ORDER12【トラブルシューティング3】
なんだろう。もの凄く恥ずかしい。
そう思いながらレイスは揺れ動く馬車の中思っていた。
よく分からない造りになっている洋服は、何故かマント部分と思われるところが羽のようになっていて、合計4つの翼が背中についているようだ。
「これって何かの罰ゲームすか?」
「正装です。何度言わせる気ですか。」
「まじっすか・・・。」
ため息交じりに嫌になりながらも、レイスはこの現実から逃避することは出来ないのであった。
しばらくすると馬車が行き成り動きを止めた。どうやら街に着いたようで、扉が開かれて、馬車から降りるように言われた。
服を踏まないようにゆっくり降りると、視界には人、人、人、人・・・・。
多くの人がこちらをみている。
流石の俺も冷や汗が・・・。
「さ、光の王らしく歩いて下さい。」
「はぁ!?光の王!?知らねぇよ!」
「はいはいふざけてないで、雑談は城に着いたら聞きますから。」
そう言われて、男性に背中を押された。
城というのは目の前に佇む大きなあの建物だろうか?一応王家の通る道にはカーペットが敷いてあるからそうなのだろう。
しかし、この街以前見たことがあるような気がする。
そう思いながら城内へ入ると、この街の国王陛下に迎えられた。
「ようこそいらした。光の直結王族レイシス殿。」
「・・・え、あ、はい。」
今このおっちゃん俺のことをレイシスって言ったよな?と、言うことは、今俺はレイシスの立場にいるというわけか。
イサは俺をレイシスだといっていたから、つまりレイシスという記憶の中で直接レイシスの記憶を見ろということになるのかな。
「レイシス。君に新しい守護者を授けよう。」
「守護者?」
「あぁ、彼は優秀だ。魔法も肉弾戦も平均的な衛生兵より上回る。」
そういいながら国王陛下の隣に現れたのは、肩まで伸ばされた黄緑色の髪を持つ青年だった。
身長も、髪の長さも服装も違うけれど、紛れもなくその青年はセシルだった。
「彼は新人類計画によって生み出された完成品だ。それを君にあげようと思ってね。」
「・・・新人類・・・計画ですか。」
「ではそろそろ国会が始まるな。いいか、お前はレイシスの守護者なんだ。しっかりレイシスを守るんだ。」
国王陛下にそう命令を受けると、セシルは「御意」とだけ呟き、レイスの手を引いて国会の会場まで誘導した。
それから数時間後、国会はやっと終わりを告げた。
しかし、気がつけばもう真夜中であった。
「あーんな難しいことばっかり・・・何が何だかわからないよー・・・。」
流石に疲れてきたレイスは、今日泊まる城内の部屋のベットへダイヴした。
「・・・。」
「ん?」
今気がついたけれど、セシルはこの室内の隅に佇んでいた。ゆっくり座るか寝たらいいのに。
そう思い、レイスは声をかけた。しかし、セシルは首を横に振った。
「いえ、私はレイシス様の守護者として常に見張っていなければなりませんので。」
冷めた口調でそう一言いうと、セシルはまたきちっと立ち、警戒するように精神を研ぎ澄ませているようだった。
「まぁ俺がいいって言ってるんだから!」
「?!」
レイスはセシルの腕を引っ張ってベットへと座らせた。
セシルは驚いたようすで、レイスの顔をじっとみて、それからすぐにはっとしたように飛び起きてレイスを叱りつけてきた。
「貴方と言う人は・・・!!仮にも貴方は光の直結王族なんですよ?!そんなお方が私のような格下を相手にするなど!!知られたら貴方、世界各地の王族方から批判の嵐ですよ?!」
「・・・セシルは固いなぁ・・・だから何?王族だから格下を空いてにしちゃいけないわけ?だったら俺がそんな固定概念変えてやる。」
レイスがセシルの胸倉を掴んでそういうと、セシルは驚いたようにレイスを見上げた。
「そう、ですか。おかしな人だ。他の王族とは違って、私達みたいな欠陥品に触れてきて、固定概念を変えるだなんて。」
「ははっ。おかしいのは確かかもな。」
にっこり笑ってそう言うと、セシルはクスクスと笑い出した。
「そういえば…何故レイシスは私をセシルと呼ぶのですか?」
ふいにセシルはレイスにそう質問してきた。まだセシルは名すら名乗っていなかったのに、レイスは彼をセシルと呼んでいたからだ。
「…君がセシルに似ていたからかな。同じ黄緑色の髪、同じ瞳、金色のピアス。同じすぎて、なんか不思議にもセシルって感じがしたんだ。」
「私は、そんなにセシルに似ていますか?」
「うん!すっげぇ似てる!!」
「…あの、よろしければ私にその名前をいただけますか?」
「あぁ!今日から君はセシルだ!」
そう言ってセシルはレイシスの物語の中で生まれたんだ。
この守護者セシルは、のちにレイスが異世界からこの異世界に落ちたとき始めに出会うセシルでもあったけれど、二人はまだ知ることは無かったんだ。