Order2【始まる二度目の出会い:2】
Order2【始まる二度目の出会い:2】
うっすらとしか覚えていない記憶を辿って俺は、中央区の洋菓子店angelaへ向かった。
この石畳の道を登っていくと、あの頃皆と通っていた頃のことを思い出す。
あのパン屋のおばさんはよく声をかけてくれて、明るいおばちゃんだったな。
あそこの野菜屋と精肉屋のおっちゃんとお兄さんは、よく値段をまけてくれたな。
そんなことを思い出しながら歩いているといつの間にかもうヴェクセルがいるといわれる洋菓子店の前だった。
ガラスの壁にはangelaと記されていて、中ではピンクに近い色の髪をした男の子が元気のいい笑顔をお客さんに向けて笑っていた。
まだ学校の生徒なのか、あの頃と同じ学校の制服の上からエプロンをしている。
「それにしても・・・大きくなったな。」
そうポツリと呟いたとき、ヴェクセルと目があった。
俺を見たヴェクセルは一瞬動きが止まったが、すぐに明るい笑顔で微笑んでみせた。
相変わらずなその性格に俺は少し噴出してしまいつつも、店のドアを開いた。
「こんにちわ。」
「いらっしゃいませ!レイス!!」
「やっぱヴェクセルは俺ってわかったんだ。」
「当たり前じゃない!それにしても・・・この2年間何処ほっつき歩いていたのかな?」
そう言ってヴェクセルは俺にデコピンをかましてきた。
そうか。この世界では2年という月日が流れていたのか。
俺にとってはまだ1年前のことにしか過ぎないのに。
「ずっと、夢みていたんだよ。皆との思い出を。」
「ふ〜ん?」
「それにしても。ここはヴェクセルのお店かな?」
「ご名答!でも殆どスタッフにまかせっきりかな・・・まだ僕学生だし。あと一年後には常に僕もこの店にいるさ。」
そう言ってヴェクセルはまた微笑む。
「・・・ところで、レイス。エイトとカレンは別として・・・あ、あの2人は一緒にサンセット社で働いてるんだけど・・・セシルのことは知ってる?」
「いや・・・俺も今戻ってきたばかりだからわからないんだ。ホーリィも店に行っても意味ないっていうし」
「うん。実は、本当に意味がないんだ。」
「どうゆうこと?」
彼から笑顔は消えうせて、代わりに苦しそうな表情に変わって
その重い口をひらいた。
「・・・セシルは・・・もう、いないんだ。」
「いないって・・・」
「つまり・・・消滅した。」
「!!なんで?!」
「ちょっと・・・ここじゃあれだから、場所を変えて話そう。」
そういわれて俺は店の裏にある従業員用の庭でヴェクセルと2人だけにしてもらい、セシルのことについて聞いた。
「レイスが何処かへ行っちゃったあとにね、セシル・・・笑ったまま何処かへ消えちゃったんだ。」
さかのぼること約二年前。
朱雀と俺が戦い終わったあと、彼らは自分の世界に戻ることができた。
そして、セシルはその時体が透明に透けていっていたそうだ。
すこしづつ体は光の粒になって、さらさらと空気の中へ溶け込んでいくように消えたらしい。
それからしばらくして千年前のセシルのお墓へ行くと、そこには以前は無かったブローチの中身に写真が入っていたという。
その写真は、全員で遊んでたりしてたときの写真。
だから、その時皆はセシルが元いた時代に戻って息を引き取っていたと気がついたんだって。
「それと・・・お店の方にレイス宛の手紙があったんだ。」
「俺宛?」
戻ってくるか分かりもしない俺に手紙なんて・・・
そう思ったけど、やっぱりセシルには俺が再びこうして戻ってくることが分かっていたのかもしれない。
きっと、俺のこと最初から最後まで見抜いてるんだよ。
ヴェクセルから手紙を受け取り、俺は手紙を開いた。
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この世界以外の何処かにいる大切な仲間へ
きっとこれを見ているということは 貴方が戻ってきたということなのでしょう
それはきっと貴方の定めであって必然だと私は考えています
貴方はこの世界とそちらの世界を調律する魔術師
きっと世界は再び貴方を求めるでしょう
時の秒針は止まらないから 私もそろそろ限界です
いくら過去から来たとはいえ 私の過去の時間が進めば
私もいずれ死んでしまうでしょう
実際私はもうすぐ死ぬことが分かっていました
未来に来るために使った膨大な魔法の量
あれは既に魔術師としての精神力の限度を越えていました
だから正直 貴方と別れる前にはもう限界でした
だからね こうしてもう会えなかったと思うんです
戻ってきてくれたのはとても嬉しいけど もうお喋りも出来ませんね
だけど 貴方に悲しみなんて背負わせたくない
だから 私を受け継ぐ者と出会ってください
私はこちらに来る前に言いました
私の最後の力は
貴方が帰ってきたときに発動する と
それを発動したとき
私を受け継ぐ者は きっと私のお店の魔法陣の上に現れます
彼を 私だと思って仲良くなってあげてください
そして最後に
おかえりなさい レイス
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