Order2【始まる二度目の出会い:1】
Order2【始まる二度目の出会い:1】
「・・・ん・・・うん・・・」
目覚めて最初に見たのは、王都ルインのおそらくスラム街と思われる場所。
辺りに人は一切いないけれど、緑が生い茂っていて綺麗な場所だった。
ゆっくり立ち上がり、近くにある水面で自分の姿を確認してみると、服装は以前着ていたラフな服装ではなくて、どちらかというとV系に近い少々チャラチャラした服装。
全身を黒と青の色で調整していて、落ち着いた印象を持たせそうな感じだ。
腰にはヴェクセルから貰ったレイディアントがぶら下がっている。
「これが…今度の俺の姿。」
改めて確認し、俺はこれから何処へ行くのか考えた。
しかしその時、辺りに散らばっている列車の残骸から物音がした。
「誰だ!」
俺が警戒してレイディントを腰から引き抜き、物音がした列車の残骸の方へ向けた。
すると、列車の残骸の後ろから子供が数人、べそをかきながら出てきた。
「こ…子どもぉぉ??」
「うっ…ごめんなさい…ごめ……」
俺はとりあえずレイディントを腰へ戻した。
「俺がごめんだよ…ごめんな、恐がらせて。」
泣き出す子どもたちを優しくあやしていると、すぐに子どもたちは泣き止み、微かに笑った。
「お兄ちゃん、ホーリィ司祭みたい。優しくて、ぽかぽか。」
「うん。本当にホーリィ司祭みたい。」
「ホーリィ司祭?」
まさかね…いや、まさかとは思うけど。
「その人って金髪で、本を大切そうにしてる人?」
「司祭を知っているの?じゃあ、司祭のお友達だ!じゃあじゃあ、司祭の所に一緒に行こう!」
「え?あ、ちょ…!?」
子どもたちに強引に引っ張れ、鈴守は断ることも出来ずにスラムの教会へ連れて行かれた。
子どもたちに連れて行かれた教会の中では、一人の司祭がよく分からない言葉で聖書のようなものを読んでいた。
あの後ろ姿はどう見てもホーリィだ。
俺があの純粋な金髪を忘れるわけがない。
「ホーリィ司祭!司祭のお友達連れてきたよ!」
子どもが叫んでホーリィを呼ぶと、ホーリィは振り返り、笑顔で微笑んだ。
「おかえり、皆。おやつ出来てるよ、手を洗って・・・――」
俺の顔を見てホーリィの言葉が止まった。
ホーリィは死人でも見ているような目で俺を凝視していて、次の瞬間俺にタックルしてきた。
「レイス!!」
「ぐはっ?!!」
もちろん自分より背の高い男性が飛び掛ってきたらたまったもんじゃないわけで、俺は抵抗する間もなく、体が背から床へ倒れてゆく。
「よかった!また会えた!!朱雀の件のあと、いなくなってしまったから・・・一体どうしているのかと思ってたんだよ!」
そういえば、思念体だけみたいな形になっていた朱雀と色々やってて、決着ついてから気がついたら自分の世界に戻ってしまっていたんだよな。
「てか…なんつ〜の?何かまたこっちに来ちゃったかなぁ〜みたいな。」
「まぁいいやないの!ところでレイスは他の皆には会ったの?」
「いや、今こっちに来たばかりだから皆何処にいるのか分からなくてさ。」
「皆自分の道を歩み出してあまりセシルさんのお店には顔を出さなくなって、会うことが少なくなったから多分セシルさんのお店にはいないよ。俺が知っているのはヴェクセルのことだけ。あいつは今パティシエ魔法使いになってるよ。中央区洋菓子店angelaに行ってみるといいよ。」
そうか・・・皆俺のいない間に好きな職業について落ち着いていたんだ。
なんだか、余計皆に会うのが楽しみになってきた。
「それにしてもレイス・・・大人っぽくなったね。やっぱあれかな・・・服装とか前は明るくて元気な子どもみたいだったのが黒くて大人っぽい雰囲気だしてるし、顔つきも大人っぽくなってるかなぁ・・・」
「そうかな、ホーリィの方が大人じゃないか。」
「あたり前だろ?俺もう24だぜ!!」
あぁ・・・そういやそうだった。
この人は既に大人だった。
でも、俺は外見の見た目とかそういうことを言ってたんじゃないんだけどな。
「そういや、ホーリィは、ここでこの子たちと暮らしてるの?」
「そう。この子たちは孤児なんだ。で、俺も天涯孤独だし、この子たちと一緒に教会で生活してるの。俺は司祭やってんの。この手の仕事は何度かしたことあったし、俺っぽくね?」
爽やかな笑顔で笑ってホーリィは子どもたちの頭を撫でまわす。
子どもたちも心からホーリィのことを親しんでいるようだ。
「そっか・・・あ、それじゃ俺とりあえずヴェクセルのところ行って来るね。」
「うん。また寄ってね〜★」
俺はホーリィと子どもたちに別れを告げて、教会を後にした。
次へ向かうのは中央区の洋菓子店angela。