの指令を最優先と考え、セキュリティを解除しました。』
機械的声が室内にセキュリティ解除を知らせるアナウンスを流した。
「・・・ウィアド??」
ウィアドが一体何のことなのか理解できなかったが、そんなことより俺の意識は解除と共に開かれた隣の部屋の方に向かっていた。
「・・・レイス?」
「・・・これは!!」
扉をあければあらびっくり。
何だかいまどきの若者のような服装をした金髪の少年がぐったりと横たわって檻の中に放置されていた。
「ちょ・・・!!こいつ生きてるのか?!」
慌ててレイスが少年の元に近づいて抱き起こして生死を確認してみた。
どうやら息はあるようだ。
「大丈夫みたいだね。でも、どうしてこんなところに?」
「・・・と、いうか。不自然だよな。」
「え?」
「だってそうだろ?全く使われていなかったようなコンピュータールーム。閉ざされていた扉。ここに来るまでの石版製のスイッチ。今まで誰も気がついてないんじゃないか?石版を動かした形跡もないし、キーボードの上のあの埃は何年も経たないとああいう風にはならない。そして・・・そんな条件があった扉の中にこいつはいて、生きていた。おかしいだろ。不自然だろ?」
俺の意見を聞いて、セネルも納得したように頷く。
とりあえず、このことは身内以外誰にも知られないようにすることにして、一度俺たちは店へ戻ることにした。
二階の寝室のベッドに少年を横たわらせて、俺とセネルはあの場所のことをどうするかを考えた。
とりあえず有毒ガスが出ているということにして国の方へ閉鎖するように頼んでみるかとか、魔法で防御壁を張っておくかとか。
でも、どのみち閉鎖しても技術者にとっては楽勝で追い越せるハードルで、魔法に長けている者に対しては魔力が強ければ強いほど、防御壁を軽くかわせる。
「どれも駄目だなぁ・・・」
「人々の記憶からあの場所の存在を消すとか?」
「それはいけないだろ・・・てかあんまり覚えている人いないんじゃないかな?とりあえず今はまだ大丈夫だろう。」
とりあえずそうゆうことにしておいた。
話がまとまったとき、丁度階段がギシギシと音を立てた。
俺たちが視線をそちらへやると、さっきの少年が不思議そうに俺たちをみていた。
青緑色の瞳は何故かずっと俺を見ている気がするのはどうしてなんだろう?
ちょっと怖いぞ、と。
「・・・ウィアド・・・?」
「はぁ?」
この少年もまたウィアドかよ。
一体なんなんやねん。
「えーと・・・俺はレイスな。本名は黒羽鈴守。」
「僕はセネル。」
お互い名乗ると、少年も口を開く。
「・・・イサ。」
「イサ、ね。よろしく。」
てゆーかいつまでもそこにいないでこっちおいでよ、と手招きするとイサはようやく俺たちのもとへやってきた。
「ウィアドじゃないの?本当にウィアドじゃないの?レイス・・・さんは。」
「レイスでいいよ。えと・・・その、悪いんだけど俺はウィアドなんて奴じゃない。」
ウィアドって人の名前だったのか。
そういやあのアナウンスでもプロフェッサーとかいってたしな。
「そう・・・」
「ねぇ、イサの言うウィアドさんって何?」
「・・・ウィアドは・・・僕を作り出してくれた人。と、いうか・・・僕は彼で彼は僕なんだ。でも僕は欠陥品だから彼のことが因子反応じゃわからない。彼が本体だから。彼じゃないと僕を見つけてくれない。」
あぁ・・・つまりこの子は人生迷子ですか。
そうですか。
「・・・ん?待てよ・・・てことは・・・君は・・・迷子だよね?完全なる迷子だよね?」
「・・・うん。」
かなり嫌そうな顔で肯定した!!
あー・・・やっぱ迷子ですか。
「ま、仕方ないよな。誰か家族が向かえに来てくれるまでいていいよ。ここは昔から色んな事情を持った奴らの家みたいな場所だしな。いいよな、セネル?」
「別に僕の物件じゃなくてセシルの物件ですし。いいのでは?」
「よし決まり。イサ、今日からお前も仲間の一員な。」
そう言うと、イサは驚いた様子だったけど、嬉しそうに微笑んでいた。
こうしてまた新たな仲間が増えたわけでして。
まぁ、わけあり人生送りまくるメンバーばかりなので違和感なんて全く持ってない。
きっとすぐ皆とも仲良くなるさ!!
それにしても、ウィアドって一体・・・。
中間考査とか検定試験とかマジ終われ。
世界の中から消えてしまえとか思いながら書いていた気がする。
それにしても書いている間マジ腹へって死にそうだった。
やはりご飯がおすいものだけだったからか?
(;`・ω・)o━ヽ_。_・_゜_・_フ))